誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
あの人の面影を蒸し返すように、華やかで賑やかな光が向日葵越しに、夕暮れの代官山を彩っている
選びきれていない言葉の断片を、順序も気にせずランダムに紡ぎ出してゆく
スクリーンの残光が彼らの瞳に映るたび、昔の恋を思い出したり、もう名前も忘れてしまった人たちについてを語り出す不毛さは、平和に呆けた証のようで
僕は産まれる前の記憶を消し去ったように、君とは未来のことばかりを
明るく軽やかな旋律、胸の奥に微かな影を落とした
「好きになるということは、もっと単純なことだと思っていました」書いては消すスマホの中では、ただ夢中になりたかっただけという本心を隠したままに
大人になるにつれて臆病になり、傷つくことを覚え、失うことには敏感になる
それでも誰かを求めてしまうのだから、人の心というものは不思議
みな急ぎ足で、それぞれの夜へ向かう
どんなに賑やかな街でも、本当に淋しい気持ちは、案外静かな場所でしか育たないのかもしれない
歌はもう終わっているのに、余韻だけは胸の中に
恋というものは、終わったあと、いちばん美しくなるのか
君と僕だけは黙ったまま、あらゆる可能性だけを灯し続けてゆくだけ

小泉今日子『Kyon30 ~なんてったって30年!~』(2012年、 ビクターエンタテインメント)収録

