「パパは立ち会いされますよね?」
お世話になる産院での初めての打ち合わせで(私は里帰り出産の為、妊婦検診は住んでいる東京の病院で、実際に産むのは新潟の病院でした)、さも当たり前のように助産師さんに聞かれました。
妊娠5ヶ月目の時のことです。
「いえ……産まれそうになったらとりあえず来て貰おうとは思っていますが、LDRに入って貰うのはちょっと……」私は言葉を濁しました。
と言うのも、私も主人も、この段階では立ち会い出産を希望していなかったからです。
私側の理由は、
・必死にいきんでいる姿を見られるのが恥ずかしい
・産後、女性として見られなくなるのではないか
・出産当日、主人が仕事だったら申し訳ない
主人側の理由は、
・いまひとつ自分の子供が産まれるイメージが沸かない(自分が立ち会う必要性が分からない)
・仕事の調整がきかない
一応は事前に話し合った上で、「立ち会い出産じゃなくてもいいよね」というのが私達二人の考えでした。
それを助産師さんに伝えると、立ち会い出産のメリットを説明され(私も既にインターネットや本で調べていた内容そのものです)、暗に「立ち会い出産にすべき」と言われているようでした。
その日は、「もう少し、旦那さんと話し合ってみてね」ということで、バースプランは臨月の頃までの宿題ということに。
私としては、出産中にLDRに入らなくても、一番最初に抱っこして貰えればそれでいい。
それだけのバースプランでした。
実母は「お父さんなんて居ても邪魔だったから分娩室の外に居て貰った」と言います。
また私の友人の中には、友人自身が産まれた時、彼女のお父さんが病院に来たのは1週間後だったという人も。
最近は随分と立ち会い出産がメジャーになってきたようですが、それは一体いつの頃からなのでしょう。
出産経験のある友人や、母親学級でお話を伺った先輩ママさんなどにリサーチしても、ママ側から希望した、もしくはパパが立ち会う気満々だったという意見ばかり。
いろんな話を聞けば聞くほど、私は一体どうしたらいいのか、どうしたいのか分からなくなってしまい、そしてそれを仕事が忙しい主人に話せずにいました。
臨月を迎え、実家の新潟に帰る際、私は「産まれそうになったら連絡するから、仕事じゃなかったらすぐに来てね」とだけ主人に伝えました。
私は無意識のうちに、「仕事があるんだから立ち会いは無理だと思おう」と主人に遠慮していたように思います。
予定日の5日前の深夜、ゆるやかな痛みと共に、おしるしがやってきました。
奇跡的にも、多忙な主人の休日前夜。
主人にいよいよ出産が近いことを電話で伝え、朝を待って病院へ。
子宮口はなかなか開かず、先生の見解ではもう1日かかるだろうとのこと。
これなら主人も来られる…一番最初に抱っこさせられる。
そう思うと、辛い陣痛も主人と赤ちゃんに会える喜びで耐えられる気がしました。
ところが、その数時間後、いきなり子宮口が6センチに!
「今からLDRに行きましょう」と助産師さん。まだまだお産までかかると思っていた私は、突然のことにパニックで、急いで主人に電話しました。
「さっさと東京駅行って新幹線乗りなさいよ!」ほぼ怒号です。
こんなふうに主人に声を荒らげたのは初めてでした。
痛みで朦朧としていく中、私はこの出産を主人と共に乗り越えたいと心から思ったのでした。
立ち会い出産はその後の父親の育児の協力率が上がる?
立ち会い出産は女として見られなくなる?
そんなことはどうでもいい。ただ、「側にいて欲しい」と。
LDRのドアを隔ててではなく、私の隣で。
分娩台で、助産師さんには「パパは間に合わないかもなあ」と苦笑いされてしまいました。
私は分娩台にスマホを持って上がり、ずっとLINEで主人に「死にそう」「早く来い」「今どこにいる?」などと送り続けていたのです。
ちなみに、それまでずっと付き添ってくれていた実母は、晩ご飯を食べに1度家に帰っていたため、私の側に立っていたのは助産師さん一人。
ある意味誰よりも心強い。
主人とのLINEで忙しい私は帰ってしまった親に連絡しようとは微塵も思い浮かばず、あれよあれよと1時間強で赤ちゃんは産まれてしまいました。
2016年9月11日の夜でした。
まさか自分でも、こんな土壇場で主人の立ち会いを望むなんて思ってもいませんでした。
結果、主人は生まれてから2時間後に病院に到着。
立ち会いは叶いませんでしたが、あの時電話越しに本音を叫んで(そして分娩台からLINEで実況中継をして)、きちんと主人に自分の気持ちをぶつけられたので、後悔のない出産ができたかなと思います。
そしてあまりのスピード出産に母体は追いつかず、産道裂傷で出血多量の私は立ち上がることはおろか上体を起こすことすら許されず、半日ベッドに寝たきり。
手だけは動かせたので、コットの中の赤ちゃんに触るのがやっと。
当初のバースプラン「パパが一番最初に抱っこ」は間違いなく叶ったのでした(笑)
ライター名:モリオカマリエ