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公開 2018年12月25日  

息子の「記憶力」が、大切なことを思い出させてくれた<第二回投稿コンテストNo.21>

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幾度となく、息子くんの記憶力の良さに驚かされているというまりさんですが、一般的に3歳までの記憶はなくなってしまうとよく聞きます。でも、親にとって、ひとつひとつの出来事がキラキラした思い出となって胸に刻まれていくのです…

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10567001373

>【第一話】から読む


「おかあしゃん、こえ、ひいばあばにもらったやちゅ」

子どもに大人気の某キャラクターが描かれたスプーンでごはんを食べながら私に話しかける息子、2歳。

「…えっ!?よく覚えてるね」

息子は記憶力がいい。

記憶力の衰え始めた三十路の母である私は、息子の記憶力に心底驚き目を見張った。

初めて育児をして、物心がつく前の子どもでも、こんなに記憶力がいいんだ…ということを、知った。


我が家には、某キャラクターの描かれた同じスプーンが2本ある。

ひとつは、随分前に某キャラクターが大好きな息子のために近所の赤ちゃん用品店で私が選んで買った。なのでキャラクターのイラストがところどころ剥げている。

それからしばらくして、息子を愛してやまないひいおばあちゃんから同じスプーンをもうひとついただいた。まだ新しいので、キャラクターのイラストは綺麗なままだ。

息子は、そのふたつのうち後者のスプーンを見て「ひいばあばにもらったスプーン」だと言った。イラストが剥げてしまっている私が買ったほうのスプーンを見てもそうは言わなかった。

ひいおばあちゃんからスプーンをもらったのはもう半年近く前のことだ。本当によく覚えている。


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息子と買い物に行き一緒にお菓子を買った際には、どうせ忘れてしまうだろうと考え、お菓子は買い物から帰ってもそのまま私のカバンの中に隠すように入れておいた。

…が、帰ってから、

「らむねかったんだった!たべる!あと、こちょも」

と言われ驚いた。

「こちょ」とは、母が自分の間食用にとこっそり買ったはずのチョコレートのことである。

正直侮っていた。

息子が2歳になったばかりのときのことである。

…もうごまかしがきかないなと、そう思った。



お菓子にまつわる息子の記憶力の良さに驚いたエピソードがもうひとつある。

ある日のおやつの時間、ヨーグルト味のタブレットを何気なく息子にあげた。

そのタブレットをじっと見て、「これ、こないだたべたねえ」と言う息子。

「え?そうだっけ?」と不思議がる私に対し、頑なに「たべたよお!」と言い張る。

息子が必死に伝えようとしている姿を見ながら一生懸命考えていたら、あ、思い出した思い出した。


あれはもう2週間近く前のこと、主人が朝からある場所に出かけていて、その用事が昼頃に落ち着くから出先で合流しようということになった。

私と息子はお昼前に家を出、主人が待つ駅に向かう電車に揺られた。ところがそそっかしい私は乗る電車を間違えてしまい、分岐先の違うほうの駅に降りてしまった。

電車を乗り換えまた戻らなくてはならないことを息子に説明すると少しぐずりはじめたので、駅の売店に立ち寄って息子が食べたがったお菓子を買った。

それがそのヨーグルト味のタブレットだったのだ。

私と息子はそれを手に、正しい行き先に向かう電車に乗り直した。

もう冬が近づいており、車窓から見える木々は赤や黄色に染まっていたが、その日は太陽のぬくもりが肌に優しい小春日和だった。

陽だまりがあたためてくれたシートにふたりで腰掛けて、「あったかいね」などとおしゃべりしながら電車が目的地に着くまでタブレットを食べたり、麦茶を飲んだりしてのんびりと移動時間を楽しんだ。

…息子がおやつの時間にふと思い出させてくれたことで、これだけの光景が私の脳内に鮮やかに蘇り、思わず涙ぐんでしまった。



3歳までの記憶は、子どもは忘れてしまうと聞く。事実、私自身も、自分が3歳になるまでのことなんて全く覚えていない。

それでも、息子の記憶力の良さに驚いた私は、ふと手渡したお菓子に結びついたこの何気ない日常の情景を、息子にはずっとずっと忘れないでほしいと願ってしまった。


いつかは必ず、思い出になってしまう。


そう思うと切ないが、自分が親になってから思い返すと、幼少期に育まれた両親への強い信頼感と安心感が人としての礎となっているのは間違いない。

だから、たとえあらゆることが思い出になってしまおうとも、私は息子にたくさんの愛を与える。

3歳をすぎても、私たちに、お父さん、お母さんと幸せそうに呼びかけてくれる息子。その笑顔が、それまで一緒に過ごしてきた記憶によって創られた、成長しても消えることのない軌跡だと信じているから。


愛してるよ、大好きだよ。

いっぱい思い出を作ろうね。


これからもまだまだお母さんのことたくさん驚かせてね!


ライター:まりさん


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※ この記事は2024年11月28日に再公開された記事です。

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連載「第二回 記事投稿コンテスト 『驚いたこと』」 #21
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