LOVETABI代表・元あいのりRemiさんが語る「選択肢」の多い人生の作り方

大人トラベラーの情報マガジン&Web版ガイドブック「LOVETABI」の代表・編集長のRemiさんは、4歳6歳の2児のママ。そして、大学時代は、元祖恋愛リアリティ番組として一世を風靡した「あいのり」に出演。その後は財閥系商社で海外営業担当をしていたという経歴の持ち主。安定した商社の仕事を辞めて旅メディアを立ち上げた理由や、やりたいことを諦めない生き方について詳しく聞きました。

「恋愛下手」から、テレビで見ていた「あいのり」出演へ

――「あいのり」はラブワゴンで旅をしながらの恋愛をするという、今流行りの恋愛リアリティショーの先駆けのような番組でした。個性豊かな面々が出ていましたが、Remiさんの出演は、どんなきっかけだったんですか?

私は広島出身なので、高校時代にテレビで「あいのり」を見ながら「こんな旅がしたいな」と思っている側でした。中高を女子校で過ごしたため、東京の大学に出てきて初めて男女一緒の部活を経験したというくらい、恋愛とは縁遠い生活を送っていたんです。その憧れの気持ちを持ったまま大学2年生のときに、友人と勢いで「あいのり」のオーディションを受けにいったら、なんと2人とも受かったのがきっかけです。

面接のときに「あいのりでは、どこの国に行きたいですか?」と聞かれて、「モンゴルとアフリカです」と答えたんです。当時、大学で多言語を学んでいたということもあり、なかなか話すことのない言葉でコミュニケーションを取るのに興味があったので。すると、なんと次の行き先はモンゴルと決まっていたという偶然もあり、運良く合格になったんですね。

「あいのり」時代のRemiさん

――それはすごい! 出演されてみて実際恋愛はできましたか?

現場に行くといきなりマイクを着けられて目の前でカメラが回り……、一学生にとってはものすごく新鮮な体験でした! 初めて会うメンバーとも敬語禁止であだ名で呼び合うルールだったんですが、その切り替えが自分には面白かったです。「あいのり」は、今世界にはこの場にいる男女しかいないという、一種の無人島理論といいますか、本気で意見をぶつけ合えるというのがいい体験でした。

それまでも旅行は好きで、一人ではよく旅してましたが、たくさんの大人と一緒に世界を回る体験ができたのも大きかったですね。恋愛だけじゃなくて、そのときどきの世界で起きている問題に突っ込んだりという一面もある番組で、個人ではとても行けないような場所に行ったり、現地の人と交流したり、なかなかできない体験ができました。

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商社に就職したものの、やりたかったのは違うことだった

――そうした番組での海外経験を始め、大学時代の専攻でも海外文化について研究されていたことから、グローバルに活躍できる商社を就職先に選んだんですね。商社での仕事はどうでしたか?

就職した商社では、化学品グループの海外営業担当でプラスチック原料の輸出入や三国間貿易を担当しました。志望していた海外営業を担当できたことは幸運でしたが、自分は海外に行きたいから商社が向いているだろうというのは安易な考えだったことに気付かされました。ビジネスに自体には興味があったのですが、商社での仕事に次第に達成感を感じられなくなっていったんです。

その理由の1つは、リーマンショック直後の就活氷河期にも関わらず、安定した大企業に就職できた時点でいったん思いが達成されてしまったということ。もう1つの理由は、入社した翌年に東日本大震災が起こり、週末に東北へボランティアに通う生活をしていたのですが、その現場ではものすごく感謝をされて、別の達成感があったことです。ボランティアをきっかけに、仕事の指示出しではなく、現場で直接人とやりとりして感謝をされるような仕事をしたいなと思ったんです。上司に相談したところ、せっかく入社したんだからまずは3年間続けてみなさいと言われました。なので、3年半は仕事に真剣に向き合い4年目で結婚を機に退社することにしました。最終的に退職をしたのですが、この3年半はその後のキャリアにも欠かせられない貴重な経験になり、当時の上司には感謝しかありません。

「LOVETABI」取材ではいろいろな国を訪問

――そして、ご自身でサイトを立ち上げられたんですね。

退社後はトラベルライターになりたいなと思って発信していたところ、ブログを通じて観光局から声がかかり、トラベルブロガーとして活動することになりました。ちょうどインスタグラムや“インフルエンサー”という言葉が出だした頃でしたが、そうしたインフルエンサーたちのコミュニティが私の周りにすでにできていたんです。

一方で、海外の観光局とやりとりしていると、「インフルエンサーにアプローチしたいけどどうしたらいいかわからない」と相談を受けることも出てきたのですが、インフルエンサーと観光局には双方の要望にギャップもあり、どちらの要望を叶えるプラットフォームを作って、その溝を埋めればみんながハッピーになると思ったんです。退社から2年目の2015年に賛同してくれた人たちと一緒に「LOVETABI」を立ち上げました。

20代のうちは海外を飛び回ってもいたのですが、2017年に30歳で第1子を、2019 年に第2子をもうけました。子育てと旅の経験を、当初は「子連れ旅」のコンテンツとして入れていたのですが、女子旅で求められる華やかな部屋や眺望、食事といった要望と子連れでの旅で求められる実用的なニーズにはズレが出てきます。それで、2018年に新しく「LOVETABI Mama」という子連れ旅メディアも立ち上げました。クライアントとのやりとりはじめメディアの仕事にも、商社時代に学んだ営業スキルがとても役に立っています。

自分が立ち上げた仕事と商社での仕事の違いは、当事者意識の有無でしょうか。商社では営業で成果を上げれば上司に評価されるというのはあったのですが、自分の喜びには繋がらなかったんです。旅の仕事では、ホテルだったり旅先だったり、ときにはキャスティングするインフルエンサーだったり、自分がいいと思うものを人に知ってもらいたいと営業への熱の入り方がまったく違います。この当事者意識をもって仕事ができるようになったのが、メディアを立ち上げていちばん大きかったことだと思います。