結婚、出産、育児とライフイベントにあわせてキャリアプランの見直しが求められる女性。特に30代は人生の転機に直面する機会も多くなります。一方、家庭をもたずに働くことや共働きで家庭と仕事を両立させることを選ぶ女性が増えてきています。
しかし、35歳の転職は難航しやすく、ライフイベントを控える女性にとっては一層難しい選択になるでしょう。今回は35歳女性の転職活動に焦点を当て、社会的な現状や抱える問題、転職活動のポイントやおすすめの資格をご紹介します。
35歳女性の転職は厳しいのか?
30代女性の多くが就きたい職業に就けなかったり、望んだ雇用条件で働けない現状があります。
男女共同参画局が発表した男女共同参画白書 令和4年版によると、30代女性の就業率は75.8〜77.2%。そのうち正規雇用は38.2〜45.9%と、多くの女性が非正規雇用で働いていることがわかります。また2021年における女性の非労働力人口は約2,636万人。そのうち就業を希望しながら求職していない女性は約171万人にのぼります。
その理由として「適当な仕事がありそうにない」が最も多く34.5%、次いで「出産・育児のため」が25.0%、「健康上の理由のため」が18.5%という結果でした。満足のいく仕事がなく悩んでいる女性は多い現状があります。
35歳女性が抱える問題
多くの女性が希望するかたちで働けていない現状があります。では、どのような問題が女性のキャリアアップを阻んでいるのでしょう。年齢、家庭、ライフキャリアという3つの側面から女性が直面する問題を見ていきます。
35歳という年齢
35歳が転職の限界と言われるほど、転職市場において35歳という年齢はターニングポイントです。男女を問わず、35歳を境に転職の成功率が低くなります。その理由は以下のとおりです。
転職市場の需要は35歳以下の若手人材の方が高い
30代中途採用者に求められるレベルが高い
転職後の伸びしろを期待されにくい
求職者と企業の需要がマッチしづらい
35歳は前職での経験やスキルが重視されます。同年代には役職者も増え、採用活動の際には自社の35歳社員と同程度の働きができるかという点が判断基準になるでしょう。また転職後に自社の価値観や文化になじめるかという懸念から、柔軟性のある35歳以下の若手人材が求められる傾向にあります。
さらに前職で会社に貢献してきた人は、転職先でも同程度かそれ以上の働きや報酬を期待するでしょう。そこで求職者と企業のミスマッチが生じやすく、結果として35歳の転職活動は難航する傾向にあります。
家庭と仕事の両立
35歳の女性にはライフイベントも多く発生します。結婚、出産を経て、育児をしながら働く女性も多いでしょう。実際に男女共同参画白書 令和4年版を見ると、夫婦で働きながら家事や育児をする共働き世帯は増加傾向にあります。
近年では産後パパ育休制度が導入され父親の家庭参加が注目されていますが、依然として女性の家事負担は大きい現状があります。家庭と仕事の両立は、多くのライフイベントを経験する女性にとって大きな課題といえるでしょう。
女性のライフキャリア
未婚の女性でも、ライフイベントが生じやすい30代の転職は不利な傾向があります。いくら未婚と伝えても、企業には「結婚してすぐに辞めてしまうのではないか」、「出産や育児によって仕事に慣れる前に休職してしまうのではないか」という懸念が生じます。性別によって採用活動を行うことは禁止されていますが、採用コストを考えると長く会社に貢献するであろう男性の方が、企業にとって採用価値が高いでしょう。
男女共同参画白書 令和4年版に掲載された民間企業における役職者の男女差を見ても、上位の役職ほど女性の割合が低く、部長級の女性役職者は全体の7.7%ほど。積極的な女性登用が叫ばれる社会でも、その実現はまだまだ厳しい現状があります。
35歳女性が転職するためのポイント
年齢や性別などを理由に転職が難しいといわれる35歳女性ですが、実際に転職を成功させて理想のライフキャリアを築いている女性も多くいます。転職活動を有利に進めるためのポイントをご紹介しましょう。
転職活動の前にキャリアプランを見直す
転職活動を始める前に、まずはキャリアプランを見直しましょう。これまでの経験や自身のスキルを振り返ってキャリアの棚卸しを行います。そのなかで自分がどのようなことに興味をもち、何を大切にして働きたいのかを明確にしてください。
長期プランをたてて10年、20年先の生活を描くのもよいでしょう。いつまでにどの段階までステップアップするかを逆算すれば、年齢に応じたキャリアをイメージでき、キャリアプランをたてやすくなります。
家庭かキャリアアップか、もしくは趣味かなど、自身が大切にするものを明らかにすることも重要です。優先順位を決めることで職業や働き方の選択肢も変わってくるでしょう。ライフキャリアとは、仕事はもちろん家庭や地域とのかかわり、自己啓発や趣味をはじめとする個人の活動など、暮らしにおいて果たすべき役割や経験の積み重ねのことを指します。
相互の関わりのなかで最も大切なものを明確にすることで、転職活動の軸がより強固なものになるでしょう。
転職活動でアピールするべきポイント
経験の棚卸しをふまえて、自身がどのような仕事をこなし実績をあげてきたのかをまとめましょう。転職活動でアピールする際に、より効果的に伝える検討材料になります。どのような仕事で、何を考え、どう行動したか、その結果どのような成果が得られたかを具体的に整理します。目標や実績を数字で伝えるのも効果的です。
