本と、人と、であえる場所

大切な人にプレゼントする本を探していたり、悩みごとを解決するヒントを求めていたり。書店にはさまざまなお客さんが訪れます。思わずうなったのが、一人ひとりにぴったりの本をおすすめできる、森田さんの読書量と記憶力です。

たとえば、育児に悩みながらも話し相手がいなくて涙する若いお母さんに、離婚に向けて別居しはじめた「サレ妻」の元同僚に、妻を急に亡くしたというグレイヘアの男性に……。なぜこんなにもまんべんなく読んでいて、しかもとっさにすらすらと紹介できるの!? と感心しきりでした。

その後、夫の転勤が決まり、また別の書店に採用されることになった森田さん。あるとき、先輩から「ニュータイプ店員」の称号を授けられました。お客さんにしょっちゅう話しかけるところが、「アパレル店員のよう」だと。そのうえ、道やスーパーや電車で、見知らぬ人からものすごい頻度で話しかけられる「話しかけられ王」なのだとか。

自分から行って相手からも来る。だからいつも、自然と人の輪ができるのかもしれないですね。書店とは静かな場所で、ひと言も発さずに行って帰ってくるところだと思っていましたが、自分の中の書店観がひっくり返されました。

ズラーッと陳列された無数の本を前に、さてどうしよう……と悩むことはありませんか? そこに目利きの書店員がいて、話を聞き、選書してくれるとしたら、ぜひお願いしたいものです。

書店員とはこういうもの、という枠を柔軟に広げて自分らしくアレンジしたら、オンリーワンの書店員になっていた、という感じでしょうか。仕事でもなんでも、そこにオリジナルの価値をつけ足せたらいいですよね。

あなたがよく行く書店でも、小さなドラマは日々起こっているかもしれません。本との出合いと、人との出会い。どちらも楽しみになってくる、書店の新たな魅力に気づかせてくれる一冊です。

(Yukako)