実写映画化もされた代表作『ソラニン』や、累計発行部数300万部を超える『おやすみプンプン』そして、 現在「ビッグコミックスペリオール」にて連載中の『MUJINA INTO THE DEEP』など、 数々のヒット作を生み出し続ける漫画家・浅野いにおによる傑作漫画 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(通称・デデデデ)。
2014年より「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)にて連載が開始された本作は、 突如東京上空に巨大な宇宙船 通称“母艦”が襲来し、絶望的に思えた異常事態も次第に日常へと溶け込んでゆく世界で、 日々の青春を謳歌する少女たちの物語。第66回小学館漫画賞一般向け部門、 第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したのち、2022年に全12集をもって堂々完結。映画前章、後章が大ヒット上映中です。
本作で、門出らの高校の同級生である小比類巻健一を演じる内山昂輝さんにインタビュー。作品の魅力についてお話を伺いました!
――まずは原作を読んだ感想から教えていただけますでしょうか?
とても複雑な物語だと感じました。女子高生たちの平和な日常を描きつつ、そのそばには世界の破滅の危機が常に浮かんでいて、それでも日常は進んでいく。中盤以降には驚きの展開もあるので、どうやってこの複雑な物語が構想されたのだろう?と、非常に気になりました。練られた世界観と物語・キャラクター設定なので、様々な楽しみ方が出来る作品だなと感じました。
――そんな作品がアニメーションになることでどの様な印象を受けましたか?
あの複雑な原作が見事にアニメ化されているなと感じました。真正面から原作と向き合って作られていて、母艦の描写、兵器のデザインや表現、美術・背景などを含めて、『デデデデ』の世界観を120パーセント楽しめるアニメだと思います。この原作をアニメ化するということ自体がチャレンジングな企画だと思うので、その仲間に加えていただいてありがたいです。
――小比類巻健一という役柄への印象と、どう演じようと意識したかを教えてください。
前半の高校生の小比類巻と、卒業後の小比類巻で、大きな変化を迎えるキャラクターなので、そこの変化をどうつけていこうかなと考えていました。まずは、見た目が変わるのでその変化を意識しようと思いましたし、高校時代の彼は色々なものに影響されがちで、まだ自分を確立していない。その年代特有の年相応な可愛らしさや、多感な時期の雰囲気を表現できるように心がけました。色々あって変化した後は「自分が信じる道に突き進んでいく」というキャラクターですので、その2つの違いを表現したいなと。
――監督や音響監督さんからはディレクションやお願いはありましたか?
最初のアフレコ日に、「重要なのは小比類巻のギャップを作ること」といったお話をスタッフの方々としました。僕も原作を読んで同じことを感じていたので、やはりと思いました。収録が進んでいく中で、小比類巻が再登場する時にどのくらいの変化の度合いにするか話し合いました。僕が最初にテストで演じた際には、「闇の方へいきすぎている」と言われたので、変化を弱めてみたり、微調整しながらスタッフのみなさんと作っていった感じです。
――先ほど「小比類巻は年相応の子」というお話が出ましたが、現代ってSNSの影響もあり、より人の言葉に影響を受ける傾向が強いですよね。
特に高校生の頃は、色々なものに影響を受けやすいものですよね。好きなミュージシャンのインタビューを読んでそのまま真に受けたりして、その言説や人物を絶対視するということもあります。そこは小比類巻に共感出来る部分でした。
――小比類巻の「みんなが言っているから」というセリフも顕著ですよね。
自分の高校生の時を振り返ると、強く影響を受けるかどうかは別として、色々なものをそのまま受け止めてしまうことがあったなと。 今は社会人になって、経済的な面で自立出来ている自信のせいなのか、考え方の軸のようなものがある。でも高校生だと、使える時間もお金も足りなくて…なんかこう、寄るべない気持ちを感じてしまうのも分かります。そういうときに、大人の言っていることや正しそうなことをそのまま受け取ってしまうのも分かるので、自分とは違うけど理解はできますね。人との関係性の築き方や、彼女に対してしてしまう“痛い反応”とかも、分かるなぁという部分が多かったです。
――内山さんは学生時代や10代の時に夢中になっていたことはありますか?
