生後3カ月で診断された骨の病気。「みんなみたいに大きくなってみたい」の言葉にやっと明るく答えられるように【体験談】

生後3カ月で診断された骨の病気。「みんなみたいに大きくなってみたい」の言葉にやっと明るく答えられるように【体験談】

是永菜絵さんには、小学校4年生の男の子と小学校1年生の女の子の2人の子どもがいます。長男・橙吾(とうご)くんは、生後3カ月のときに2型コラーゲン異常症関連疾患の1つである、先天性脊椎骨端異形成症(せんてんせいせきついこったんいけいせいしょう)と診断されました。脊椎骨端異形成症は、10万に1人といわれるまれな病気で、橙吾くんの主な症状は低身長と背骨が曲がる側弯症です。小4の現在は、身長89cm。2~3歳児の平均ぐらいの身長です。
是永さんに橙吾くんの手術のことや成長、小学校生活、お友だちとの関係について聞きました。全2回インタビューの後編です。

4歳のときに幼稚園に入園

橙吾くんが集団生活を始めたのは、4歳になってから。是永さんの仕事と第2子が1歳になったのをきっかけに幼稚園に入園しました。

――幼稚園について教えてください。

是永さん(以下敬称略) 夫は大工で、橙吾を授かってから独立を決めたのですが、そのときはまだ病気のことは知りませんでした。私も夫の会社の事務を手伝っていたし、橙吾が3歳のときに下の子を妊娠したので、そろそろ橙吾を保育園に通わせようと思ったんです。しかし先生に病気のことを話すと「うちの園は人手がたりないから」などと言われて、何園も断られてしまって・・・。でもめげずに探していたら、公立の幼稚園の先生が「どうぞ来てください」と言ってくれて、うれしくて思わず泣いてしまいました。

橙吾も、みんなと遊んだりすることが本当に楽しそうでした。

――第2子を妊娠したとき、不安はありませんでしたか。

是永 先天性脊椎骨端異形成症の主な原因は、軟骨の成分である2型コラーゲンを作る遺伝子の変異によるものです。橙吾の場合は、遺伝子の突然変異で、遺伝によるものではないとのことでしたが、それでも下の子を妊娠したときは不安でした。

橙吾は最初、妊婦健診のエコー検査で大腿骨(太もも)の骨が短いと言われたので、下の子のときのエコー検査では医師に「大丈夫でしょうか?」と何度も何度も聞きました。

――小学校について教えてください。

是永 エレベーターがある小学校が隣の地区にあったので、その小学校に入学するために引っ越しをしました。橙吾は低身長で手や足が短いこともあり、同じ年齢の子たちと同じペースでは、階段を下りたり、上がったりできないし、階段から落ちるなどの危険もあるかなと思ったんです。

今は4年生ですが、通常学級と特別支援学級に在籍していて、特別支援学級では国語、算数の授業を受けています。体育は通常学級で行い、加配の先生がついています。医師からは「脊椎が弱いのでマット運動などはしないように」と言われています。
また手を洗う蛇口に手が届かないので、小学校で踏み台を用意してくれたり、机や椅子も橙吾に合うように高さを調整してくれています。

――小学校は、どのようにして通っているのでしょうか。

是永 体が小さくてランドセルを背負って歩けないので、私が車で送迎していました。しかしこの春から下の子が小学校に入学して、同じ小学校に通うようになったら橙吾が「一緒に行く!」と言い出し、今は集団登校の登校班の輪に入り、歩いて登校しています。ランドセルは私や娘が持って歩いています。
でもみんなのように体力がないし、歩幅が狭くみんなと同じスピードで歩けないことを、ジレンマに感じているようです。

――小学校に入学するとき不安はありましたか。

是永 自分で荷物を持って教室を移動したり、掃除の時間に机を後ろに下げたりできないので、「みんなについていけるかな?」と不安ばかりでした。
しかし実際に入学してみたら、友だちが「橙吾、荷物持つよ!」と自然に言ってくれるんです。
そのため橙吾には「友だちが困っていたら手伝ってあげてね! 橙吾にも、できることいっぱいあるよね?」と伝えています。手伝ってもらうだけでなく、お互いさまと思えるような関係性を築いてほしいと思っています。

小学校1年生から半年ごとに側弯症の手術を

橙吾くんは背骨が曲がる側弯症もあり、小学校1年生のときから半年に1回手術を受けています。

――橙吾くんの側弯症について教えてください。

是永 橙吾は、先天性脊椎骨端異形成症の症状で、2歳になり歩き始めてから背骨の曲がりが目立つようになりました。
医師からは「進行が早いタイプで、ほうっておくと内臓が圧迫されて呼吸機能に影響するし、成長に伴い背中や腰などに痛みが出てくる」と言われています。そのため小学1年生のときから半年ごとにこども病院で手術を受けています。最初の手術で背中に金属棒を入れたときはゆがみがかなり矯正されて身長が7cmほど伸びました。その後は、半年に1回の手術で金属棒を少しずつ伸ばしていくのですが、1回の手術で身長は5mm~1cmぐらい伸びます。手術時間は2~3時間ぐらい。1週間ぐらい入院が必要です。

側弯症で背骨が曲がっていたときは縄跳びも跳べなかったのですが、背骨がまっすぐになってきたら縄跳びも跳べるようになりました。食べる量も増えてきました。身長も小学1年生では72cmだったのに、小学4年生の今では89㎝になりました。そうしたことひとつひとつが自信になっているようです。

――橙吾くんは、手術を嫌がったりしませんか。

是永 最初は怖がって大泣きしていましたが、最近は頑張ってくれています。病院で、橙吾と同じ側弯症の女の子と出会い、意気投合してすごく仲よくなったんです。担当の先生もそのことを知っていて、その子とだいたい同じ時期に入院・手術をするようにしてくれています。入院や手術はつらいけど、「その子と会える!」と思って頑張っているようです。

――側弯症の手術は、どのぐらいまで続くのでしょうか。

是永 医師からはあと4~5年と言われていて、「身長は120cmぐらいにはなりそうだけどな~。そのぐらいになったらいいな~」と言われています。
橙吾はたまに「1回、みんなみたいに大きくなってみたいな~」と言うことがあり、「頭がいい人がボタンひとつで高さが調整できる靴を開発してくれたらいいよね~」なんて話したりもしています。

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