学校や部活動で教師や顧問の「体罰」が常々問題になることが少なくない。
最近も「挨拶ができていなかった」という理由から、高校の女子バスケ部の顧問が部員を「7km歩かせた」として問題になった。学校側が生徒や保護者に謝罪したという。
ひと昔前の「熱血」指導が良しとされていた時代であれば許容されていた「指導」が、現在では通用しなくなってきた。
弁護士ドットコムに、「雑巾掛け」に疑問をもつ生徒たちからの相談が届いている。雑巾掛けは体罰なのだろうか。 それとも適切な指導の範疇なのか。
●先生の気分次第で…忘れ物したら教室2部屋分を20回往復
相談を寄せた高校生によれば、「忘れ物」や「遅刻」など学校生活の失敗をした生徒に対して、学校の先生が気分次第で雑巾掛けを命じてくるという。
2つの教室をあわせた広さの部屋で、往復5〜20回程度の距離だそうだ。
別の高校生も、教科のテストで100点中90点以上をとらないと、延べ1kmにわたって雑巾掛けを命じられるそうだ。
「フロアの廊下はちょうど100mくらいで5往復させられます」
この高校生らは、「先生が強制的にできるものなのか。そして、生徒らは絶対に受けなければならないのか」と疑問を抱いている。学校の問題に詳しい柴崎菊恵弁護士に聞いた。
●過去には中学の廊下100往復雑巾掛けで「懲戒」範囲を超えたと判断
——雑巾掛けや掃除が「体罰」にあたるケースはあるのでしょうか。
学校教育法第11条では、校長や教員は、教育上必要があるときは、児童、生徒及び学生に「懲戒」を行うことはできますが、「体罰」を行うことはできないと定められています。
そして、この「懲戒」を行う場合であっても教育的配慮に基づくことが必要とされています。
雑巾掛けや掃除を「懲戒」として行うことはできますが、その内容が「懲戒」の範囲を超えて児童等に肉体的な苦痛を与える行為にあたると判断される場合には「体罰」にあたります。
過去に報道された事案としては、教員が中学生2名に8日間で職員室前の廊下(22.5m)を100往復(※単純計算で4.5km)雑巾掛けをさせた事案や小学生2名に便器の周りに漏れていた尿を素手で雑巾を使って掃除するように指示した事案は「懲戒」の範囲を超えたものと判断されています。
——弁護士ドットコムには「テストで90点以上とらなければ1kmの雑巾掛けを命じられる」といった相談が寄せられています。これは「体罰」と考えられるでしょうか。
文部科学省のガイドラインでは、教員等が児童生徒に対して行った「懲戒」行為が「体罰」にあたるかどうかは、単に、懲戒行為をした教員などや、懲戒行為を受けた児童生徒・保護者の主観により判断するものではありません。
児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、行為が行われた場所や時間、懲戒の態様などの諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに客観的に判断すべきであると定められています。
1kmの雑巾掛けは高校生であっても相当な身体的苦痛を受けるものです。テストの内容や範囲が事前に高校生に示され、雑巾掛けも事前に告知されているなどの特別な事情も存在しなければ、雑巾掛けが教育的配慮に基づく「懲戒」とは認め難いでしょう。実施時間が放課後であれば「体罰」に該当する可能性がより高くなると考えられます。


