岸田文雄 (C)週刊実話Web

岸田文雄首相の“退陣論”が急浮上している。

安倍派を中心とした裏金事件に端を発した政治資金規正法の改正をめぐり、岸田首相が公明党や日本維新の会などの要求に譲歩しまくったからだ。

おかげで自民党内からは批判が噴出。“後ろ盾”の麻生太郎副総裁が見切りをつけたとの見方も強く、地方選敗北の連鎖を断ち切れない岸田政権は、もはやレームダック(=死に体)同然とみられている。

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「カネの切れ目が縁の切れ目ということですよ。規正法改正の与野党協議を現場の議員に任せず、頭越しで合意して議員の資金集めを難しくさせている。全く党のためにならず、話にならない。もう支えられません」

自民党の閣僚経験者はこう吐き捨てるが、党内でひんしゅくを買っているのは、政治資金パーティー券購入者の公開基準を現行の「20万円超」から「5万円超」に引き下げたためだという。

公明党の要求を丸のみしたことが恨みを買っているのだが、この防衛ラインが決まった裏では、熾烈な攻防戦が繰り広げられていたようだ。

創価学会嫌いで知られる麻生氏は当初、一歩も譲らぬ姿勢を見せていたが、茂木敏充幹事長が「このままでは規正法改正案は成立しない」と打診。5月29日夜、東京・丸の内のホテル内にある日本料理店で、両氏は岸田首相との会談に臨んだ。

その席上、麻生氏は「譲歩しようなんて思わないことです。党内は5万円ではもちませんよ」と迫ったが、岸田首相は頑として首を縦に振らなかった。

また、その後も麻生氏は岸田首相に電話をしたものの、首相は「法案が通らないと政権が終わってしまう」と譲らず、最終的に公明党の山口那津男代表と「5万円超」で合意してしまったのである。

全国紙政治部記者が言う。

「パーティー券の購入者には名前を公表されたくない人や法人が多い。それゆえ、これまで2万円のパー券を10枚買ってくれた人は今後2枚になるはずで、党内から怒りが相次いだのも無理はありません。麻生、茂木氏との“三頭政治”もこれで終わりと評判で、『9月末の任期満了に伴う総裁選に岸田首相は出られないのでは?』とみられています」

ヤケクソ解散に踏み切る可能性も

次期自民党総裁選には、石破茂元幹事長が出馬するのが、ほぼ確実な情勢だ。

岸田首相が勝利するには最低限、岸田派と麻生派の票を固めなくてはならないが、今やそれが極めて困難な状況になり始めている。

岸田首相を見限った麻生氏が、上川陽子外相を総裁選に擁立する可能性が高まりつつあるからだ。

そうした不穏な状況下で飛び出したのが“退陣要求”だった。

自民党の横浜市連が6月4日に同市で定例会を開催。佐藤茂市連会長が、声高にこう訴えた。

「政治資金規正法改正にメドがついた今、総裁自ら身を引く苦渋の決断をし、強いリーダーシップの取れる新進気鋭の総裁を選び、変革の証しを示さなければならない」

大会には神奈川県連会長の小泉進次郎元環境相も出席し、政権交代を余儀なくされた2009年の衆院選を引き合いに出し、こう強調した。

「一人一人が危機感を持って変わっていかなければいけない」

ちなみに、同大会が行われた横浜市は菅義偉前首相のお膝元。そのため、党内では「21年の総裁選で岸田首相に出馬断念に追い込まれた菅氏が、佐藤氏に退陣要求をさせた」(自民党議員)ともっぱらだ。

この退陣要求からわずか2日後の6月6日夜には、菅氏を含む非主流派が東京・麻布十番の日本料理店で会食。

小泉氏や茂木派の加藤勝信前厚生労働相、二階派の武田良太元総務相、安倍派の萩生田光一前政調会長など、菅政権で閣僚を務めた面々が顔を揃えていた。

政治部デスクがこう語る。

「この会合には、裏金事件で党役職停止処分を受けた安倍派の萩生田、二階派の武田、そして菅前首相が“ポスト岸田”に推す加藤勝信各氏などが集ったことから、事実上の岸田降ろしが始まったとみられている」

岸田首相は、これに対抗するため衆院解散をヤケクソで仕掛けてくる可能性も残されているが…。

「自民党執行部や公明党は6月23日に予定通り国会を閉じるか、小幅延長で終わらせる算段です。地方選で敗北続きの岸田首相の下で衆院選を戦いたい議員は、もはや誰もいない」

実際、4月の東京・目黒区長選と衆院島根1区補選、5月の神奈川・小田原市長選と静岡県知事選、東京・目黒区都議補選、そして6月2日の東京・港区長選では自民党の推薦または公認候補が連敗。

「負け癖がついてしまった」(自民ベテラン議員)との嘆き節が聞こえてくる。

しかも、次期衆院選から岸田首相の選挙区である広島1区に加わる広島県府中町でも5月26日に町長選が行われ、ここでも自民党推薦候補が敗北しているのである。

こうしたことから岸田首相周辺では、国会閉会後に内閣改造・党役員人事を断行し、ポスト岸田候補を取り入れる案も取り沙汰されている。

その筆頭が、岸田首相を支えずにサボタージュを繰り返してきた茂木幹事長を石破氏と交代させる案だという。

しかし、四面楚歌で支持率も低迷中の岸田内閣では、ポストを拒否する議員が相次ぐ可能性も否定できない。

そうなれば岸田政権は万事休す。

首相の求心力はさらに地に落ち、いよいよ内閣総辞職も現実味を帯びてきそうだ。