濱田岳“仁科”が殉職…迫りくる土砂の波を背に「俺は救難員だぜ!」とサムズアップ<PJ ~航空救難団~>

濱田岳“仁科”が殉職…迫りくる土砂の波を背に「俺は救難員だぜ!」とサムズアップ<PJ ~航空救難団~>


危険を顧みず、少女を助けた仁科(濱田岳) / (C)テレビ朝日
内野聖陽主演、航空自衛隊全面協力のドラマ「PJ ~航空救難団~」(毎週木曜夜9:00-9:54、テレビ朝日系/TELASA、Tverにて配信)の6月5日放送の第7話で、訓練生の教官でもある救難員の仁科(濱田岳)が救難作業中に斜面崩落に巻き込まれ、帰らぬ人となった。(以下、ネタバレ含みます)

■「人命救助最後の砦」のPJを目指す学生たちと教官の群像劇

「PJ」とは、“パラレスキュージャンパー”の略。海上保安庁や山岳救助隊などでは救助不可能と判断された場合に出動する「人命救助最後の砦」とも言われる航空自衛隊の究極の救難団だ。

本作は、航空自衛隊小牧基地を舞台に、救難教育隊の主任教官・宇佐美誠司(内野)と救難員を目指す学生たちのヒューマンストーリー。加えて、PJの過酷な任務の様子をリアルかつ壮大なスケールで描いていく。

■土砂に飲み込まれた仁科…

仁科は、線状降水帯による河川の氾濫が起きた地域で救難作業にあたっていた。救難教育隊の教官は皆、精鋭中の精鋭ぞろいなので、有事の際には現場に向かうのだ。

向かった先での救助は無事終わったが、孤立状態になった地域があることが分かり、偵察に行った仁科らは学校の外で要救護者の男性1人を発見。仁科は、中林(高岸宏行)と共に収容準備をしていた時、校舎の奥から聞こえる少女の泣き声に気付いた。

建物内の偵察許可は出ていない上に、地鳴りも聞こえる。一刻を争う状況の中、仁科は懸命に止める中林やヘリコプター操縦士の森野(野村麻純)に「助けてって泣いてんだよ!死にたくねぇって泣いてんだよ!!未来を救わない大人がどこにいる!」と告げ、5分だけ待っていてくれと頼んで、校舎の奥へ向かった。

がれきの中から少女を助けて中林に託し、彼女の父親である男性と共に無事にヘリコプターに収容した。が、その最中に斜面崩落が起こり、地上に残っていた仁科と校舎を土砂が飲み込んでいった…。


「PJ ~航空救難団~」第7話より / (C)テレビ朝日

■「あいつが死ぬわけないじゃねぇか!」

救難員たちに「仁科が行方不明」と伝えられた。状況から考えて、生存の可能性はかなり低い。絶望ムードが漂う中、宇佐美は「まさか諦めてねぇよな!?あいつが死ぬわけないじゃねぇか!」と自らにも言い聞かせるように大声で仲間たちに訴えた。

仁科が死ぬわけない――宇佐美と同じ気持ちだった視聴者は多かった。宇佐美の右腕とも言える熱血教官で、先日2人目の子供が生まれたばかりだ。いくらリアルを追求するドラマでも、死なせるなんて残酷な展開にはさすがにしないだろう。死と隣り合わせの職業だということをこうやって見せつけて緊張感を高めた後、「何とか命だけは助かりました」となるだろう。それに、先週の予告では泥だらけでサムズアップする仁科の姿が映っていた…だから、大丈夫。きっと生きている。祈るような気持ちでこの後の展開を見守った。

だが、土砂の中からやっと見つかった時、仁科はもう息をしていなかった。死因は胸部圧迫だった。

SNSには「ウソでしょ」のコメントが並び、視聴者もショックで茫然となっている様子だった。ドラマなのだからギリギリ生かすこともできたのに。だが奇跡は起こさなかった。どれだけ訓練を積んでも、自然の理不尽さには勝てない。作業中に命を落とすことは、現実では大いにありえるのだ。


「仁科が死ぬわけない!」最後まで生存を信じた宇佐美(内野聖陽) / (C)テレビ朝日


仁科(濱田岳)は宇佐美に憧れてPJになった / (C)テレビ朝日
■宇佐美に憧れてPJになった仁科

仁科は、宇佐美が教官になって初めて送り出した訓練生だ。元々はパイロット志望だったが、ある時、夜通しの救難作業で全員救出して帰ってきた宇佐美らPJを見て、人命救助の尊さと格好良さに心が震え、救難員を志したのだった。

