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公開 2020年07月28日  

集団生活の価値ってなんだろう?こんな時代に実感してみた、園という居場所。

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幼児と自宅で蜜月を過ごすことが至上の子育て、という太古の子育て論を遥か遠くに放り投げ、私と次女は保育の門をたたいた。


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3歳児神話はたぶん嘘(私見)

私は、3歳神話というものを個人的にぜんぜん信用していない。

100歩譲って、子どもが乳児と呼ばれる月齢であるならば、働くパパママの育休期間が大体平均1年位である事を鑑みても、自宅で親と蜜月を過ごすことは無理難題ではないと思っているけれど。

問題は、2歳から3歳のその1年間。

個人差はあっても片言ながら言葉を話し理解し、それなのに自分の欲望にとことん従順で親の禁止や注意を一切聞き入れず、そして足腰が発達して外を際限なく歩き回り、その外の世界への興味と驚きで目を輝かせている幼児は。

親を疲労困憊の極地に追い込むことになる。

普段、夫と小学生の長男長女を皆それぞれ会社と学校に送り出すと、自宅に2歳の次女と2人きりになる。

そして振り回される。

例えば掃除をしていると

「ソレカチテ!」

掃除機を強奪され、ちょっとテレビを見ようと思ってリモコンを持てば

「ダメ!アタチガミル!」

チャンネル権をはく奪された上にDVDをデッキに入れろと恫喝され、そうかと思えばものの数分で

「オソトイコ!」

もう夏の気配の色濃い、平たく言うと日差しが濃くて、くどい程暑い外に自分を連れ出せと命令してくる。

この次女が私を疲弊させるのは、やりたい事がありすぎて全方向に興味深々なのに1人で出来る事がまだ全然ないからだ。

結局なにをするにも親が背後に黒子の如く張り付いて、ハイ何がしたいの、これで遊ぶの?あとは?自転車に乗るの?水たまりに入るのは勘弁してくれない?と言って1日中、召使の如く付き添う事になり結果、夕方5時ごろ動けなくなる。

それなのに、ソファで「お母さんの電池切れ」を体現しているとそこにも次女はやって来る、アトボーと言って。

やめてよしてお母さんは今閉店中よと主張しても2歳児はそんな事聞きやしない、遊び相手が欲しい、40過ぎの母のテンション低めの遊び方なんかではアタシは満足しないわよ、そう主張しておままごとの包丁を突き付けて来る。

次女、恐ろしい子。

もう駄目だ、この子には外の世界が必要だ、母から興味をそらして楽しく遊び、外の世界に接する時間を少しでもいいから作らないと早晩私が土に還ってしまう。

そう考え至る時、人は幼稚園の入り口に立つ。

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プレ保育は疲労困憊の母を救うか

幼児の保育施設は大きく分けて、保育園と幼稚園とこども園がある。

だがしかし我が家の2歳、次女には使えるカードが限られている。

今のところ使用できるのはこども園か幼稚園、そしてその就園は来年度の話。

待てません、何とかして今すぐ。と思った私に朗報です、そこはプレ保育がある。

『プレ保育』
幼稚園に入園する1年前位のお友達と、週1回程度、簡単なトイレの練習をしたり、工作をしたり、運動やお遊戯をするいわゆる「来る幼稚園生活への慣らし保育」のようなもの。

ここで幼稚園を知ってもらい、来年度、スムーズに園生活に移行してもらう為の、幼稚園側にとっては導入の為のプログラム。

でもその園側の思惑とは全く関係なく、この件での私の目的はただ一つ。

「次女が『遊べ』と言ってこの母に粘着する時間を1時間でも無くしてほしい」

件のウイルスのせいで申し込みと実施が押しに押してしまっていたけれど、先月とうとう解禁となったそれに私はイチもニも無く申し込んだ。

ウチの子にも沢山のお友達と保育のプロに触れる機会を、私に心の平安を。

そして、申し込みに行った幼稚園の事務所窓口、『プレ保育の概要』に記載されていた内容を見て私は、愕然とした。

「保育内容は、幼稚園生活に慣れてもらうための第一歩です。楽しくお遊戯や運動、工作を保護者の方と一緒に行います」

保護者の方と一緒に…?だと?

