これを書いている6月下旬現在、我が家の衣替えはまだ終わっていない。
今年は5月から全国的に真夏日があったから、「夏服を出す」のはすでに終えている。
夏服を出すのはたのしい。
おもたい冬服から、さらりと軽い夏服へ変わるのは気分がいい。
長い冬を脱ぎ捨てるような心地がする。
問題は「冬服をしまう」。これだ。
我が家には子どもが3人いるので、衣替えの事情が少し込み入っている。
①長女の服を末っ子にあげるものと、捨てる(またはリサイクルする)ものに選別する。
②息子の服をいとこ(姉の子)にあげるもの……以下同じ。
③末っ子の服をいとこ(妹の子)にあげるものと……以下同じ。
そして、それらをしまったり、梱包したり、袋に入れたり、ああしてこうして……やることはたくさんあるのだ。
そもそも、夏服を用意した時点でタスクをやまほど乗り越えてきたのに(足りないものを買ったり、去年の服を洗ったり)、その先が長すぎる。
夏服を出したらいったん気が抜けるのが人間の性だ。
だってこれでとうぶん子どもたちは快適な服を着て暮らすことができる。
そう思った瞬間から冬服への思いがプツンと切れてしまう。
うずたかい冬服の山とそれらをさばく長い道のりを思ったらまあ、見ないふりを決めてしまう。
仕方がない。そういうものなのだ。
部屋の隅に積み上げられた冬服の山に子どもたちはなぜか登る。
そして、山を崩す。
そして、そして、「ねー!!!この服!!どうするの?!!」と言うが早いかなぜか着ている。
こら、やめなさい!脱いで!!と追いかけたところで脱ぎやしないし、汗をかきながらも今日はこれ、と決め込んですましていたりもする。
ああ、もう、なんて面倒くさいのか、と思うのだけど、なんせ日々のルーチン家事は追いかけてくる。
冬服のお山をちらと見ても、また明日頑張るね、と囁いてさて、いったい何日がたったのだろう。
早く片付けなくちゃ。ねぇ。
ここまで読んで、「この人はとんだ面倒臭がりだな」とお気づきいただけたと思うのだけど、お気づきついでにもう少しお付き合いいただきたい。
衣替えの陸続きに、忘れてはならないのが、「クリーニング」である。
これが面倒くさくて仕方がない。
家族5人分のコートやジャンパー、ウールのマフラーなどなど、それらをまとめると、とんでもない量になる。
重量もまあまあだし、かさもすごい。
これらを出しに行くのがおっくうで仕方が無いのだ。
さらにクリーニングはたいていが前払いだし、コートなんて年に何回も出すものでもない。
そう、金額の想定ができない。
ふところの具合を思うとひるむのだ。
子どものものだけならまだしも、ここに夫がどういう了見か、勝手にダウンジャケットを忍ばせたりする。
成人男性のジャケット(しかもダウンです。ダウン。)はでかいしかさばる。
そして金額が読めないと言っている私でも、ダウンジャケットのクリーニング代がなかなかだということくらい知っている。
夫にもダウンジャケットにもなんの罪もないけれど、あれだ、なんかあれだ。
つまり、イラっとする。
さて、どうにか覚悟を決めてクリーニング屋に持っていったとしよう。
ところが、家族5人分のジャンパーやコートは店頭カウンターには乗り切らない。
積み上げた山が崩れて、ああ、と慌てる隙に、受け付けのおばあちゃんがポツポツとレジを打つ。
「これはぁあ、はぁ、ベストかねぇ、はぁ、これはぁあ……」
体感ではだいたい100年くらいかかるけれど、私は気が長いので大丈夫。
なぜクリーニング屋さんのカウンターは、ああも幅が狭いのだろうか。
私がお世話になっているお店に関しては、カウンターの幅が縦も横も狭い。とても狭い。
乗り切らないし山は崩れるしお互いとても気まずいのだ。
すいません、すいません、と、私もおばあちゃんも隙あらば謝って謝って「だいじょうぶです!全然です!」と言うだけ言って、やっと終わる。
そんなことをこの10年ほど毎年やっている。
骨が折れないはずがない。
こうして衣替えについてを書いているだけでも疲れるのに、みなさんいったいどうやって衣替えを乗り越えているのだろうか。
息を止めてひと息にやっつけたりしてるのだろうか。
私に関しては、すっかり部屋の隅に積まれた冬服の山に慣れてしまって、8年くらい前からそこにあったんじゃないかな、という錯覚が芽生え始めている。
つまり衣替えが終わったことにしようとしている。
誰かやってくんないかしら、と淡い期待だけを胸にこのまま冬になるんじゃなかろうか。
そんな悠長なことを言っている場合ではないのだ。
それは重々承知している。
けれど、意を決してクリーニングを出しに行くところまで達成したとして、こんどは取りに行く決心をつけなくてならない。
その決心と向き合っているうちに、たぶん冬になっているんだろうね。
と、そんなだらしのないことを言ってるわけにもいかないから、重い腰を上げる気はあるんだけど。どうしてなかなか。
おかあさんは忙しいのだ。