仁科は、基地で初めて宇佐美に声をかけ、自分も救難員になって宇佐美と共に人を救いたい、と告げた際、宇佐美に言われた「命だけじゃなく心も救うんだ」との言葉を常に実践していた。今回の最初の地域での救難作業時も、助けた人々の間を歩きながら「もう大丈夫だよ」と声をかけ続けた。“です・ます”口調ではなく、友達や家族のようにフレンドリーに話しかけていた。温かく安心感のある話し方だ。そして、畑を失い嘆き悲しむ老人には「生きてれば必ずやり直せるから!」と肩に手を置いて励ました。

今回も「パパが死んじゃう」とパニック状態で泣きじゃくる少女に、仁科は「パパが君を置いていくわけないだろ!一人にするわけないだろ!」と目をしっかり見て勇気づけるように語りかけ、少女を落ち着かせた。そして、ヘリコプターまで吊り上げられる間が怖ければ父親の顔だけ見ているように言い聞かせ、「“収容完了”って聞こえたら、もう怖いことは終わってる」とその後の様子についても、少女の目線で説明して彼女を安心させた。

中林と親子でホイストは限界のため、仁科は一旦地上で待つしかない。「おじちゃんは一人で大丈夫?」と心配する少女に、彼は「あたりまえだぁーっ!俺たちは天使だぜ!?」と、ウインクをして見せた。“だぜ”口調、下手なウインク…こんなことまで“宇佐美イズム”を継承していた。

もしこの時、「時間が無いから」と泣いている少女を無理やり引き上げていたら、ほんの数分、数秒の差で、仁科の運命は変わっていたかもしれない。だが、彼は少女の心を救うことを優先したのだ。


宇佐美譲りの下手なウインクで少女を安心させる仁科(濱田岳) / (C)テレビ朝日

■「怖いものは怖いんだよ」

地上に残った仁科は、どんどんひどくなる地鳴りと土砂が崩れる音を背に「俺を誰だと思ってるんだ」と、震える声で嗚咽しながら自分に言い聞かせた。「怖いものは怖いんだよ。根性で乗り切るんだ」…以前、彼が高所恐怖症の長谷部(渡辺碧斗)にかけた言葉が思い出される。先程「パパが置いていくわけない。一人にするわけない」と少女に言ったのに、それを自分が守れない…とてつもなく無念で申し訳なくてつらかったに違いない。そんな思いを吹き飛ばすようにひねり出した言葉は「俺は救難員だぜ!」だった。

そして、校舎も樹々も飲み込みながら向かってくる雪崩のような土砂に背を向けたまま、震える左手を上げてサムズアップした。最期まで救難員として生きたことを表す仁科のラストシーンだった。

■「オマエの救難は、あっぱれだ!」

宇佐美は「仁科ともう一度飛びたい」と、彼の遺影と共にヘリコプターに乗りこみ、2人での“最後の出動”をした。自分に憧れてPJを目指し、むちゃに振り回されながらも慕ってくれて、付き合ってくれた仁科…。宇佐美にとって、ただの教え子、後輩というだけではなく、弟のように思っていたのではないだろうか。機内で最初の出会いなどを思い出しながら、遺影の仁科に「何で死んでんだ、バカヤロー」とつぶやいた。すると、これまで抑えていた悲しみが溢れ返り、宇佐美は大声で泣きながら仁科の名前を何度も呼んだ。そして「お前の救難は、あっぱれだーっ!!」と絶叫した。

救難員は何があっても必ず生きて帰ってこなければならない。「自己の安全を最優先にする」というルールに背き、危険を冒して少女を助け、命を落とした仁科の判断には賛否両論あるはずだ。だが宇佐美は、正しかったかどうかはともかく、「助けを求める者の命も心も救う」という宇佐美の教えを貫いた仁科を全力で誉めてやりたかったのだ。そして、仁科の妻・芽衣(黒川智花)も「私だけは誉めてあげたい。夫を誇りに思う」と、悲しみに耐えながら気丈に夫を称えるのだった。

本ドラマは、毎回ドラマだということを忘れさせるほど見ているこちらの感情を揺さぶってくるが、今回は特にやり場の無い悲しみやまるで近しい人物が亡くなったような喪失感を感じさせた。そして、命についても深く考えさせられる回だった。

◆文=ザテレビジョンドラマ部


遺影の仁科と最後の出動… / (C)テレビ朝日

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