8000円の席なのに、花火がほとんど見えなかった──。鹿児島市の花火大会で有料席を購入した観客から、そんな不満の声があがっていると地元紙・南日本新聞が報じた。
記事によると、8月23日に鹿児島市内で開かれた「かごしま錦江湾(きんこうわん)サマーナイト大花火大会」で、20代女性は8000円の有料席を購入。
公式サイトには「花火を真正面から観覧できる」と書かれていたが、実際に割り当てられた席からは、花火の7〜8割が一部または全部、木に遮られたという。
地元放送局がYouTubeで配信した映像を見ると、花火は横に広がって打ち上げられ、高さや大きさも異なっていた。だが、目の前に高い木や建物があれば、視界が遮られて見えなくなることはありえそうだ。
では、主催者側の説明と異なり、花火が十分見えなかった場合、チケット代の返金を求めることは法的に可能なのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●有料席チケットは「快適に観覧できるサービスの提供」
──有料席を購入したのに花火がほとんど見えなかった場合、返金を求めることはできますか。
私だったら滅茶苦茶腹が立ちそうな話ですね。
有料席のチケットは単なる座席の使用権ではなく、「花火を快適に観覧できるサービス」を提供する契約と解釈されます。公式サイトで「真正面から観覧できる」と明示していたのであれば、その表示は契約内容の一部を構成します。
したがって、花火の大半が見えなかったのであれば、提供されたサービスが契約内容に適合していない、つまり「契約不適合」(民法562条以下)にあたる可能性があります。その場合、返金や代金の減額を請求できる余地があるでしょう。
ただし、主催者側が「天候や立木で視界が遮られる場合がある」といった注意書きをしていた場合は、全額返金を求めるのは難しいかもしれません。それでも一部返金や代替措置を交渉する余地は残ります。
●「証拠を残すことが交渉力につながる」
──実際に花火が見えなかったとき、どう対応すればいいですか。
気づいた時点で会場スタッフに伝えて、席の変更などを要請するのが現実的です。その際は、遮られている状況を写真や動画で記録しておくことが大切です。後に返金や補償を求める際、証拠の有無で交渉力が大きく変わるからです。
主催者が任意に対応してくれない場合でも、消費生活センターに相談すれば、法的手続きに至らずとも解決できるケースも少なくありません。
結論としては、「真正面から観覧できる」と説明されながら実際には大部分が遮られていたなら、返金を求める法的根拠はあります。ただし、注意書きや主催者の対応によって結果は変わるでしょう。
観客としては、当日すぐに申し出ること、証拠を残すこと、事後的には消費生活センターを活用することが現実的な対処法といえます。
今年は花火を見れませんでしたが、花火は楽しく見たいものです。

