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公開 2018年02月16日  

人生そのものが激変した…『ダーリンは外国人』夫婦が、今だから語れること

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『ダーリンは外国人』のさおりさんとトニーさん。育ってきた環境も文化もアイデンティティも違う二人が出会い、家族になりました。お互いがお互いをどのように捉え、認め合っているのか。そして子どもが出来た時に、その家族はまたどのように変わっていくのか。「国際結婚」とひとくくりにはできないトニーさんとさおりさんらしい家族のかたちをインタビューしました。


“違い”を楽しむから“お互いを認める”へ…『ダーリンは外国人』の裏話

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Profile
トニー/ハンガリー、イタリアの血を受け継ぎ、アメリカで教育を受けた。ジャーナリスト、大学講師の仕事を経て、現在、語学と教育を専門とする執筆家。

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Profile
さおり(小栗左多里)/コミックエッセイ『ダーリンは外国人』シリーズ著者。長男トニーニョくんが小学校進学を機に現在は家族でドイツ・ベルリンに在住。

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――― まずは、お二人はとって文化の違い、育ってきた環境の違いなど、お互いの間にある「違い」をどのようにとらえていますか。

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「違いが生じるときはたいへん。 でも、『一生』という長いスパンで考えれば、違いがあったほうが面白い」

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「私は似過ぎていると、飽きてしまう方。基本的な価値観が通じていれば、枝葉は違いがあるからこそ、新鮮で楽しいです。(たまに枝が太いけど)」

――― お互いが「違い」を楽しみ、「違い」があるからこそ面白いとのご意見ですが、その考えにたどり着くまでにはお互いの紆余曲折があったはず…ですよね?

何かエピソードなどありますか?

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「ベルリンに移ったとき、テレビを買うか買わないか、夫婦で少しもめた。

いらないと主張したのは僕だけれど、おかないほうがメディア対策になると考えていた。

つまり、テレビがあると、無意識にそれに影響されるし、つけっぱなしになりがち。

特に見たいと思ってもいない番組が家族の読書時間にも食い込んでくる」

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「私もテレビはあまり見ないけど、子どもがドイツ語早く覚えるかなとか、友達との会話についていけるようにとか考えたわけですよ。

特別悪いものとも思っていないし。

読書時間といっても、トニーもかなりの時間、パソコンやってますのでねー」

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「妥協として買ったポータブルDVDプレーヤーで図書館からときおり借りてくる映画やドキュメンタリーを見ることになった」

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「息子には、注目されるサッカーの試合があった翌日は、朝ごはんの時、得点シーンを中心に試合をざっと見せて、友達と話ができるようにしています。

これ重要です」

——— お二人とも絶妙な妥協点を見つけましたね(笑)。

他にも「違い」が原因でなにか問題が起こった時、どのように解決をしてますか?

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「違いの原因? 全部僕が悪いで~す(笑)」

――― え! 本当ですか?

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「そう。基本全部トニーが悪いんですが(笑)、負けるが勝ちとかうそぶかないよう、妥協点が見えてくるまで話し合うようにしてます。

アインシュタインの『常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことだ』という言葉を忘れないようにしたい。

これは理想ですね」

——— 今はとても息がぴったりに見えますが、正直、今まで国際結婚は難しい!と思ったことはありますか。

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「相手との価値観が違いすぎたら、きっと大変だろう。僕たちはセーフ。……ぎりぎりセーフと思う日もある」

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「トニーがいろんなことにあまり固執しない方なので、真剣に難しいとは思わないです。違いも、むしろ外国人だからと諦めがつきます」

――― 結婚をして自分の中でなにか変化したことはありますか。

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「人間は結婚だけではそう変わらない気がする。激変がくるのは、子どもができたとき」

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「私も結婚ではそれほど変わりませんでしたが、まさに同じ言葉を使いますが、子どもが生まれたら激変!

子どもが幼児の頃は、史上最悪にもめたり……。

自分のことではないから余計に……。

寝てないので、さらに余計に」

――― 「子どもができた」ことで激変ですか!?

