PMSは生理前に現れるつらい症状
生理前は生活に支障が出るくらい症状がつらいのに、生理が始まったら症状が消えるという場合は、「PMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)」かもしれません。
PMSとは、生理の始まる3~10日程前から、心身に起こるさまざまな不調のこと。
その原因ははっきりと解明されていませんが、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)の変動が関係していると考えられています。
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PMSの症状はライフステージで変化する可能性も
PMSは、ライフステージによって症状が変化するケースが多く、特に30代では、メンタル面での不調が強く起こるといわれています。
30代は、仕事や子育てに追われる人が多い年代。そうした心身のストレスが、PMSに影響しているのかもしれません。
また、性格的な傾向によってPMSを誘発しやすい・しにくいといった個人差があるほか、そのときの体調によって症状が異なることも。
いずれにせよ、生理の前のつらい症状でお悩みの人には、婦人科の受診をオススメします。
できることからやってみよう!生理の症状別対処法
PMSや生理中のつらい症状は、セルフケアで少しでも軽減したいもの。
では、具体的にどのような対策をとれば良いのでしょうか。ここでは、それぞれの症状に合わせた対処法をご紹介します。
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下腹部痛・胃腸症状への対処法
腹痛や腰痛、吐き気、下痢といった下腹部痛や胃腸症状への対処法として、手軽にできるセルフケアが「温める」こと。
市販の使い捨てカイロを、服の上からおなかや腰の部分に貼ってください。温熱効果で血行が促進されることで、痛みが軽減する傾向があります。
血行促進という意味では、生理中の体に負担にならない程度の軽い運動やストレッチもオススメです。
胃腸症状は、疲れが溜まったり、ストレスがかかったりすると強く出る可能性があります。食事は刺激物を避け、消化の良いものをとってください。また、睡眠や休養をしっかりとることも心掛けましょう。
生理痛には鎮痛薬も効果的。生理痛の原因であるプロスタグランジンの産生を抑える、イブプロフェンやロキソプロフェンといった解熱鎮痛成分を配合した医薬品が適しています。
なお、市販の鎮痛薬を使用する場合は、購入前に薬局・薬店の薬剤師に相談の上、用法・用量をきちんと守って服用してください。
頭痛への対処法
生理に伴う頭痛の対処法は、血管の拡張を抑えることがポイントです。
保冷剤をタオルなどでくるみ、こめかみを中心に冷やしてください。痛みのある部分を指で押さえて、血流を鎮めるのも効果的です。
また、明るい光や喧騒は痛みを強くさせるおそれがあります。静かな落ち着いた場所で、目を閉じて安静に過ごしましょう。
生理で頭痛があるときは、運動や長時間の入浴、マッサージなど、血管を拡張させるような行動は控えてください。
なお、頭痛にも鎮痛薬が効果的です。用法・用量をきちんと守り、痛みを感じたらできるだけ早めに鎮痛薬を服用しましょう。
貧血・めまいへの対処法
生理中の貧血やめまいの対処法としては、日々の食事で意識的に鉄分をとることが大切です。
鉄分には、肉や魚といった動物性たんぱく質に含まれる「ヘム鉄」と、大豆や牛乳、青菜などに多く含まれる「非ヘム鉄」があります。
ヘム鉄のほうが腸からの吸収が良いため、貧血対策として、ヘム鉄を多く含むレバーや赤身の魚などを、積極的に食事に取り入れましょう。
また、鉄分はビタミンCを多く含む果物や野菜と合わせて摂取すると、吸収率が上がります。
鉄分補給に市販のサプリメントを活用するのも良いですが、貧血やめまいでお悩みの人は婦人科の受診を。血液検査でヘモグロビン値を確認し、必要であれば医師から鉄剤などを処方してもらえます。
倦怠感・精神的症状への対処法
気分の落ち込みやイライラといったメンタル面の症状がつらいときは、できるだけ心身をリラックスさせて過ごすことが大切です。
休息の時間を確保し、アロマテラピー(アロマセラピー)やハーブティーなどを生活に取り入れるのもいいでしょう。
また、体を適度に動かして、睡眠をしっかりとるといった健康的な暮らしを心掛けることも、メンタルの不調を軽減するポイントです。
PMSへの対処法
PMSの基本的な対処法は、生活習慣の見直しです。ライフスタイルを整えて、心身の健康を目指しましょう。
食事はできるだけ規則正しく、栄養バランスの整ったものをとることを心掛けて。カフェイン、アルコールなどの刺激物や、塩分のとりすぎも控えてください。生活の中に、軽い運動を取り入れることも効果的です。
また、血行改善のため、喫煙習慣がある人には禁煙をオススメします。
それでもつらい症状が軽減しない場合は、婦人科の受診を。きちんと診断した上で、低用量ピルや漢方薬といった、PMSのつらい症状を改善する薬を処方してくれます。
本来、生理はそれほどつらいものではない?
多くの女性が、生理痛でつらい思いをしています。ところが日本医師会によると、本来、生理はそれほど強い痛みを伴うものではないのだとか。
生理痛がとても重くて鎮痛剤が手放せないという人は、「月経困難症」という症状である可能性が考えられるとしています。
なお月経困難症には、下記の2つのタイプがあります。
機能性月経困難症
機能性月経困難症とは、病気が原因ではないけれど生理痛がつらいという症状です。
プロスタグランジンの産生量が多く、子宮が強く収縮しすぎることや、子宮の出口が狭いことなどが主な痛みの原因。
月経困難症を訴える人のうち、4割以上を占めるといわれています。また、10~20代の方に多く、加齢とともに改善することが多いのが特徴です。
器質性月経困難症
器質性月経困難症とは、子宮や卵巣の病気が原因で、つらい生理痛を覚えるという症状です。
よくある原因疾患としては、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮線筋症などがあります。
20代後半以降に多く、加齢とともに増加するのが特徴。自然治癒することはなく、原因となっている病気の治療が必要なので、まずは婦人科の受診をオススメします。
生理のつらい症状は、我慢しないで上手に対処を!
生理は毎月やってくるものだからこそ、上手に付き合っていきたいもの。生理の症状と向き合うことは、普段の生活を見直すきっかけになります。
また、婦人科を受診することは、自分の体の状態を知る良い機会にもなるはず。生理のつらい症状で悩んでいる人は、我慢しないで、少しでも心地よく生理と付き合える方法を探してみてください。
監修:佐藤 杏月先生プロフィール
【八丁堀さとうクリニック副院長 医学博士 日本産婦人科学会専門医】
日本医科大学卒。日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。3人の子供の子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医のご主人とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。