そうだったっけ?実はこのプレ保育のクラス、9年前には長男が、そして6年前には長女も受講している、みんな同じ幼稚園。

教室の隅にお母さん達が座って、子ども達だけが活動をする母子分離の練習の時間が上の子達の時にはあった筈なのだけれど、今回それが除外されていた。

そうですか、私がずっと横について一緒に踊ったり歌ったり…いつも大体テンション低めの私には育児で一番苦手な範疇なのですが致し方ない、それもこれも次女の為。

その場で参加費用を支払った。

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初めてのお友達、初めての幼稚園

後出しだけれど、この次女は生まれつき心臓に持病がある。

感染症の心配や通院や入院やそのほか諸事情が重なって、これまでほとんど同じ歳の子の集団と遊ぶ時間を持つ事が出来なかった。

それを今回突然、地域のこども支援センターでもなく、児童館でもなく、幼稚園のプレ保育の教室に放り込んだ。

なぜなら、このプレ保育の申し込みの時「こういう子なんですが…」と恐る恐る担当の先生にお伝えしたら「大丈夫ですよ!一緒に遊ぼうね!」という頼もしすぎる返答をいただいた故。

で、思えばこの幼稚園は、ちょっとアレな、具体的には保育時間にひとりで園庭に逃走し、滑り台の順番を待てず、お友達よりも事務所の前の亀と語らうタイプの長男を取りこぼす事無くクラスに受け入れて3年間、大過なく卒園させてくれた信頼と実績の幼稚園だった、昔から、多分今も。

プレ保育の初日、大勢のお友達との初めての出会いに次女が驚いたり、泣いたり、果ては9年前の兄の如く教室から逃走を図らないかと脈拍がかなり上がっていたのに、対して次女は、それはもう大喜びだった。

「お名前を呼びまーす!」
「ハーイ!」

いや、今呼ばれてないから。

「一緒に体操しましょう!」
「アーイ!」

ホントに?大丈夫か?すぐに息切れするのに?

「このかき氷に色を塗りますよぅ!」
「ホントー!?」

次女ちゃん、先生、嘘つかないから。

先生方はかつてこれまで一般の『保育』とか『幼児教育』とは全く無縁で過ごしてきた次女を、開始3分で虜にしてしまった。

そして私は、あの自由奔放で、末っ子なだけに兄と姉と、そして何より夫に溺愛されて、この上無い程甘やかされてしまい「協調性」なにそれ食えんの?位の性格に育っているのだろうと思っていた次女がこんなに集団保育というものに順応できると思っていなくて、心底驚いた。

保育のプロというものは恐ろしい。

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結局それは楽なのか。

次女は私が3人目に産んだ子どもなので、母親の私はその分年を取っている。

例えば1人目の時のような体力も無くなっているし、『子どもの為に命がけ!』みたいなひたむきさも育児から引き算されている。

その代わり、慣れと経験がそれを助けてくれる筈なのだけれど、毎日をこの次女に振り回されて過ごしていると、どうしても

「疲れた…楽を…楽をさせてくれ…」

という気持ちが育児というものの概念すべてを支配してしまう。

それで今回「このプレ保育って私を楽させてくれるかしら」という超自分勝手かつ邪念だらけの気持ちで申し込みをした。

これは若干アテが外れてしまったけれど。

で、実際現場に来て思ったのは

「幼児教育スゴイ」

という事。

それは早期教育バンザイとかそういう事ではなくて、例えば前述のかき氷の塗り絵ひとつとっても

「みんなはかき氷食べたことある?」

という問いかけから始まって

「かき氷の歌を歌ってみようね!」

振り付きで童謡を歌い、それから

「自分の好きな色をクレヨンで塗ってみよう!クレヨン取りに来れるかな?ひとりに1つずつ順番ですよぉ」

順番を守ることまで教えてくれる。

この流れは自宅で子どもと2人きりでやっていたら、ただの浮かれた人になってしまうし、次女には「え、お母さん何やってんの…?」という冷たい視線を向けられかねない。


自分の子どもが普段見せていない姿を発見することができる。

それはとても新鮮で、自宅で壁打ちみたいな1対1の育児をしていたら絶対にできない事だ。

育児なんて1人きりでするもんじゃない、これは本気で実感として。

私の母親人生11年のすべてを賭けてもいい。

子どもと一緒にエビとカニの体操を踊るのは40を過ぎた自分にはちょっとどころかかなりきついけど。

次女は今「オーチエン」に夢中。

これまでそういう機会が無かっただけで、この子は「みんなで遊ぶ」という事が性に合っているらしい。

お陰で最近はちょつとそこまで出かけるよという時も

「オーチエン?」

と私に訊ねて来ては、出先がスーパーでもごみ捨てでも洋服の上にプレ保育のクラスの黄色い『お名札』を着けてくれとせがむようになってしまった。

お陰様で、ウチに尋ねてくるひとは宅配のおじさんから生協さんまで次女が今幼稚園のプレ保育に参加している事を知っている。

そしてとにかく『楽をしたい』と思っていた私は、とりあえず次のクラスの日の体操に向けて、頑張って振りを覚えているところ。



※ この記事は2024年09月03日に再公開された記事です。

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