ある日、幼稚園から帰る自家用車の中で、息子が尋ねる。
「ねぇ、サンタってさ、本当はいないよね?」
えっ!
母、震える……!
だって今、まだ7月ですけど。
セミの話でもしましょうよ。
そのツッコミを飲み込んで、とりあえず返事をしなくては。
「おー。なんでそう思うの?」
「だってさ、世界は広いじゃん。
去年住んでた所と、今住んでる所は飛行機で超離れてるじゃん。
サンタが一日でプレゼント子どもたちに配れるわけないもん」
おー!理論派。
って、感心している場合じゃなかった。
何か返さないと……!
「あー。サンタ一人じゃ配るの、確かにムリそうだよね」
「そうだよ、絶対ムリだよ」
「でもさ、サンタが一人じゃないとしたら?」
「え!?どういうこと?」
「二人、三人……いや、もっといるのかもね!」
―演じ切りました。
そんなわけで、取るに足らない些細な事から、熟考が必要な、ちょっと待って検索させて!的なことまで。
私も人の親となった以上、聞かれたことには出来るだけ迅速に答えるようにしている。
さらに言うと、ビシッと答えられる親こそカッコイイんじゃない、と思っていたのだが。

ちょ、ドッジボールの「パンドラの箱」開けないで…!息子が名探偵でアセる
78,520 View子どもと生活していると、質問されることが日常茶飯事だ。
なんなら、茶を飲むより、飯を喰らうより、多めに質問される。
疑問じょうずな息子

ドッジボールと息子の葛藤
6歳となった息子のクラスではドッジボールをよくやっています、と幼稚園からのお便りで教えてもらった。
そこで、息子に「どう?ドッジボールは?」と聞くと、「楽しいよ~〇〇くんのボールが超早い!」と、興奮気味だ。
ちなみにうちの息子は運動が得意ではなく、公園に行けば大型遊具をよそに土いじりをするタイプ。
5歳になった時、3歳から乗れるジェットコースターに「絶対楽しいって!」と乗せたら大泣きし、「一生乗らない」と言った、そういうタイプの男子。
そんな息子が「今日はそりゃあ!って投げて、〇〇くんにぶつけた~」というので、予想外の活躍に「おー!すごいじゃん!」と、大袈裟に褒めた私。
まんざらでもない様子の息子だったが、彼は突如として神妙な顔をし、私に尋ねた。
「でもさ、人に向かってボールとか投げちゃいけないのに、ドッジボールの時は急に人にボールぶつけていいのは、なんで?」
……!
それ、人生で1回も考えたことないです、私。
どうやって返事をしたらいいのだろう。
全然ビシッと答えられない。
「まあそれは、スポーツだからOKなんだよ!それ以外の時はダメだよね」と言ってしまえばそれまでなんだけれど。
気を取り直して、「確かにね~。どうしてそう思った~?」と聞いてみた。
息子の話を紐解くと、その思考回路は実にシンプルで納得のいくものだった。
人に向かってボールを投げることは注意の対象であった行為のはずなのに、「さあドッジボールだ!」の一言がついただけで、人にボールをぶつけた人が輝くヒーローになる!ってなんで?ということだ。
どうやら息子が投げたボールを受けた友達の、「痛っ」を聞いて、感じるものがあったらしい。

正しさより大切な「答え」
3~4歳頃にある「なぜなぜ期」時代、矢継ぎ早に繰り出される質問に辟易していた私の心が、フッと軽くなった言葉があった。
「とにかく会話のやりとりを楽しみましょう。
正しい答えは、時に、必要ではありません。」
これはなぜなぜ期のあの頃だけでなく、子育てにおいて脈々と受け継ぐべき言葉だったのだな、と気付いた。
息子は言う。
「ボールぶつけた時、イェーイ!って思ったけど、○○君かわいそ、って思った」
「そうかあ。なんかボールぶつけるのやだな、って思ったら、ドッジボールの時、息子は『ボール避けのプロ』になるのはどう?
最後まで内野に残ってるのもなんかカッコ良いよね」
「うん。それいいね!」
「ボール避けの天才と呼ばれる日が来るかもよ」(※息子は“天才“というワードが大好き)
「それはないでしょ〜!」
正直、息子の質問には真っ当な答えを出せなかったのだけれど、息子は会話を通して、自身のモヤモヤも上手く外に出すことが出来たようだった。
確かに大人でも得も言われぬモヤモヤを、相手に聞いてもらうために言語化すると、その作業中に「あ、自分はここが嫌だったんだな」とか「相手にこうして欲しかったんだな」と気付くことがある。
そこで「そうだね」とか、「わかるよ」と穏やかな相槌を打ってくれる相手には、自然と心が開いてゆくのがわかる。
まずは親として、子どもの良き話し相手になりたいものだなあ、としみじみ思った。
同時にいつまで話してくれるのやら、とまだ見ぬ思春期にも思いを寄せる。
そういえば息子は私の子ども時代エピソードを聞くのが好きだな、と思い立ち、付け加えた。
「そういえば、お母さんもドッジボールあんまり好きじゃなかったかも。
10歳くらいになると使うボールが硬くなってさ、当たると痛いし、あと単純に冬になると体育館が超寒くてさ……」
「……」
「って、息子よ、聞いてる?」
「いや。クリスマスプレゼント、何にしようかと考えてた」
いや、そこは聞いておくれよ!
それとまだ7月だってば!!


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