原作のあるアニメではしばしば、さまざまな事情で原作にはなかった展開が描かれます。なかには、原作改変によってファンのなかで賛否の声があがった作品もありました。
原作と真逆の展開で視聴者を困惑させた『東京喰種 トーキョーグール√A』 (C) 石田スイ/集英社・東京喰種製作委員会
【画像】え…っ? 「服着て」「なぜ地上波でやれた?」これが近年の過激アニメです(6枚)
アニメオリジナルは諸刃の剣?
多数の作品が放送されているアニメのなかには、原作になかったオリジナルシーンや展開が盛り込まれる場合があります。原作改変は視聴者のなかでも賛否に別れることも多く、原作ファンであればあるほど、その心境も複雑なようです。
『東京喰種トーキョーグール√A』
人気マンガ『東京喰種トーキョーグール』(作:石田スイ)を原作とした『東京喰種トーキョーグール√A』は、アニメの第2期にあたります。人間社会に紛れ込み人の肉を喰らう「喰種(グール)」と、喰種せん滅を目指す「CGC(喰種対策局)」との攻防が描かれました。
原作に忠実だった第1期に対し、第2期『√A』は、単行本8巻から14巻までのアナザールートとして、原作者である石田先生がストーリー原案を手がけ、アニメオリジナル展開が描かれます。
たとえば、「半喰種」の主人公「金木研」が、原作と違い、力によって弱い喰種や人間を支配するという思想を持つ喰種集団「アオギリの樹」に加入するという、まさかの展開が描かれました。
また最終話「研」では、最強の喰種で「隻眼の王」と呼ばれる「有馬貴将(ありま きしょう)」との戦闘など、原作の見どころといわれるシーンがカットされています。
そのような本作に関して、視聴者の間では「これはこれで良いのでは?」「ラストシーンが幻想的で好き」と好評の声があがる一方、「大事なシーン端折りすぎ」「1期が良かっただけに残念」という意見も出て、賛否が大きく別れることになりました。
『ぼくらの』
アニメ『ぼくらの』(原作:鬼頭莫宏)は、原作完結前に企画、放送され、後半はオリジナルストーリーが描かれました。
本作は15人の子供たちが「ジアース」というロボットを操縦し、地球のために戦うという物語で、その戦いに勝っても負けても操縦士が死んでしまう残酷な結末が待っています。基本的な設定は変わらなかったものの、アニメ版は登場人物の性格や戦う順番など、多くの部分が変更されました。
また、「榊原保」や「古茂田孝一」といったオリジナルキャラが登場し、子供たちだけでなく、周りの大人たちの動向も盛り込まれています。物語もラストも、原作と大きく異なっています。
アニメ放送当時、監督を務めた森田宏幸氏のブログに、視聴者から改変に関してさまざまな声が寄せられました。その際、森田氏はブログにて「原作が嫌い」と発言し、物議をかもしました。森田氏は、原作の「子供が死に行く運命を作者が肯定しているかのような点」を嫌悪していたようで、それを踏まえて原作改変に踏み切ったことを述べています。この件に関しては、のちにブログ内で謝罪する事態となりました。
ガールズバンドブームの社会現象を巻き起こしたTVアニメ「けいおん!」キービジュアル (C)かきふらい・芳文社/桜高軽音部
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原作改変が功を奏した日常系アニメの金字塔
『けいおん!』
「まんがタイムきらら」(芳文社)で連載されていた、かきふらい先生の4コママンガ『けいおん!』が原作の『けいおん!』は、日常系アニメの代表作として現在も多くのファンに愛されている作品です。
原作は全4巻しかない4コママンガで、主人公「平沢唯」が入部した桜高軽音部での3年間の学生生活を描いた第1期は、ほぼ原作通りの展開で物語が進んでいきました。しかし、第2期では原作を追い越し、ほとんどがアニメオリジナルとしてストーリーが構成されています。
ただ、4コマでは描ききれなかった「ゆるふわ」な作品の空気感や、登場キャラの背景などが詳しく表現され、好評の声が多くあがりました。また、作中でキャラが演奏する曲がファンによってコピーされるなど、作品外で認知を広げ、結果としてアニメは大成功を収めます。
2011年には劇場版も公開されており、「作画も綺麗だし、ストーリーも丁寧で最高の日常系音楽アニメ」と高い評価を得ており、制作を担当した京都アニメーションを賞賛する声が多く出ていました。