週末の公園や地域のお祭りなどで、おそろいの服を着て活動するガールスカウトの姿を見たことはありませんか?
知らなかった!ガールスカウトで「自ら考え、行動する力」が育まれる秘密
30,638 View「自分で考えて行動できる子に育ってほしい」「いろんなことに挑戦してほしい」「お友だちをたくさんつくってほしい」…。親として子どもの将来を考えた時、大切にしたいことは様々です。こうした「生きていくために必要な力」を育むことができる場の一つに、「ガールスカウト」があることをご存知ですか?その活動に密着しながらガールスカウトで様々な力が育まれる秘密をご紹介します。
ガールスカウトってどんな活動をしているの?
社会の課題に目を向け地域社会に貢献する活動や、自然の中で行うアウトドア・アクティビティのほか、世界中のガールスカウトとの国際交流など、実に幅広い活動をしています。
様々な年代の少女たちが、楽しそうに生き生きとしている姿はとても魅力的に映ります。
そんなガールスカウトの活動を通して、子どもたちが「生きる力」を育むことができるのはなぜでしょうか?
その秘密は、プログラムの組み立て方と大人の支援の仕方にあります。
プログラム構成の一つひとつに、活動理念に沿った明確な意図があり、子どもたちが自然と自分たちで考え、行動することができるような仕掛けが取り入れられているのです。
そこで今回は、野外活動の一つである「秘密基地づくり」に編集部が密着レポート!
子どもたちは、秘密基地づくりを通して、何を考え、どのようなことを学んでいるのでしょうか?
初めて出会った友だちと、一緒につくる「秘密基地」
今日は、関東近郊で活動するガールスカウトたちがキャンプ場に集まり、一緒に「秘密基地」をつくることになりました。
初めて会うメンバーもたくさんいます。
幼稚園年長~小学生までの女の子たち約30名が、リーダーと呼ばれる成人女性指導者の合図で集まります。
「今日は、たくさんの仲間が集まりました。はじめましてのお友だちと仲良くなりましょう。そして、お友だちとアイデアを出し合って、とびっきりステキな『秘密基地』をつくってください!」
まずは、広いキャンプ場の中を思い切り駆け回りながら、体を使ったゲームを通してグループ分けをします。
グループが決まったら、メンバー同士で自己紹介。
「今日、一日よろしくね。」
続いて、リーダーが今日のルールの説明をします。
守ることはこの4つ。
【ルール】
①秘密基地に自然のものを使っても良いけれど、折ったり傷つけたりするのはやめましょう。
②秘密基地は仲間と相談してつくりましょう。
③具合が悪くなったり、トイレに行きたくなったりしたら、リーダーに教えてね。
④このキャンプ場の外には出ないこと。そして1人で行動しないこと。
ルールを確認したら、さっそく取りかかります。
秘密基地の材料として、ダンボールや布、竹、カラフルなリボン、風船、マジックなどが用意されています。
「さあ、どんな秘密基地をつくろうかな? 仲間と相談して始めよう!」
リーダーがみんなに声をかけました。
ガールスカウトには、「このようにしなければならない」という型にはまったルールはありません。
そのため、“どうするか”を自ら考えてもらえるような声がけをしていきます。
「はじめに、秘密基地の絵を描こう!」
材料を眺めていたあるグループは、画用紙に秘密基地の設計図を描き始めました。
別のグループは、公園に落ちている木の枝を探しに走っていきました。基地に自分たちの旗を立てるのだそうです。
リーダーたちは、そんな子どもたちの様子を見守ります。もちろん、行き詰まっているグループを見かければ、アドバイスして背中を押します。
同じ目的に向かって、周囲と協力し合うことを経験する
秘密基地づくりも終盤に差しかかり、いよいよ仕上げという時。あるグループでは、メンバー同士の意見がちょっと食い違っているようです。
「入り口をカーテンみたいにしたほうがかっこいいよ」
「でも、それじゃ中が見えないよ」
そこで、少し年上のメンバーが助け舟を出しました。
「じゃあ、カーテンをまとめて、ふんわりたらしておいたら?」
自分たちで話し合い、ちゃんとみんなが納得するような解決方法を見つけることができたようです。
みんなで考えた秘密基地をつくりあげる過程では、
「自分は何をすればいいのか?」
「分からないことやできないことに直面した時、どうすればいいのか?」
など、様々な疑問が浮かんできます。
子どもたちは、これらに対して自分なりの解決方法を見つけながら、試行錯誤して乗り越える経験を積み重ねていきます。
ガールスカウトではこのような経験をするからこそ、自分の役割について考え、自ら行動する力が育まれるのです。
完成したら、自分たちの秘密基地のお披露目!格別の達成感を
あっという間に2時間がたちました。それぞれに工夫を凝らした基地が完成したようです!