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「子どもが生まれた後は、とにかく『人生そのもの』が変わりました。

自分の命より大事なものがこの世にできたので、その子に良かれと思うことは自分のことより譲れない。

なので夫と意見が違う時、妥協点を見つけるのがなかなか難しく、雰囲気が険悪になることも結構ありました」

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「たとえば最初は、清潔さに対する夫婦の考えが同じくらいのものと思っていた。

でも、子どもができると『ハイハイ』が課題になる。

発達を重視し、なるべくハイハイをさせたほうがいいと考えていた僕に対して、だいたいの場所では「床が汚い」という理由で妻は同意してくれなかった。

小さい課題に聞こえるかもしれないが、こういうときの衝突と妥協に通じて、いろいろな変化が訪れることになる」

――― まさに、父目線と母目線のせめぎあい、ですね……。

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「汚い床でハイハイさせるかどうかも、ハイハイした後、そのまま手を口に持って行く年頃だったので不安だったし(旅先でもあり)、風邪が治りきってないのに寒くても外で遊ばせようとするとか、子どもの体調が関係することは譲れなかったので仕方ないですね。

今も正解はよくわからないし……。

でも本人の意思を聞けるようになって、そういうことは減りましたね」

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「子どもが生まれるまでは、夫婦の考えに違いは見えないけど、子どもができたことによる変化といえば、その違いを確認でき、意識するようになり、はじめて衝突を回避してみたり、妥協してみたりするようになる、ということかな」

——— なるほど! では、子育てにおいて、夫婦の役割分担ってありますか?

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「僕のほうが子育てや教育を研究して、『戦略』を立てるほう。

さおりはもう少し『なるようになる』派かな」

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「トニーは理想が高くて教育熱心、かつ割と厳しい。でも息子は父が大好き。

私は緩くて『まぁいっかー』と言いつつ、トニーの教育がうまく花開きますようにって寝る前に祈る役(笑)」

——— とてもいいバランスですね! お互いにどんな子育てをしたいと思っていますか。

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「子どもの興味のある分野を意識しつつ、後ろから導く」

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「『日本に住む子どもは自己肯定感が低い』という調査結果があり、気になっています。

なので行動に対して注意はしますが、人格は否定しないように、マイナスよりプラスを見るようにしたいと思っています。

これも先ほど挙げたのと同じ、理想の一つですが」

――― 夫婦が良い関係を築いて行く上で大切にしていることはなんですか。

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「『Yes, but精神』かな。相手のアイディアになるべく同意できる部分を見つけてから、異論を唱える。

言うのは簡単でも実施するのは……(難しい)」

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「すぐさま拒否しない。

私も前は1秒でトニーの意見を却下していたけど、今は3分ほど話を聞いてから却下できるようになりました(笑)。

いや、延べにして何時間も話したり、私が折れることもよくありますよ」

――― お二人はお互いを尊重し合っているなと感じます。一緒にいて幸せな瞬間、あったりしますか。 

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「人間って、幸せを求めているときが一番幸せだ。それを常に自覚しようとしている」

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「名言っぽいことを言おうとしてる時じゃなく、お互いにしかわからない冗談で笑ってる時。

あと片方のアイデアを、もう片方がさらに良いものにしたとき」

――― とても素敵ですね。 お二人らしい「家族」とはどんな家族ですか。

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「『あの一家と付き合いができてよかった』と、数人に言われればいいかな」

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「それぞれが興味あることを、みんなで考えたり、話したり、ふざけたりしていければいいなと」

——— これから先、お二人はどんな「家族」になっていきたいと思いますか。

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「春雨じゃ、濡れてまいろう」

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「『今は秋だよ!』って言いつつ、ちょっとは一緒に濡れてみる感じで」

――― そのこころは?  

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「エキスパートではないけれど、月形半平太は
この台詞で『ちょっとくらいの雨は問題ではなく、気にしないで前へ進もう』と言っているように思える。

我が家も、同じように前向きに生きていきたい、と思っています」

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「ちょっと違ってる気もするけど、『とりあえずちょっとは一緒に行ってみよう』という感じ。

お付き合いするときも、付き合ってもらうときもあるわけで、ベルリンに住むとか思いもよらなかったことが起きるけど、それもまた人生の味わいかと思います」

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もともと違う価値観があるからこそ面白い。というところから始まったトニーさんとさおりさんの家族。

お互いの意見を尊重しあい、自分たちらしい関係を作っていくために、とことん話し合う(時々はあきらめることも必要)、ということはどんな関係性を築いていく上でも大切なこと。

外国人だから、日本人だから特別な関係性なのではなく、人と人の心のつながりを大切にしているからこそのお二人らしい家族のかたちがそこにありました。

枠にとらわれない自由な家族の生き方にこれからも注目していきたいと思います。

※ この記事は2024年11月21日に再公開された記事です。

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