何か1つにかけた青春みたいなことは無かったのですが、今よりもっとカルチャー全般に対して興味があって。映画でも音楽でも漫画でも、新しいものに対する興味が今よりもっと強くて。知らないものを知ることが楽しい時代だったなと思います。友達と貸し借りとか情報交換したり、本屋さんにたくさん行ったり、そういうことが楽しかったですよね。
――今はそのカルチャーたちに声で命を吹き込むお仕事をされていて、とても素敵ですよね。
ありがとうございます。僕はもともと子役をしていて、高校生とか大学生時代も、今のお仕事に片足入っている感じだったのですが、今もこうして色々な作品に携われていることは本当にありがたいことです。
――これまでたくさんのキャラクターを演じられていますが、それらのキャラクターは自分の中で蓄積されていきますか?演じ終えると消えていきますか?
蓄積という言い方の方がしっくりくるかなと思っていて。色々な役を積み重ねてきた経験で「この役はあのキャラクターのこういう要素が応用できるかな」という風に思い出しながら演じることも出来ます。この仕事は一度アニメで演じて終わりじゃなくて、数年後に「ゲームになるので、もう一度声を収録します」ということもあります。当時の声を再び蘇らせなきゃいけないというのが日常的な仕事なので、キャラクターの要素はずっと自分の中にあるのだと思います。
――素敵なお話をありがとうございます。内山さんが『デデデデ』の様に“非日常な危機”に面したらどんな行動をとると思いますか?
ええっ、どうするのかな〜? 「東京から出るのか出ないのか」という話しをするシーンがあるじゃないですか。僕だったら「東京は危ないと言われていても、明日の仕事があるしな〜」って思っちゃうかもしれません(笑)。 非日常を目の前にしているのに、そうは言ってもな…というキャラクターたちの感覚は凄く分かりますね。僕も、目の前の日常を優先しちゃいそうだなと思うし、それはもしかすると、強引に日常を続けることで、安心を得ようとしているのかもしれないですね。
――「強引に日常を続けることで、安心を得る」という感覚、すごく分かります。『デデデデ』は、母艦の迫力と日常のコントラストが、本当に映画館で観ると大迫力で怖かったですね。
高校生たちの日常描写とか、青春のきらめきも面白いところなんですけど、SF的な展開や侵略者たちの描写が大きな見どころだと思います。劇場で見るとさらに魅力が増す作りになっているし、映像と音響、そして色使いも含めて映画館で観ることが適している作品だと思います。原作を知らない方も、コミックと映画どちらから入っても大丈夫です。アニメーション映画をあまりご覧にならない方も、様々な視点から楽しめる物語になっているので、ぜひ大スクリーンで体験してください。
――今日は素敵なお話をありがとうございました!
撮影:オサダコウジ
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』大ヒット上映中
入試に合格し、亜衣や凛と同じ大学に通うことになった門出と凰蘭。大学では竹本ふたば、田井沼マコトと意気投合、 会長の尾城先輩がいるオカルト研究部に入部してキャンパスライフが始まった。一方、宇宙からの〈侵略者〉は東京のそこかしこで目撃され、自衛隊は無慈悲な駆除活動を粛々と実行していた。上空には、傾いて煙が立ち上る母艦。政府転覆を狙い〈侵略者〉狩りを続ける過激派グループ・青共闘の暗躍。世界の終わりに向かうカウントダウンが刻まれる中、凰蘭は、またもあの不思議な少年・大葉に遭遇する…。
■キャスト
幾田りら あの
島袋美由利 大木咲絵子 和氣あず未 白石涼子
入野自由 内山昂輝 坂 泰斗 諏訪部順一 / 竹中直人
■スタッフ
アニメーションディレクター:黒川智之 シリーズ構成・脚本:吉田玲子 世界設定:鈴木貴昭
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高 色彩設計:竹澤聡 美術監督:西村美香
CGディレクター:稲見叡 撮影監督:師岡拓磨 編集:黒澤雅之
音響監督:高寺たけし 音楽:梅林太郎 アニメーション制作:Production +h.
原作:浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
アニメーション制作:Production +h.
製作:DeDeDeDe Committee
配給:ギャガ
(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee