我が家には8歳になる男女の双子がいます。
先日、息子の8本目の歯が抜ました。
あまりにあっという間に抜けた8本目の歯でしたが、初めての1本が抜けるまでは大騒ぎでした。
思い返すと、双子たちの乳歯が抜け始めたのは、少し遅めで小学校1年生になってから。
保育園では、早い子は年中さんの終わり頃から歯が抜ける子が現れ、クラスの子どもたちにとって「歯が抜ける」というのは、一種のステータスのようになっていました。
お友達の歯が抜ると、その日の帰り道は「◯◯ちゃん、今日歯が抜けたんだよ!」と延々とおしゃべりするぐらいの大事件。
そして、だんだんとクラスの中で歯が抜けた子が増えてくると
「自分はいつ抜けるんだろう…?」
というのが双子たちのもっぱらの関心事になっていきました。
「いつか抜けるよ」
「もうそろそろ抜けるよ」
そんな話をしていましたが、双子たちの歯が抜けそうな気配は一向に訪れず
「まだかまだか?もしかしたら自分の歯も揺れているのでは?」
と、双子たちは気がつくと鏡を見ては、歯がグラグラしていないかの確認をしていました。
しかし結局、歯が抜けるチャンスが訪れることなく、双子たちは卒園の日を迎えたのでした。
その後小学校に入学し、その年の夏休み目前のこと。
娘の歯がグラグラしはじめたのです。
ついに来たこのとき!
小さい頃から、娘の方がなんでも先に起こることが多かった我が家の双子たち。
今回も先を越された息子は、羨望の眼差しで娘を見ていました。
しかし、いざグラグラしだすと、思うように簡単には抜けない小さい歯。
あんなに歯が抜けることを楽しみにしていた双子たちでしたが、娘は毎日不安そうに鏡を見つめ、その様子を隣からのぞき込む息子がいました。
歯がグラグラしているのになかなか抜けず、どうして良いか分からない……というあの感覚。
私も幼い頃、鏡をのぞいて歯を揺らしながら、不安で泣いていたことを思い出しました。
当時、私の母は「糸をくくりつけて引っ張ったら?」なんて軽い言葉で、恐ろしい提案をしてきたので、私はさらに泣いたことを覚えています。
今になってみると、長いこと鏡の前で泣いている娘を見て
「泣いていないで、ピッと引っ張ってしまえばすぐに抜けるのに……」
そう思う気持ちもわかる気がします。
でも、当時の私は恐怖が勝り、自分で抜く勇気がありませんでした。
そして大人になった今でも、子どもたちのグラグラしている歯を見るはやっぱり怖くて、娘に対して「自分で抜いたら?」なんて言えませんでした。
その後、数日間歯がグラグラし続け不安の中にいた娘でしたが、ある日食事中にあっさりと抜け、初めて抜けた自分の歯を見て
「ちっぽけでかわいい」
と言うので笑ってしまいました。
娘の歯が初めて抜け、永久歯が生えてくる前、歯がないその姿はなんとも愛らしく見えました。
かたや、息子はというと……
未だグラつかない自分の歯を見つめながら
「僕の歯はいつ抜けるんだろう……?」
と相変わらず、その日が来るのを楽しみにしている様子でした。
そんな息子にも1年生の夏を過ぎた頃、急に歯が抜けるピークがやってきました。
人生で初めての1本がグラグラし始めると、息子はよほど嬉しかったのか、毎日のように抜けそうで抜けないその歯を私に見せては、ニヤニヤしていました。
そこには、幼い頃の私や、つい先日歯が抜けた娘と違い、不安そうな素振りは全くなく、親子や姉弟でもこんなにも違うのかと関心しました。
そして初めての1本が抜けると、ようやく抜けた歯を、それは嬉しそうに見つめていました。
双子たちの歯は次々と生え変わり、1年生から2年生の間で、それぞれ合計8本の歯が抜けました。
そんな中、つい先日息子の8本目の歯が抜けたときのこと。
もはや歯が抜けることにかけてはプロのようになっており、「この歯、今日抜けそう」と得意げにグラつかせていたと思ったら、数分後には、あっさりと抜いていました。
そして、息子はその歯を掲げて「8本目〜!」と得意げになっていたのでした。
その話を遠方に住む、私の母に伝えたところ
「ちょうど昨日、従兄弟(小学校5年生)も歯が抜けていたよ」
そんな話が返ってきたのです。
それを聞いた双子たちは
「え!?5年生になっても、歯ってまだ抜けるの?抜ける歯あるの?」
と声を揃え、一瞬固まった表情をしていました。
私にとっては、乳歯が全部生え変わるのは当たり前のことと思っていたので、そんな説明すらしていなかったのですが
双子たちは、歯が抜けるのは前歯8本で完了するものと思っていたようなのです。
「えぇーーーー!これからもまだ抜けるの!」
と、驚きというよりもむしろショック……といった様子の双子たち。
さっきまで
「それ何本目(の抜けた歯)?」
「8本目」
「やった!一緒だね」
と喜び合っていたのはそういうことだったのか……
まだ先は長いと知った落胆の表情が面白くて、これからも歯が生え変わっていく2人の様子を見守っていこうと思いました。