我が家には小学校2年生の男女の双子がいます。
2週間ほどの冬休みを終え、いよいよ明日から小学校が始まる、という日の深夜
翌日の学校の準備を終え、双子たちがすっかり寝静まったはずの寝室から、何やら音が聞こえてきたのです。
様子をうかがっていると、どうも娘が泣いているようでした。
息子とけんかでもしたのかとのぞいてみると、そこにはすっかり眠っている息子の姿があり、その隣で泣いている娘……
一体何事?
話を聞いてみると、娘は
「心配なことがあって眠れない」
と言い出したのです。
こんな時間に心配事とは。
寝室から呼び出して、話を聞いてみると「九九カードが無い」と言いました。
時計を見ると、もうすぐ日をまたごうかという時間。
「なんでこんな時間になってそんなことを言ってるの?」
そう言いたい気持ちをぐっとこらえました。
もしかしたら、娘にもなにか理由があったのかもしれない。
「九九カードがない」だけでは要領を得ないので、もう少し詳しく話を聞くことにしました。
すると、冬休み前、連絡帳に新学期の持ち物としてメモした“九九がんばりカード”が見当たらないのだと言いました。
九九がんばりカード……。
そういえば、この冬休み中に息子のランドセルの中身を確認したとき、息子が
「九九がんばりカードは、12月分はもういらない」
と話したので処分したことを思い出しました。
まさか、私が間違えて娘の分も処分してしまったのかも!?
焦って探してみましたが、処分した形跡は無く……。
果たしてどこにいってしまったのか。
よく聞いてみると、娘は数日前から九九がんばりカードがないことを気にして、探していたらしいのです。
でも見当たらず、ついに明日学校が始まってしまう、と不安で眠れなくなってしまったのでした。
とりあえず、ランドセルや学校から持ち帰ったお道具箱をひっくり返してみたり、机の周りを探してみたり、と深夜の大捜索が始まりました。
それでも、九九がんばりカードは見当たりませんでした。
どこにいったのかね〜。
娘は繊細な部分があり、私からすると、そんなこと気にしなくて大丈夫じゃない?と思うようなことでも、心配をするところがあります。
「たとえ見つからなくても、明日学校に行って、先生になくしてしまったと伝えれば大丈夫だと思うよ」
そう伝えても、うなずきはするものの、不安そうな表情をしていました。
そしてこんな事を言ったのです。
「でも、なくしたのは自分だけかもしれない。もうすぐ3年生になるのに……」
プリントを無くしてしまったかもという不安な気持ちだけでなく
「もうすぐ進級するからしっかりしないといけない」
そんな気持ちが芽生えているのだな〜と、日々成長する娘の心の中を垣間見た瞬間でした。
そういえば……。
冬休み前に持って帰ってきた学年だよりに、新学期の持ち物のことが書いてあった気がする。
そう思い出した私は、双子たちが持ち帰ったプリントの中から、学年だよりを探しました。
そこには、宿題「九九がんばりカード(12月分)」の文字が。
え?宿題は12月分?
そして、この書き振りからして、1月分はまだ配布されていないのでは?
すると娘は、突然安堵した表情に変わっていました。
「12月分のカードは、学校の大掃除の時間にみんなで処分したから、持っていなくて大丈夫だった!」
と言うのです。
「えええ?ここに宿題って書いてあるけど良いの?」と聞くと、「先生と一緒にみんなで処分したから大丈夫!」とのことでした。
なるほど。
12月分はそもそも学校で処分済み、1月分はまだ配布されていない。
九九がんばりカードは、娘が持っていなくて当然だったのです。
気になっていた九九がんばりカードを無くしたわけではなかったと分かり、心底安心した娘は私に向かって
「ママ、一緒に探してくれて本当にありがとう。ずっと不安だったんだけど、無くて良いってわかったから安心した。これでやっと寝れる!本当にありがとう。」
そう言って、軽やかに寝室に戻っていったのでした。
そんな娘の姿を見送りながら
あれ、でも息子のカードは確かに私が処分しちゃったんだよな、大丈夫かな……
そんな気持ちがよぎり、明日朝起きたら一応、息子にその話をしておこうと思ったのでした。
娘が寝室に戻った後、私はなんだか呆気にとられつつ
普段から娘はしっかりもので、学校の準備も自分でするし、気づけば宿題も終わっていて、私から何も言う必要がないぐらいなのですが
そんな娘だからこそ、「しっかりしなければいけない」というプレッシャーがあったのかもしれないと思いました。
翌日、学校から帰宅するなり娘は、元気よく
「“九九がんばりカード”無くしたと思ったの私だけじゃなかった!他のお友達も無くしたと思って心配だったんだって。先生も、分かりにくかったよねって謝ってたよ。でも、ママは一緒に探してくれたよね。昨日の夜、一緒に探してくれて本当にありがとね」
そうお礼を言われたのでした。
最初に娘が泣いて起きてきたとき、「なんでもっと早く言わないの」という言葉をぐっとこらえてよかったと思いました。
そしてもう1つ気になっていた息子のカードの件……
大捜索した翌日の朝、息子本人に伝えたのですが
「ふーん。でもいらないと思うから大丈夫」
と娘とは違い、大して気になってない様子。
少し拍子抜けしたのですが、そんな2人の様子もまた、我が家の双子らしいなと思った出来事でした。