●注意した中学生の自転車に「当て逃げ」
住民の不安や不満が高まる中、8月25日に深刻なトラブルも起きたという。
中学2年生になる堀内さんの息子が自転車で通りかかったときのことだ。民家の前に駐車しているシルバーのハイエースを見つけて、外国人の女性ドライバーに「ここに駐車してはダメですよ」と伝えた。
踏切近くに停車すると注意されるので、外国人観光客を待つタクシーは、住宅地の奥へと入り込むようになっているという。住民の間では、違法に停車しているタクシーを見かけた場合、できるだけ通報するよう声をかけあっていた。
息子も携帯から通報した。すると、怒ったドライバーが、息子の写真を撮影し、カタコトの日本語で「お前の学校に連絡してやる」「写真をばらまいてやる」と脅してきた。その後、ドライバーはハイエースを発進して、息子の自転車に車体をぶつけて走り去ったという。
「息子にケガはありませんでしたが、精神的にショックを受け、体調を崩しました」と堀内さんは語る。

●鎌倉市では誘導の実証実験
この被害や踏切周辺の現状について、堀内さんがSNSで発信すると、大きな反響を呼んだ。
投稿がきっかけとなり、堀内さんは観光客増加による治安悪化について対策を求める陳情書を市議会に提出。陳情書は9月16日、市民環境常任委員会で満場一致で採択された。
会期中の市議会でも、踏切付近のトラブル解消を求める声が複数の議員から上がっている。
市側の答弁によると、9月13日から16日にかけて、踏切近くにある公園に撮影エリアを設置、職員12人を投入して観光客を誘導する実証実験をおこなった。9時から16時まで、4日間で合計約9500人が撮影エリアを利用したという。

その結果、日本語で呼びかけるよりも、中国語や英語で話しかけたほうが効果的な場面があり、より効果的な対策を検討しているとした。また、県や県警に対して、強く協力を呼びかけていることも明らかにした。
一方で、常時、警備員を配置する費用負担も課題だ。一部議員からは「外国人観光客から費用を徴収することはできないのか」といった声も出ている。

