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公開 2023年11月22日  

「サンタ組合っていうのがあって…」サンタの正体に迫る小1に、母は厳かに語り出す

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組合の設定は真似してもらって全然大丈夫です。


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サンタクロースはいつまでいるんだろう。

私の場合はある冬、突然に母から「もういいやろ?」と言われて突然終わりを迎えた。

小学校高学年くらいだったと思う。とくにがっかりもしなかったし、悲しいとも思わなかった。

「うん、いいよ」と言ってあっさりネタは明かされた。



真ん中の長男が「サンタってママとパパなの?」と言い出したのは小学校へあがってしばらくしたころだった。

クラスのお友達が「サンタって、ママやで」と言ったらしい。いつか来ると分かっていたその日を迎えて、私は動揺した。

ちょっと想定より早すぎる。

まだ7歳じゃないか。


心の中だけで派手に動揺して、頭を高速で回転させた。

子どもの頃から言い訳ばかりしてきた私は、いざというときにほんとうによく頭が働く。


今、言う?そうだよ、実はママだよ!って言う??でも末っ子次女はまだ年中さんだし???まだ夢を見ていていい気がするし???ていうか、メルヘン脳の長女はまだまだ全然コビトだって信じているし、将来はコビト研究科になるって学校でも発表しているし???長男にだけ大発表してしまう???いや、ぜったいにみんなに言うじゃん。だめじゃん。ていうか、なんでだめなんだろう。サンタがほんとうにいるって信じるってあれはいったいなんのためなんだろう。目的はなに。見えないなにかを信じる心で脳のなにかしらの重要な部分が育まれてるとかそういう話なんだろうか。でもそんなのこの情報過多の時代にどこでも聞いたことがないよ。

このようなことを2秒くらいで考えた結果、「脳のことはちょっといろいろ難しすぎるし、いったん保留にしたいから、とりあえずサンタはいる方向で逃げ切ろう」と決めた。


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「サンタさん?いるいる。いるに決まってるじゃん」

「でも、たいちゃんがいないって言ってたよ。たいちゃんがお兄ちゃんから聞いたんだって」

たいちゃんとの関係が悪くなっても困るので、たいちゃんを嘘つきにはできない。たいちゃんの発言を否定して、たいちゃんご兄弟で喧嘩をすることになるのも非常によくない。

こういうときは、あれ、「よそはよそ、うちはうち」。

「あ、たいちゃんちはお家の人がサンタをやってくれているんだねー。そういう家もあるんだよ」

「え、そうなの」

「そうそう」

「じゃあうちは?」

「うちはサンタが来てる」

「なんで?」

なんで……なんで。

なんで。

決して動揺してはいけない。


もったいぶるふりをして時間を稼いで考えた。

「まあ、しょうがない、言っちゃおうかな。うちは、組合にお金払ってるから」

「くみあい……??なにそれ」

「サンタ組合っていうのがあって、サンタさんにプレゼントを届けてほしいお家は年に1回サンタ組合にお金を払ってお願いしてるんだよ。

そうするとサンタさんがクリスマスにプレゼントを届けてくれるの。

別に組合にお願いしなくても、お家の人が自分たちで用意することもあるよ。

世界中にたくさんの子どもたちがいるからサンタさんたちも全員にプレゼントを配るのって無理じゃん?

だから組合にお願いしないで自分たちでプレゼントを用意してるお家もあるってわけ」

「くみあい……。でも、じゃあなんで高いプレゼントをもらえる子と、そうじゃない子がいるの?変じゃん」

小賢しいやつめ。

「それは、組合に払う金額のちがいだね。組合に払う金額は選べるから」

「そっか……じゃあさ、」

小僧、まだあるのか。

「前に、レン君の家でクリスマスパーティーしたときにいたサンタは?あのサンタはどうして?なんなの?それにうちに来るサンタは誰にも見られないように帰るのに、レン君の家のサンタはどうしてみんなに見られてもいいの?」

新しい角度で切り込んできた。

幼稚園の頃にお邪魔したレン君宅のクリスマスパーティーでは、すっかり子育てを終えたレン君の伯父さんが甥っ子可愛さにサンタに扮してみんなにプレゼントを持ってきてくれたのだ。

とてもいい思い出。

だけど、今それを持ち出さないでほしい。

彼は私に似て大変頭の回転が速い。

考えろ!負けるな!わたし!

「あ!あのサンタさんね!あれは、外交用サンタ。

サンタの組合には外交用サンタもいて、その分のお金を払っていればパーティーやイベントにも来てもらえるんだよ。

レン君のお父さんはお店をやってるから外交用サンタの分の組合費も払ってるんじゃないかな。

パーティー楽しかったよね~!」

いい芝居ができた。

完璧だ。

自然なせりふ回しと堂々とした振る舞い。

疑うものなどないだろう。

「そっか、そうなんだ」

長男は腑に落ちないような顔をしながら、でもこれ以上返す言葉もないようでなんとなく納得したような雰囲気で話は終わった。


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以来、我が家では、サンタは組合に所属していて、各家庭が希望に応じた金額を組合に支払っていることになっている。

夢みがちな長女と次女は茫洋としたサンタビジョンを抱きしめて、微笑んでいられるのに対し、長男はロジカルに物事を考えるので、裏表くまなく情報を組み立てないと信じてくれない。

嘘に嘘を塗り重ねたような後ろめたさはあるものの、これでよかったんだ、と自分を肯定した。


先日も夕飯後に「サンタはママじゃないんだよね」と尋ねにきて、「そうだよ。サンタさんがちゃんと来てるよ」と返事をした。

返事をしたそばから、「しかし、果たしてこれはいつまで続ければいいんだろう」ともやはり思う。

対象年齢15歳くらいガチガチに組合の設定を作りこんだ以上、種を明かすタイミングがますます分からなくなった。

彼らは催事場なんかにいるサンタを「あれは、外交サンタか」と思っているかもしれない。

子育てをする人たちはなぜ、みんなサンタクロース像を用意してしまうんだろうなあ、と思いながらきっと今年も私は夜中にプレゼントを置く。


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