我が家には小学校2年生になる男女の双子がいます。
双子たちは小さい頃から「お手伝い」が大好きで、なかでも一番人気は「お料理」です。
双子たちは、よく「お手伝いしたい=料理したい=何かできることない?」とキッチンを見に来ます。
小学生になった今でこそ、気軽にあれこれ頼めるようになったのですが、双子たちが小さい頃、その言葉はありがたい反面、あまり嬉しくない言葉でした。
共働きで、ほぼ私1人が双子をみている状態の我が家。
平日、保育園から帰宅して、双子のお手伝い欲(料理したい)を満たすことは私の試練でもあったのです。
ただでさえ時間のない夕方……
2人に同時になにかをさせようと思うと、準備が必要だったり、目を離すことができなかったり、不毛なケンカにならないように2人のバランスをみたり……
と私の手間は増える一方。
だったら私1人で夕飯づくりをした方がよっぽど早い。
それが私の中の最適な答えでした。
でも、双子たちが保育園の年中さんの頃、私の価値観が変わる出来事が起こりました。
ある日、保育園から帰宅した息子がこんなことを言いました。
「今度、夜ご飯にお好み焼きを作りたい!」
どうやら、保育園の食育プログラムで、お好み焼きを作ったそうで、「みんなにお好み焼きを作ってあげたい」と言うのです。
息子の作りたい気持ちはわかる。
でも、日々の暮らしの中で、時間もないし余裕もない。
慌ただしい時間帯に3人で一緒にキッチンに立つなんて、そんなことは出来る気がしませんでした。
「今度時間があるときに作ろう」
そう言ってやり過ごしていたのですが、翌日も、また翌日も……。
あまりに何度も「お好み焼きを作りたい」と言うので、私も覚悟を決めました。
息子が保育園で作ったというレシピを聞き、材料を準備して、お好み焼きを作ってみることにしたのです。
平日の、保育園からの帰宅後に。
そして当日。
双子たちはたどたどしい手つきながら、材料をボウルに入れていきます。
卵を割るときは少し勇気を出して、強く割ってみたり
具材を混ぜるときは長い菜箸のコントロールが効かず、具材がボウルから飛び出したり……。
手も口も出したい場面はたくさんあったのですが、ぐっとこらえました。
生地がなんとか出来上がり、いよいよ焼くことに。
保育園でホットプレートを使ったというので、我が家でも同じようにしました。
果たして本当に双子たちは焼けるだろうか?
おたまでタネをひとすくいして、ゆらゆらしながらホットプレートの上に「ボトッ、ボトッ」と落としていきます。
小さな丸いお好み焼きが鉄板いっぱいに並びました。
フライ返しを差し込む距離感なんて、全く考えられていません。
このあと2人はどうやってひっくり返すつもりかな?
と心配しましたが、「ホットプレートの縁を触らないように」と声掛けをして、見守ることにしました。
お好み焼きの片面がいい具合に焼け、心配していた”ひっくり返し”のとき。
手の力が弱く、フライ返しを差し込むスペースも足りず、なかなかうまく返すことが出来ずに悪戦苦闘する双子たち。
まだ無理かな?手伝おうかな?と思いました。
でも、双子たちの表情は真剣そのもの。
その表情を見て、やはりこれは最後までやらせてみようと思いました。
そして、時間はかかったものの、お好み焼きを全てひっくり返すことに成功したのです。
効率を考えたら、私がやったほうが早いシーンもたくさんあったし、危ない場面もありました。
でも、双子たちは自分たちだけでやりきった満足感でいっぱいのようでした。
食べてみると、フワフワしていて味も美味しく、よく出来ていました。
「おいしいね」
そう言うと、息子は満面の笑みで
「でしょ!」
そしてそれ以来、「僕の得意料理はお好み焼き!」と言うようになったのです。
双子たちがその日、お好み焼き作りをやりきったことは、私の中でちょっとした衝撃でした。
正直、平日の帰宅後に、双子たちに料理のお手伝いをさせるなんて絶対に無理だと思っていました。
でも、実際にやってみたら、できたのです。
お手伝いどころか夕飯作りをやってのけたのです。
危ないから出来ない。
時間が無いから出来ない。
そう思っていましたが、実際にやってみたら、危ないポイントも気をつけて調理することができたし、時間はかかったけれど、たいして問題にならなかったのです。
それ以来、我が家では積極的にホットプレートを使うようになりました。
特に私の仕事が忙しくなると、ホットプレートをリビングに出しっぱなしにして、ライブキッチン形式で調理をしています。
双子たちのお手伝い欲を満たすこともできるので、正に一石二鳥。
小学校2年生になった今は、もうベテラン調理員のようで、すっかり戦力です。
今や我が家で定番となった、ホットプレートを囲む食卓を前にして
「あの時、覚悟を決めて任せてよかったな」
そう思っています。