
2017年から加入できる対象者が広がった
2017年1月から会社員の配偶者である専業主婦・専業主夫(扶養内で働いているパート含む)、すなわち第3号被保険者やこれまでは加入できなかった公務員もiDeCoに入れるようになりました。自分で退職金を準備したいと、iDeCo加入を検討しているというご相談も増えています。しかし専業主婦(夫)の方は享受できるメリットも少ないため、安易な加入には注意が必要です。詳しくは後述します。
また、確定拠出年金にはiDeCo(個人型)と企業型があります。会社の退職金制度のひとつである「企業型確定拠出年金」に加入している人は、2016年末まではiDeCo併用は認められていませんでした。ところが2017年1月から、自分で給与から掛金を上乗せする「マッチング拠出」制度がない会社であり、さらに会社が規約で認めていれば、iDeCoとの併用が可能となっています。しかし規約変更は大変であり、併用が認められている会社はまだ多くないと考えられるので、気になる方は総務など担当部署に確認するのが良いでしょう。
iDeCoに加入して一番得するのはどんな人?
それはズバリ「働いて所得税・住民税を払っている人」です。
そして金額的にもっとも得する人は、掛金を最大年間81万6000円払える自営業の人と言えます。たとえば年収1000万円あり所得税率が20%の人であれば、81万6000円×所得税率20%の16万3200円が節税でき、さらに翌年の住民税も、10%分の8万1600円節税できるため、合計で24万4800円も毎年節税できちゃいます。
もし毎月6万8000円を30年間積み立てられたら元本だけで2448万円に(※)。立派な退職金になりますね。退職金がなく、社会保障が薄い自営業だからこそ、掛金の上限が高く設定されていると言えます。
(※)手数料は考慮していません
もちろん会社員もiDeCoに入れば、毎年、年末調整で節税分の還付金をもらえて、住民税も下がるため、手取りを増やせてお得です。さらに子育て世帯にとっては、住民税をもとに決まる保育料のランクを、iDeCo加入によって下げることができる場合も! 保育料は自治体によって異なるのであくまで一例ですが、3歳未満の子どもを持つ共働き夫婦(夫:年収600万円、妻:年収300万円、江東区在住)が、iDeCoでそれぞれが毎月2万3000円の掛金を払うようにすると、年6万7200円も保育料が安くなるケースもあります。
また、iDeCoの「運用益が非課税」というメリットを最大限享受するには、運用益を多くできる可能性のある、リスク型商品の割合を増やすことがあげられるでしょう。そのため、リスク型商品を多く配分して運用する人の方が、元本割れするリスクはあるものの、お得度も高くなる可能性が高いです。
iDeCoのメリットを享受できないのはどんな人?
働き方やライフプランなど立場によっては、加入はあまりおすすめできないケースもあります。
<専業主婦(夫)>
所得控除のメリットを受けることができない専業主婦(夫)の場合、iDeCoの良い点は、運用益が非課税になることと、強制的に老後資金を貯められることだけです。2018年1月から始まっている「つみたてNISA」を使えば、iDeCoでかかる口座管理手数料など一切かからずに、同じような投資信託で非課税運用することが可能。ただし「つみたてNISA」で非課税になるのは20年間。現在30歳の人なら、50歳までしか非課税にならず、最大70歳まで非課税で積立できるiDeCoと比較すると、若干メリットが小さいと感じるかもしれません。
また中途引き出しもOKなので、強制力もありません。とはいえ、iDeCoでは毎月少なくても167円の手数料がかかるので、所得控除を受けられない専業主婦(夫)は、まずは「つみたてNISA」を活用した方が良いと言えるでしょう。「つみたてNISA」の上限である年40万円を超える運用をしたい場合には、iDeCoがおすすめです。
<今後退職を考えている人>
今は会社員だけど、今後結婚などで退職を考えている人も要注意。退職しても掛金を引き出すことはできないため、そのまま掛金拠出を続けていくか、拠出はせずに貯まった資産の運用を続けていくか選択することになります。拠出せずに持っているだけでも、手数料(運用する場合よりも低いことが多い)はかかるので、せっかくの資産が少しずつ減ることに。退職後、拠出しなくなりそうなら、やめておいた方がよいと考えます。
<赤字家計の人>
今現在、家計が赤字で貯蓄ができていない人も、あまりおすすめできません。まずは家計を見直し、安定させてからスタートするようにしましょう。
老後資産を強制的に作れるため、こうした貯められない人におすすめとも言えるのですが、毎月無理矢理拠出することで、必要なお金を用立てられなくなり、借金などに手を出したら本末転倒です。同様に、高い金利の借金を抱えている人も、iDeCoに入る前に、その拠出予定の金額を返済に充て、金利分をなくすべきと考えられます。
<住宅ローン控除を受けている人>
マイホーム購入直後など住宅ローン控除を受けている人は、iDeCoに入り所得控除を受け課税所得が減ってしまうことで、本来受けられるはずだった住宅ローン控除をフルに活用できなくなるケースがあります。
特に借入金額が大きく、ローン控除できる金額が大きい人は要注意。iDeCo加入がローン控除に影響を与えないかどうか、きちんとシミュレーションしてから加入するかどうか、またその掛金を検討するようにしましょう。
メリットも多いiDeCoですが、人によっては入らない方がいいこともあります。まずは、iDeCoが自分に適しているのか、じっくり考えることから始めてみてはいかがでしょうか。
(文:鈴木さや子 編集:ディライトフル)