さっそく中に入って遊んでみたり、お弁当を食べたり。
気づいたら、グループのメンバーとも、今日会ったばかりだと思えないほど仲良しに!
グループごとに自分たちの秘密基地を紹介して、工夫したところや自慢のポイントについて発表します。
「メンバーみんなの顔を描いた旗を入り口に立てました!」
「ペットボトルにドングリを入れて音が出る飾りをつけました。」
「長い棒とロープを使って、屋根にしたところ!」
そして最後には、活動全体を振り返ります。
「今日は皆さん、初めて会った人と、ちょっと勇気を出してお友だちになることができましたね。
アイデアをいっぱい出して材料を集めたり、絵を描いたり、ないものは工夫したり。みんなで協力して、すばらしい秘密基地をつくることができました。お互いに『ありがとう』って言おうね。
自分の意見を言うだけでなく、お友だちの意見をちゃんと聞くこともできましたね。みんなとてもがんばりました、おめでとう!」
ガールスカウトの活動に隠されている「秘密」
共同作業の中で、自分で考えて動きながら試行錯誤し、仲間と一緒に何かを成し遂げる。
その達成感を味わうとともに、周りからも認められることで、子どもたちはどんどん自信をつけていきます。
ガールスカウトの活動は「自己開発」「人とのまじわり」「自然とともに」の「活動の3つのポイント」を大切にしながら展開されていて、発達段階に応じて様々なプログラムが用意されています。
これらのポイントにバランスよく触れながら活動し、子どもたちが楽しみながら参加することができるように、プログラムの構成や進め方、リーダーからの声かけなど、様々なところに工夫を凝らしています。
大人は手を出しすぎずに、子どもたちから自発的な声を引き出すための声かけをすることで、子どもたちの可能性を伸ばすように支援しています。
子どもたちは、幅広い年代の女の子同士で活動する中で、ロールモデルとなる女性の姿を見ながらたくましく成長していきます。
そして体験活動を通して世界中にたくさんの友だちをつくり、絆を深めていくのです。
これは、子どもたちにとってかけがえのない財産となります。
ガールスカウトは、子どもたちが生きていく力を育む場所
子どもたちが将来、社会に出て自分の力で歩んでいくためには、幼少期から思春期にかけて様々な「生きる力」を育むことが必要です。
2006年に、経済産業省から「社会人基礎力」というものが提唱されました。
これは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」のことで、次の3つの能力で構成されています。
こうして見てみると、社会に出てから必要となる力は、ガールスカウトで育むことができるものと重なる部分が多いことに気づきます。
これらの力は幼いころから体験を重ねることで、しっかりと身についていきます。ガールスカウトはまさにそれが体験できる場なのです。
また「ガールスカウト」という名前ですが、「女の子らしいことを学ぶ団体」ではありません。
大切にしているのは、社会で生きていくために必要な「自ら考え行動する力」を育むということ。
女の子だから、男の子だからという固定観念にとらわれることなく、自分のしたいことにのびのびと挑戦する環境があるのです。
今回ご紹介した活動は、数多くあるガールスカウトの活動のほんの一例ですが、他にも幅広い活動が繰り広げられています。
将来、子どもの置かれる状況はどのようになっているのか?今から予測することは難しいかもしれません。
だからこそ、子どもたちがより豊かな人生を歩めるよう、「自分で考え、自分で行動する」という「生きる力」を育む一つのきっかけとして、ぜひ「ガールスカウト」に参加してみませんか?
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