実家に帰省中のある日、所用で出かけるのに、最寄りバス停でバスを待っていました。私の実家はかなり田舎なので、バスの本数もそんなにありません。乗り遅れると大変なので、かなり早めにバス停へ行きました。
バスを待っていると、私のあとから一人の青年がやってきました。うーん、見覚えがあるような。
「あっ!!!しょうたくん(仮名)だ!」
しょうたくんは、中学校の部活の先輩の弟。私より二つか三つ、年下だったと思います。いつも笑顔のかわいかった、しょうたくん。先輩は「うちの弟、障害があるんだ。」と話してくれたことがありました。
先輩の家は、同じ団地内だったのですが、私が5年生の時に引っ越してこられたからか、学校で弟さんを見た記憶は、あまり残っていません。(私の通っていた小学校は、とっても小さかったので、全校生徒の顔と名前は、だいたいわかるのですが)
もしかしたら、地域の学校ではなく、隣町の特殊学級(今で言う特別支援学級)に通われていたのかもしれません。でも、地域ではよく見かけていたので、顔は知っていました。あまり会話した記憶はないのだけれど、いつ会っても、しょうたくんはニコニコの笑顔だったような気がします。
その、ステキな笑顔はそのままに、私よりずっと小さかったしょうたくんは、私が見上げるほどになっていました。(私、けっこう背が高いんですけど)
独り言や奇声を発する人は、怖い人?ある自閉症の青年と再会して感じたこと
15,966 View我が家の4歳になる長男は、自閉症スペクトラムです。長男を育ててきた中で、今までに自分の考え方を大きく変えるようなできごとがたくさんありました。今日は、その中のひとつのエピソードをご紹介します。今年の夏、実家に帰省した時の出来事です。
バス待ち中に思いがけず訪れた再会。
聞こえてきた、アナウンス。「ご乗車の方はお急ぎください♪」
私の少し前方に立ち、バスを待つしょうたくん。少しすると、「〇〇行き~。〇〇行き~。〇〇バスが発車します。ご乗車の方は…」というつぶやきが、しきりに聞こえてきました。
「そうかぁ。しょうたくんは、自閉があったのか。」
みなさんは、自閉症という障害名を聞いたことはありますか。私は、自閉症という言葉を聞いたことはあったのですが、自分の息子が自閉症と診断されてから、初めて知ったことがたくさんあります。
自閉症の方は、電車やバスのアナウンスが好きな方が多いというのも、そのひとつ。ひとりごとのように、繰り返しつぶやく方もおられます。
「しょうたくん、ハル(うちの長男)と同じだね。ハルも、バスや電車のアナウンス、大好きなんだよ。」って、しょうたくんに、心の中で話しかけました。
恐怖を感じていた、自閉症を知らなかった頃の私。
みなさんは、何かひとりごとを繰り返しつぶやいている人がいたら、どう思いますか?
私は以前なら、独り言や、奇声を発している人を見ると、何とも言えない恐怖心が湧いてきて、なるべくその方に近づかないようにしていました。「何をされるかわからない」そんな風に思っていたんですね。
でも、しょうたくんのつぶやきを聞いた時の私は、「バスのアナウンスがすきなんだなぁ。楽しそうに言ってるなぁ。」と思いました。そして、なんだか親しみすら感じました。
そして、「怖い」と思うのは、知らないからなんだな。なんだか分からないことに、きっと人は恐怖を感じるんだなと思ったのです。
思い出された、公園での出来事。
そして、少し前に家族で広い公園へ遊びに行った時のことを思い出しました。
その時、障害者施設の方が10人ほど、ピクニックに来られていて、その中のお一人が、とても大きな声を出して、私たちの方に向かって、走って来られたのです。
少し前の自分だったら、恐怖を感じ、逃げ出していたかもしれません。でも、その時私は、「ああ、この方はきっととても楽しんでおられるんだな。」と思いました。本当に、全身から楽しい気持ちが伝わってくるような走り方で。生き生きとした表情、とてもうれしそうなご様子だったんです。
その方が私たちの脇を通り過ぎて行く様子を見て、「恐怖」どころか、なんだかこちらまで、うれしくなるような気持ちになったのでした。
しょうたくんの、背中に思う。
そんなことをぼんやりと思い出しながら、私の乗るのとは別の行き先のバスに乗り込む、しょうたくんの背中を見送りました。
しょうたくん、一人でバスに乗って、でかけるんだな。息子もそんな風になれるかな?と、しょうたくんの変わらぬ笑顔と、堂々と一人で行動されている姿に、元気をもらったのでした。
みなさんの身近にいる、ちょっと変わった子だな、なんていうお子さんも、その行動には、その子なりの真実があって、決して恐れたり、遠ざけたりする必要はないんじゃないかな、と思うんです。
その子への理解が深まれば、恐怖や不安が親しみに変わる。そんなこともあるんじゃないかなと思います。
分からないから、異質だから排除するということよりも、自分が知らなかった、相手の真実に気づき、知ろうとすること。それぞれの存在を認め合うこと。
そっちの方が、世界はずっと面白く、輝きに満ちている気がしませんか?
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