介護士で15年勤務後、57歳でシニアYouTuber「きょうこばぁば」に転身した理由。

ふわりと優雅なグレーヘア。品のあるファッションとアクセサリー。さらに、指先に塗られた赤いマニキュアも目を惹きます。

カメラに向かい、慣れた様子で動画撮影を行うのは、今年で67歳になるシニアインフルエンサーのきょうこばぁばさん。旦那さんと娘さん2人、愛犬1匹の5人家族で、長女はモデルのAgathaさん、娘婿はミュージシャンで俳優のハマケンこと浜野謙太さんです。

Instagramを中心に活動を始め、2020年からユーチューバー……ならぬ、ユーチュー婆としてシニア世代に向けた簡単お手軽レシピやファッション情報などを発信中。それらが人気を集め、いまやInstagramのフォロワー数は8.7万人、YouTubeの登録者数は5万人にも登っています(2023年9月時点)。

「何事も『えいや』と挑戦すると、新しい世界が拓けるんですよ」

そう話すきょうこばぁばさんは、Instagramを通して何を伝えたいのでしょうか。加えて新しいことに軽やかな一歩を踏み出すヒントもお伺いしました。

“インフルエンサー”という言葉のない時代から、発信する楽しさを知っていた

きょうこばぁばさんがInstagramを始めたのは、57歳のとき。始めた当初は、自身の趣味の一つであるお料理の投稿をメインコンテンツにしていました。

見るだけでお腹がすきそうなお料理の数々。これらの投稿が段々と反響を呼び、投稿を続けて4〜5年後にはフォロワーが3万人を突破したそう。そのタイミングでなんと、料理サイトのプロデューサーにInstagramのDMで声をかけられ、本を出版することに。


Instagramに投稿されている料理の数々

「当時はまさか、Instagramをきっかけにして私がお料理の本を出版するなんて思いもしなくて。まだ “インフルエンサー”という言葉もない時代。自分が好きでしていた発信がこんなふうに形になることもあるんだと驚きました」

本の出版を皮切りに、食に関連したイベントへの招待も届くようになり、新たな場での交流も生まれたそう。実は、インターネットを使った発信は最近になって始めたことではありません。

「実は40代のころから、インターネットを使った発信はしていて。当時は好きなアーティストさんがいて、その方を応援するためにファンが集まれるサイトを自作していたんですよ(笑)」

きょうこばぁばさんは若いときからインターネットを使い、好きなアーティストの情報をファンに向けて発信したり、日記を書いたりして、インターネットを通じた発信や交流の楽しさを感じていたのです。その後、時代の移り変わりとともにmixiやアメーバブログなどメディアを変え、Instagramへの移行も自然な成り行きでした。

「ファンサイトをつくっていたときも、ライブなどで実際にお会いしてお友達なる方もいらっしゃって。インターネットを通じて知り合うと、普段の生活ではなかなか出会えない方々と出会えるんですよね。そうそう、コロナ禍の直前にもInstagramを通じて大きな出会いがありました」

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30代のパートナーが気付かせてくれた、新しい私の強み

現在、きょうこばぁばさんはInstagramと並行してYouTubeでも活動されていますが、その活動の裏には1人のパートナーとの出会いがありました。

「森田という30代の男の子と一緒に企画を考えたり、編集作業をしたりしているんですが、彼ともInstagramを通じて知り合いました。始めは、突然『シニア向けのYouTubeを一緒にやってくれる人を探していて、会ってください!』とのDMが送られてきて(笑)。どうして私に連絡をくれるのか分からず、何度かお断りの返信をしたんです」

しかし、その後も森田さんからDMが届き、熱意に負けたきょうこばぁばさんは、一度森田さんと会ってみることに。話してみると、2人が持つ思いが同じだったことが分かりました。

「YouTuberになる前、私は15年間、介護士をしていました。そのとき、施設の利用者さんが『私が遊びにいけるのはデイサービスぐらいしかない』と話していて、若者世代やファミリー層に向けた情報発信はたくさんあるのに、高齢者本人に向けた情報提供の少なさを感じていたんですね」

そのため今では、シニア世代に向けたファッションやスキンケアなど、お金をかけずに生活を豊かにするヒントを投稿しています。

「年齢を重ねてもやりたいことをやれる方法はいくらでもあるし、行ける場所だってたくさんある。なのに、そのことがシニア世代には届いていないんです。私がSNSで発信をしているのも、そういった情報提供の場を一つでも多く増やしたいと感じているからなんです」

実は森田さんは介護・福祉業界で理学療法士として勤務しており、日々シニア世代と接する中で友人と一緒に出かけたり、オシャレを楽しんだりするアクティブシニアを増やしていきたいとの想いを持っていました。同じ目的を持っていると意気投合した2人、森田さんはきょうこばぁばさんのプロデューサーとしてともに活動をするようになりました。

さらに、今やきょうこばぁばさんの1つのカテゴリーとなっているファッションも、森田さんからの「発信してみるのは、どうですか?」という提案がきっかけだったそう。

「プチプラでお金をかけない洋服選びはみんな知りたいんじゃないかって言われて。最初は『そうなのかな?』と、半信半疑だったのですが、ファッションの投稿を始めると、フォロワー数もどーんと増えてびっくりしました(笑)」

自身が発信したいことと、視聴者が知りたいことのギャップを埋めるため「日々、森田と試行錯誤してるんです」と笑うきょうこばぁばさん。YouTubeを始めたのも森田さんからの提案で、今後はTikTokにも挑戦しようか検討中だという。年齢差を越え、森田さんの意見も素直に受け止めることが新たなチャレンジに向かうきっかけになっているのかもしれません。

「同じ志があるからこそ森田とはぶつかり合うこともよくあります(笑)。それでも『いろんなことをやってみないとですね!』と、メディア特性ごとに異なる企画や拡散方法を考えてくれているので、信頼しています」


YouTube投稿動画より