会社のトイレを近所の住民に勝手に使われて困っているという相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者によると、近隣のある住民が、たびたびビルの2階にある会社に勝手に入ってきて、トイレを使用しているそうです。その住民が持ち帰っているかは不明ですが、トイレの備品がなくなっていることもあるそうです。
「立入禁止」の張り紙を貼ることを検討していますが、「トイレ使用拒否は法律違反」との声が上がりました。果たして真偽のほどは? そして実際問題、どう対応すればよいのでしょうか。
●近隣住民の会社トイレへの立ち入りは建造物侵入罪にあたる
この会社は、賃貸借契約に基づいて2階部分を利用しています。
民法第601条は賃貸借契約について「当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と定めています。
つまり、会社は賃料を支払う対価として、当該フロアを排他的に占有し管理する権利を有しています。
会社フロアへの無断侵入は、刑法第130条前段の建造物侵入罪に該当する可能性があり、会社が立ち入りを拒否する行為は、自らの財産権や占有権を守るための正当な行為として法的に保護されます。
●建築士「トイレ使用拒否は違法」というアドバイスは、誤解の可能性?
「トイレ使用拒否は違法」という疑問の声があがったとのことですが、法的に正確ではありません。これは公衆便所と私設便所の区別を混同している可能性があります。
各地方公共団体が定める多くの公衆便所条例などでは、自治体が設置する公衆便所について、「公衆の利便」のために公衆便所を設置することを定めており、誰もが利用できることを原則としています。
これらの条例では、公衆便所を損傷・汚損するなど一定の事由がある場合に使用制限ができるとされますが、あくまでも制限は例外的といえます。
しかし、会社のトイレは「公衆便所」ではなく、従業員等の利用を目的とした私設便所です。これらの条例はそもそも適用されません。
また、鉄道駅や大規模商業施設などのトイレは不特定多数の利用者を想定して設置され、社会通念上利用を拒否することが難しいと考えられますが、今回のケースは会社という個人の占有する空間内にある施設です。
コンビニエンスストアがトイレの使用を従業員や特定の顧客に限定するのも問題ありませんが、今回のケースはそれ以上に法的に問題ないといえるでしょう。