30代半ばの中途採用者に求められるのは即戦力やマネジメントスキル。30代は会社における機動力として、プロジェクトを進めたりチームを先導したりする力が求められます。また役職者候補としてリーダーシップを期待されることもあるでしょう。前職の経験もふまえてアピールすると、転職市場で有利になります。
転職に有利な資格5選
職務に関係する資格をもっていると採用に有利になったり給料に資格補助がついたりする場合があります。気になる業界の資格を調べておくとよいでしょう。今回は未経験者やライフイベントを経験する女性にもおすすめの資格をご紹介します。
①日商簿記
事務や経理職で転職を考えるなら日商簿記検定がおすすめです。企業の経営活動を記録する簿記の知識は、事務や経理において必須。近年では経理作業をPCソフトで自動化している企業もありますが、転職においては資格を取得していることで他の求職者と差別化を図れます。
②マイクロオフィススペシャリスト(MOS)
PCスキルをアピールできる資格として汎用性が高いのはマイクロオフィススペシャリスト(MOS)。マイクロソフト社製のWordやExcelといったソフトの活用スキルを証明できる国家資格です。日本の企業で使われるPCソフトはマイクロソフト社製のものが主流。また他社製品でも機能や使い方が似ている部分が多くあるため、PCスキルを高めるために有効な資格といえます。1か月ほどの勉強で取得できるのも魅力です。
③医療事務
女性におすすめなのが医療事務技能認定試験です。医療事務として働くうえで必要な基礎知識や作業行程の理解度を証明する資格試験で、医療事務の転職に有利になります。医療業界は需要が高く、病院がある地域なら医療事務として働けるでしょう。
④ファイナンシャルプランナー
近年、需要が高まっているのがファイナンシャルプランナー資格。資産や負債、将来設計をふまえて個人のライフプランニングを金銭面からサポートする専門家です。金融業界や不動産業界では特に重宝されています。独立して個人事務所を立ち上げるファイナンシャルプランナーも少なくありません。新しく物事を始めたい人や将来的に独立も視野に入れている人におすすめの資格です。
⑤行政書士
企業への転職から独立まで、幅広いキャリアプランを描くのに有効なのが行政書士資格。町の法律家ともいわれる行政書士は、省庁や役所に提出する書類を作成する専門家です。民法や会社法の知識が得られるため、企業の法務部をはじめ転職活動の幅も広がります。独立して個人事務所を立ち上げることも可能です。国家資格として難易度は高いものの、ライフキャリアを描くうえでは強い味方になる資格といえるでしょう。
スキル・経験がなくても転職できる?
未経験の業界・業種への転職も可能です。30代の転職に求められる即戦力やマネジメントスキルを効果的にアピールすることで転職活動を有利に進められます。前職の経験から希望する職業との共通点を見つけてマネジメントスキルやコミュニケーションスキルといった汎用性のあるスキルをアピールするとよいでしょう。どうして未経験の分野に挑戦したいのかや、入社後どのように企業に貢献するかなどを伝えるのも効果的です。
まずはスキルや経験がないと感じる理由と向き合ったうえで、何が自身のアピールポイントになるかを考えてみてください。企業の求める人材と自身のアピールポイントがマッチすれば、転職活動にも有利です。
働く女性と健康経営
健康経営の取り組みのなかで働く女性を支援する企業が多くあります。転職活動の際には健康経営に取り組む企業を視野に入れるのもおすすめです。
健康経営とは
従業員が健康であることが企業の利益につながるという観点から、健康管理を戦略的に行う健康経営。体と精神の両面から健康をサポートする取り組みが進められています。
経済産業省では健康経営銘柄制度を設けて、健康経営に優れた企業を選定する制度を導入しました。国も健康経営を推進しています。選定企業には健康経営優良法人としてロゴマークが付与されているので、転職活動の際には参考にしてみてください。
働く女性へのサポート
健康経営の取り組みとして、働く女性をサポートする事例もあります。妊娠や出産、育児などライフイベントを経験してもなお働き続けるためには、環境整備と健康支援が欠かせません。
働く女性を支援することで長期的な人材の確保や生産性の向上が期待できます。また人材を定着させることで女性のキャリアアップや管理職登用にもつながるでしょう。少子高齢化によって人材不足が深刻化する現代において、女性の活躍する場はますます拡大していきます。健康経営に取り組む企業はその先駆けとして、社会的にも期待が寄せられるでしょう。
35歳の転職を成功させるためにキャリアプランを見直そう
35歳女性の転職活動に焦点を当て、社会的な現状や抱える問題、転職活動のポイントやおすすめの資格をご紹介しました。結婚、出産、育児とライフイベントにあわせてキャリアプランの見直しが求められる女性たち。特に30代はライフイベントに直面することが多くなります。一方、家庭をもたずに働くことや共働きで家庭と育児を両立させたいと考える女性も増加傾向です。どのような生き方を選んでもライフキャリアと向き合い、選択を迫られるごとに見直して、よりよいキャリアを積み上げてみてください。