不整脈の原因とは?メディカルドック監修医が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「不整脈の原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴・予防法も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
山内 昴也(医師)
東北大学医学部卒業。地域の中核病院で救急医療に従事し、その後東北大学病院精神科で医員として勤務。地域の精神科救急病院で精神科救急医療に従事した後に、東北大学病院精神科に再度勤務。身体疾患を持つ患者に対して介入を行うリエゾン精神医学を中心に、広く精神医療を実践している。医療ライターとしても活動しており、一般の方に正しい医療情報を発信している。
「不整脈」とは?
不整脈は、脈が遅くなる「徐脈」、脈が早くなる「頻脈」、脈が一定ではなくなる「調律の異常」の大きく3つに分類されます。不整脈が起きても全く気がつかないことや動悸を感じる程度でおさまる場合もありますが、症状が強くなるとめまいや冷や汗、眼の前が暗くなる、失神などの症状が出る場合もあります。不整脈の原因や一般的な症状、生じやすい人の特徴、生活習慣、予防法、危険な症状を確認しましょう。
不整脈の主な原因
徐脈性不整脈
脈が遅くなる「徐脈性不整脈」の原因として、洞不全症候群と房室ブロックが考えられます。
洞不全症候群は、心臓が動くように電気刺激を与える洞結節という部分の機能が低下する状態で、70代から80代の高齢者に多く発症します。
房室ブロックは、電気刺激を心臓全体に伝えるための「刺激伝導系」と言われる回路が滞ってしまい、適切に心臓が動かなくなる状態です。
どちらも、脈がとても遅くなり、一時的に脈が停止したりすることがあります。全身倦怠感、息切れ、めまい、失神、目の前が急に暗くなる、吐き気や嘔吐などの症状が現れます。脈が毎分50回以下の徐脈が続く場合には、循環器内科を受診しましょう。失神を繰り返す場合には、転倒して怪我をする場合もあるので、緊急で循環器内科を受診しましょう。専門医の診察を経て、ペースメーカーの埋め込みが必要となる場合があります。
頻脈性上室不整脈
心臓の上の方にある「心房」からの異常な電気刺激により脈が早くなる「頻脈性上室不整脈」の原因として、心房細動や心房粗動、発作性上室性頻脈が挙げられます。
心房細動は心房が不規則に収縮することにより、脈のリズムが完全にバラバラになる状態です。65歳以上の高齢者に多く発症すると言われていますが、明らかな心疾患のない胎児期・新生児や、稀に小学生や中学生の時に発症することがあります。
心房粗動は、心房が規則的に素早く収縮することで頻脈になる状態です。
発作性上室性頻拍は心房や心室との接点である房室結節において、電気刺激を伝える回路に異常が生じることで頻脈になる状態です。症状を自覚しない場合もありますが、脈の乱れ、動悸、めまい、立ちくらみ、失神などの症状が生じることがあります。
気になる症状が出た場合には、循環器内科を受診しましょう。心房細動や心房粗動で症状が強い場合には循環器専門医の判断により薬物や電気ショックにより脈を正しいリズムに戻す場合があります。発作性上室性頻拍では心臓カテーテルによる治療が行われる場合があります。
頻脈性心室不整脈
頻脈性心室不整脈には心室期外収縮、心室頻拍、心室細動の3つがあります。
心臓の下の方にある「心室」という部分が正しくないリズムで収縮することを心室期外収縮といい、心室期外収縮が連続する状態を心室頻拍と言います。さらに、リズムが一定ではなくなり、心室がピクピクと痙攣したようになり血液を送り出せない状態となるのが心室細動です。
心室期外収縮はほとんどの場合が安全ですが、心室頻拍や心室細動は致死的となることがあり、特に心室細動は最も危険な不整脈の一つです。突然脈が早くなり、気を失いそうになる、失神するなどの症状が出る場合があります。速やかに循環器内科を受診しましょう。また、近くで人が倒れた場合にはこの心室細動を疑い、すぐに救急要請をしましょう。
遺伝性不整脈
心電図に特徴的な所見があり、遺伝的な原因が認められるものを遺伝性不整脈といい、QT延長症候群、QT短縮症候群、ブルガダ症候群、早期再分極症候群などが挙げられます。不整脈の原因としては比較的稀であると言われています。
ブルガダ症候群はいわゆる「ポックリ病」として知られており、成人男性の夜間睡眠中の失神や突然死の原因として知られています。健診で心電図異常を指摘されることがあるため、もし検査の必要性について案内をされた場合には、早めに循環器内科を受診するようにしましょう。
期外収縮
不整脈の中で、最も頻度が高いのが期外収縮です。
期外収縮には、心房性期外収縮と心室性期外収縮があります。期外収縮では、脈が早く打たれるため、その後の脈が少し遅れて脈を打つように感じます。症状は無症状のことも多いですが、のどや胸の不快感、動悸、短い痛みのような症状を感じる人もいます。期外収縮は多くの場合は病気と関係なく生じ、30代を過ぎた頃からほとんどの人に認められ、年齢とともに増加します。若者でもストレスや睡眠不足、疲労、コーヒーの摂取により生じることがあります。また、月経前に生じやすいことも知られています。期外収縮であれば動悸を感じたとしても様子見で問題ないことが多いのですが、意識が遠くなるような感覚が生じた場合には注意が必要であり、早めに循環器内科を受診するようにしましょう。
配信: Medical DOC