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公開 2023年03月22日  

「靴下は乾燥機NG」夫のこだわりは、時に妻の常識を超えてくる

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ドラム式乾燥機ってとっても便利だと思うんですよ。


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夫はおしゃれだ。

子どもと出かけるときだって妥協せずややこしい紐の靴を履いたりするし、冬にはベストだジャケットだとやたら重ね着をする。

すぽんと履ける靴しか履かず、がばっと被れる服しか着ない私とは正反対だ。


アパレルショップで働いていたこともあるので、服の畳み方もすごくきれいだ。

ただ、当時の名残で立ったままでしか畳むことができないので彼はいつも店頭に立っているスタッフのような雰囲気で洗濯物を畳んでいる。

そして当時の癖なのか畳んでいるとき、いつも周囲を見渡している。


ほとんど衣服のオタクだから、繊維の知識も豊富だ。

品質タグを見ればどのように洗濯してどのように干すのかもよく知っている。

ただ、「ちょっと教えてほしい」と迂闊に訊ねれば、繊維の織り方にまで話が及ぶので注意が必要でもある。


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もともと、我が家の家事分担は私10、夫0という塩梅だったのだけど、ここ数年は私も忙しくしており、夫が随分とシェアしてくれるようになっている。

彼の得意分野はもちろん洗濯。

衣類に関することは腰が軽いらしい。

それではと、ゆるゆる委託するようになって1年ほど。

最近気が付いたことがある。


干すべき洗濯ものがやけに多い。

以前からこんなに多かっただろうか。

小さな物干しだけど、かつてはもっとゆとりがあったはずだ。

ハンガーに吊るされている洗濯物が窮屈そうにひしめき合っている。

いつだったか、友人が我が家をふらりと訪問した時のこと。

その日は私が洗濯物を干していた。

夫がやる日もあれば私がやる日もある。


「ちょっと洗濯物干すから待ってて!」と言い置いて、せかせかと洗濯物を干していた。

友人は「いいよいいよ」と隣で微笑んでいたんだけれど、やれやれと終わった私に「洗濯物多くない?」と言った。

「ほんと、洗濯物多くて嫌になるよね」

「いや、ウチこんなに多くないわ」

彼女の家にも我が家と同じ年齢の子どもが3人いる。

「乾燥機あるのに使わへんの?」

「使ってるけど、ほら皴になったら困る服とか、乾燥機に向かない服とかもあるし」

そう言いながら洗濯物を一瞥すると、ややこれは…と驚いた。

機械的にせこせこと洗濯物をハンガーにかけては干していて気が付かなかったけれど、きちんと頭を働かせて見てみれば、夫の衣類がとても多い。

我が家は洗濯カゴをふたつ用意していて、赤いカゴに摩擦に弱い服や、皴になりやすい服を入れる。

白いカゴには乾燥機にかけても問題ない衣類を入れる。

タオルや靴下、肌着やパジャマ、その他がそれ。

今しがた吊るしたばかりの洗濯物の中には、夫の肌着、夫の部屋着トップス、夫の部屋着ズボン、夫の靴下、そして夫の日中の衣類一式が入っている。

確かに我が家は洗濯物が多いし、その日は子どもたちの洗濯物もよく見れば多い日だった。

だけど、気づいてしまったら気になることこの上ない。

「夫の洗濯物はなぜ、白いカゴに入れられないのか」


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しばらくはそういうものとして大人しく、彼の選別のままに洗って干していた。

なんせ洗濯は彼がやることも多いのだし、頻度を按分している以上、なんとなく言いにくい。

それに、繊維云々に関しては彼のほうがよく分かっているのだし、なにか事情があるのだろう、と思うことにした。

私にも意外といたいけなところがあるのだ。


とは言ってもあれ以来、洗濯物を干しながら、

「これは……乾燥できないのか」
「これも……乾燥機に入れられない……?のか」
「え?これも……」

と気になってしまう。

お出かけ用の靴下と仕事用の靴下、を彼は履き分けていて、そのどちらも乾燥機には入れられない衣類らしい。



頑丈そうなスポーツウェアを部屋着のひとつにしているけれど、それもダメ。

これは確か登山にも向いている衣類だとうんちくを垂れていたのではなかったか。

過酷な登山に耐えられるなら乾燥機くらい……、と思うがしかしあまり安いものではないし、ダメなものはダメなんだろう。


某ファストファッションブランドのインナー。

さて、なぜこれはダメなんだ。

私も似たようなのを持っているけれど、迷わず白いカゴに入れている。

なぜダメなのだろう。

毛玉ができやすくなるとかそういう事情だろうか。

そんな風に干しながらつい考えてしまうのだ。


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疑問は尽きないけれど衣類を愛する彼が、彼の判断で選別して白いカゴに入れているわけだから、あまりやかましく言うまい、彼なりの愛着がそうさせているに違いない。

と、思っていたが、ある日私は目撃してしまう。

あの日、鮮やかなブルーのトップスがハンガーに吊るされて干されていた。

胸元には某市町村の名前と「第27回 新春マラソン」の文字。

山を駆け抜ける鹿のイラストが隣にプリントされていた。

念のため言うが、夫はそのマラソン大会に出ていない。

出たのは私の親戚の気のいいおじさんで、10年ほど前おじさんの自宅を訪問した時に、酔ったおじさんが帰りになぜか持たせてくれたのだ。

彼はそれを部屋着として愛用しており、秋から冬の終わりまではその長袖Tシャツをヘビーユーズしている。


夫がそのおじさんのことがすごく好きだとも思っていない。

多分夫は、おじさんの名前すら知らない。

なのにだ。

なのに、どうして、この服は乾燥機に入れられないというのか。

夫の洗濯物で乾燥機に入れられているものが私の観測範囲内ではもはや、パンツしかなかった。

ドラム式乾燥機の意味とは。


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別に、洗うのは洗濯機がやってくれるし、畳んで仕舞うのはハンガーで干そうが乾燥機にかけようが同じだし、要は干すときだけの問題だからそう目くじらを立てることもないのだ。

だけど、夜な夜な夫が洗濯機を回しておきながらうっかり寝てしまった日や、小忙しい日に洗濯物を干すことになったときに、「あいつめ」と心の中で舌打ちをしながら干している。

因みに、パンツ以外のすべての衣類が赤いカゴに入れられている件について夫に尋ねたけれど、彼なりの重大な理由があるものはごく一部であり、中には「気分」というものもあって、あの新春マラソンの青い化繊のティシャツに関しては本人すら「なんでだろう」と首をかしげていた。

こちらこそなんでだろう。

とりあえず、新春マラソンに関しては乾燥機でいいんじゃない?と伝えたけれど、やはり今日もハンガーに吊るされている。

実はお洒落な彼のお気に入りなのかもしれない。


※ この記事は2024年11月19日に再公開された記事です。

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