タイムパフォーマンスの略で、時間対効果を意味する言葉の「タイパ」。Z世代を中心に重視され今では世代を問わず定着したトレンドワードになった一方で、早くもその反動が表れているようです。

6月10日の「時の記念日」にちなみ、毎年“時間”に関する意識調査を実施しているセイコーが「セイコー時間白書2024」を公開。全国の10代~60代の男女1200人を対象にしたアンケート調査で、半数以上が「何でもタイパ」に違和感を持つ、“タイパ疲れ”の傾向が明らかになりました。

半数以上が「何でもタイパ」に違和感

回答者の6割がタイパ重視は「社会に定着したと思う」(60.5%)と答えた一方で、「『何でもタイパ!』に違和感を感じる」(52.9%)と答えた人も半数以上に。

「何でも効率化」の波に乗って時間効率を高めるための製品やサービスが次々と登場したり、タイパを後押しするライフハックの情報が出回ったりするなかで、4割の人は「タイパのためという押し付けを感じる」(40.0%)と抵抗感を示しています。

仕事やプライベートで耳にすることの多くなったタイパに対し、トゥーマッチと感じるタイパ疲れの傾向が見られるようです。

時間効率と満足度は比例しない?

「時間をかけたいこと・かけたくないことは人それぞれ違うので、何にでもタイパを求められてしまうと満足を感じられず、タイパ疲れになってしまうのでしょう」と話すのは、時間学の専門家で、千葉大学大学院 人文科学研究院の一川誠教授。

時間効率を高めることが目的になると、その結果に対しては必ずしも満足度や達成感が得られるわけではないと分析しています。

「自分はどういうふうに時間を使うと満足できるのかを考え、そのために何を短縮し、どこに長い時間を確保したいか、という時間の使い方を考えることが大切ですね。今回の調査では掃除や料理がタイパを重視する時間として挙げられましたが、例えば普段の料理はタイパしたいけれど、ストレス解消の料理は時間を気にせずに没頭したいとか、人によってシチュエーションによって、時間の使い方は変わります。画一的ではない多様な時間の使い方が認められる社会は、豊かな社会であり、豊かな人生につながりやすいと思います」

時間の使い方も多様化

一川教授が言うように、タイパを重視する時間の調査では、「掃除」(37.8%)、「料理」(36.6%)、「洗濯」(36.5%)、「買い物」(33.7%)など家事全般が上位に挙げられました。

昨年の結果と比較すると、昨年1位の「睡眠」をはじめ、「家族とのコミュニケーション」、「おしゃべり・リアルでの会話」、「友人とのコミュニケーション」など、ほかのものとは代えられない時間がスコアを大きく下げる傾向が見られました。

ここ数年はキャッチーなキーワードとして注目を集めたことで、内容を問わずタイパが優先される傾向があったかもしれません。しかし、タイパが社会的に定着したこともあり、時間対効果を高めるべきもの、時間を気にせず楽しみたいもの、効率化で生まれた時間で楽しみたいことのすみ分けが明確になってきているようです。

調査概要

実施時期:2024年4月12日(金)~ 4月15日(月)

調査手法:インターネット調査

調査委託先:マクロミル

調査対象:全国の15歳~69歳の男女1200人(男女各600人、各年代別に男女各100人ずつ)

Photo by Dylan Ferreira on Unsplash