双子妊婦として7ヶ月検診を受診したある日、主治医から「今までお腹いたくならなかった?」と聞かれました。
「お腹……大きくなってきて苦しいし、お風呂に入った後とかちょっとしんどいですかね。立っていると辛い時あるかも。」と言うと、「お腹が張っています。切迫早産になっているので至急入院してください。」と言われました。
「張っている?この苦しさ=張っている?」と思いながら、ついにこの日が来た……それが2ヶ月弱の入院生活のスタートでした。
双子妊娠26週、胎児の体重が2人併せて2000g近くなり、子宮も大きくなって子宮頸管も短くなり、私の身体はいよいよ出産体制に入ってしまったようでした。
入院するとすぐに張り止めの点滴をすることになりました。
子宮は筋肉なので子宮の収縮を抑え、陣痛につながらないようにするための点滴なのですが、この点滴、投与がはじまると、身体の力が抜けるのです。
最初の日は箸も握れないほど手が震えました。
が、次第に身体は慣れていき、普通に生活できるようになりました。
張り止めなので、出産日まで外すことは許されません。
トイレもシャワーも点滴と共に、という生活がスタートしました。
日中はお腹にモニターをつけて胎児の胎動や心拍数、子宮の収縮を確認します。
胎児が起きている時に計測しないと意味がないので、寝ている胎児がいると、看護師さんは容赦なく胎児用のアラームで起こそうとします。
相部屋で、他の胎児ちゃんが寝ていてアラームで起こされると、その音で他の胎児ちゃんも起きて動き出すということもあり、なかなかできない面白い体験ができました。
消灯前には胎児の心音を確認するのですが、双子の場合は二人分の心音を確認するので、自然と場所で呼び名が決まり、我が家の場合は、下にいる子が「1番ちゃん」、上にいる子が「2番ちゃん」と呼ばれるようになりました。
毎晩子供たちの心音を聞けたことは不安な入院生活の精神安定剤になりました。
県内でも大きなNICUのある総合病院だったので2ヶ月半も入院していると、
妊娠高血圧症候群のため、光も刺激になるからとカーテンを閉めた暗い部屋で過ごす妊婦さん、同じ双子でも双胎間輸血症候群という私よりリスクのある状態の妊婦さん、妊娠予定日を超過した妊婦さん……
漫画『コウノドリ』ではないけれど、本当に色んなケースで入院してくる妊婦さんと出会い、そして出産を経てみんな母になっていくのでした。
入院中に仲良くなった双子の妊婦さんがいました。
「私は上に子どもが2人いて、今回は3回目の出産だけど、今まで妊娠や出産を軽く考えていた。
出産を控えた友人にも”頑張って。”なんて言ってしまっていたけど、みんなそれぞれ事情があるし、不安もあるし、出産って十人十色だよね。すごいことだよね。」
と言いました。
本当にそのとおりだと思いました。毎日お腹の中の命と向き合って、無事に産まれてくれることを願う日々。
妊娠期間は母として逞しくなるために与えられた時間のように感じました。
26週から入院し、28週、30週、32週、34週(ここまできたら肺呼吸ができる)
と、2週間ごとに胎児の成長によって出産した場合のリスクが低減するので、なるべくお腹の中にいてもらおうと看護師さんに励まされ、迎えた36週。
あと1週間で(正期産37週)出産できる。ようやくこの、「肋骨と恥骨のダブルキック」から開放される日が近づいてきたと安堵していたら……、思わぬ展開が待ち受けていました。
予定帝王切開を翌週に控えた最後のエコー検診で、胎児の様子を見ていた医師の表情がだんだん深刻に。
「臍帯下垂になっています。赤ちゃんが遊んでいたのかな〜。
臍帯が赤ちゃんよりも先に子宮口の入り口に下りてしまっていて、今、破水してしまうと臍帯脱出(臍帯が胎児より先に子宮から出てしまう)となって赤ちゃんに酸素が行き渡らなくなり、最悪の場合は仮死になることも。
危険な状態なのでオペが必要です」と、説明を受けました。
急転直下、翌日朝イチでの緊急オペが決まり、「あと1週間で産める〜」モードから一転の緊迫した状況に、その夜はまさしく眠れぬ夜を過ごしました。
とにかく明日の朝までどうにか無事でいて。破水しませんように……。
と願いながらお腹の中の2人と最後の夜を過ごし、翌日緊急帝王切開を迎えました。
手術自体は本当に早業でした。緊急オペでしたが、事前の希望どおり横切りをしてくれて、医師達は普通におしゃべりをしていました。
部分麻酔なので、話の内容も聞こえているし、こっちは開腹されているのにー!と思いながらも、オペは進みます。
赤ちゃんが取り出されるはずなのに、グググっと押された感じで、気づいたときには「1番ちゃんです」と取り上げられていて、1分後には「2番ちゃんです」と二人とも無事に生まれるてくることができました。
眼の前につれてきてもらったのですが、視力が悪く、ぼんやりと初めて対面した我が子は「とても小さい」というのが感想でした。
あれ?ここはもっと感動するはずじゃないだろうか、と思いながら、お腹の中にいた双子たちが外の世界に出てきたんだなーと、感動よりも喪失感を覚えたように思います。
その後、後陣痛なる今まで誰も教えてくれなかった人生最大級の痛みを経験(双胎の場合は子宮も倍大きくなっているので収縮の際の痛みが強いようです)。
悶絶の時間を過ごしましたが、なんとか無事に双子に出会うことができました。
予期せぬことだらけの出産でしたが、たくさんのことを学び貴重な経験になりました。
ライター:ogi