猫は別世界との行き来が自由自在
異界を行き来できる人間は非常に珍しいが、猫はみな、日常的にこの世とあの世まではいかぬが異界……妖怪や霊、自然霊が棲まう世界とは行き来しておるのじゃ。
いや、行き来、という言葉は当てはまらぬ。異なるが重なり合って存在する世界の両方が同時に視えておるのじゃな。
外飼いの猫がいなくなりまったく消息不明になることが10件あるとすれば、生死はともあれこの世に留まっている可能性が半分、あとの半分は異界に行ったまま、そちらが気に入り居着いてしまったのやもしれぬ。
★死後、異界に留まる猫の魂
さて、これは猫好きにとっては少し受け入れがたき話となるが、愛猫を亡くした飼い主は、愛猫の魂と極楽浄土で再会したいと思うであろうが、実は無理なのじゃ。馬や犬とは会えた話があるのに、猫について聞かぬのはなぜか。
その答えは、
猫は死後、人間と同じ天国や極楽と呼ばれる場所には行かず、魑魅魍魎や妖怪、鬼や霊が棲まう異界に留まる
猫が魔物呼ばわりされる所以がまさにこれなのじゃ。猫は異界から来て
異界に帰る特殊な魂の系譜。魔物ではないが「魔物とも共存できる」のじゃ。
★人間にとっては「魔物」でも猫にとっては「仲間」
人間が魔物と呼んでいる存在も、人間との相性が悪くお互いにいがみあっているだけで、猫にとってみればむしろ姿形は変わっていても、異界の魔物もまた仲間である。つまり、愛猫が死後に天国にいかないからといって、 地獄に落ちて鬼に食われて苦しんでいるわけではないのじゃぞ。
むしろ、異界でも力のある鬼に可愛がられ安穏と暮らしているか、死してようやく自由を得たと、誰にも飼われず異界の野山を楽しく駆け巡り、この世の鳥やネズミに類する小さな魑魅魍魎を喰らうているやもしれぬ。
しかし、猫はこの世に残した元の飼い主を忘れ果てるわけではなく、むしろこの世に存在するための肉体という姿形はなくなっても、異界にいながら飼い主の様子を見ていることもある。あまりに悲しんでいるならば、新たな肉体を得て飼い主の元に舞い戻る、情の深い猫もいる。
猫は半分は異界の生き物。異界の鬼や妖怪変化とも仲良くそちらに棲まうことのできる生き物。かといって人間に仇を成すことはなく、愛し可愛がればその愛に死後まで報いようとする情の深さもある。
死後も飼い主をときどきであるが思い出し、夢で「こちらで元気でやっているよ」とメッセージを送ってくることもある。さらには、飼い主が困っていれば密かに異界からできる手助けをすることもある。