アニメ映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』はシリーズ最高の初動記録となり、夜の上映も決定しました。大人から話題を集める理由はそれだけではなく、特に「エンジニアを讃える物語と描写のディテール」にも注目してほしいのです。



『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』ポスタービジュアル (C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV (C)やなせたかし/アンパンマン製作委員会 2024

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『Dr.STONE』的な流れのディテールがすごい

 2024年6月28日より劇場公開されているアニメ映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』が大人にも話題を集めています。

 公開週末3日間では『アンパンマン』映画史上最高の初動記録となり、動員数では同日公開の『ルックバック』を上回りました。さらに、「シネ・リーブル池袋」では7月19日(金)より、公開期間中の毎週金曜日に「アンパンマンナイト」と称した夜の上映も決定しました。川崎の映画館「チネチッタ」でも「大人のお客様からのご要望にお応え」する形で、夜の上映回が7月12日(金)より設けられているのです。

 そこまで本作を大人が称賛する理由は「ばいきんまんが実質主役の異世界転移もの」「エンジニアと諦めない心を称える物語」などに集約されます。

 ばいきんまんは、森の妖精「ルルン」に呼ばれて絵本の世界に吸い込まれ、森で大暴れする「すいとるゾウ」と立ち向かいます。最初こそヒーロー的な期待が向けられていることに気乗りせず、「愛と勇気なんて聞くと虫唾が走る!」とさえ言っていたばいきんまんが、やがて戦う術であるメカを「イチから作り始める」ことになりました。

 ここでは、鉄を炉で溶かしてノコギリやノミなどの道具を作り、木材に墨つぼを使って線を引いたりカンナをかけたりと、メカの製造過程を長い時間をかけて描いており、そのディテールに大人から感嘆の声が続出したのです。現代的な文明がない世界でも、自らの知識を生かしたものづくりが描かれる様からマンガ『Dr.STONE』を連想する人も多いでしょう。

 さらに、今回のゲストキャラのルルンは怖がりで、ばいきんまんを手伝おうとしてもドジばかりします。ルルンが「無理なんだ」と弱音も吐くと、ばいきんまんが「少しの失敗がなんだ!おれさまは何回も失敗しているんだ!」と話しました。

(普段からアンパンマンに負けるのがお約束であることもあってか)「説得力ありすぎ」「カッコ良すぎる」と、今回のばいきんまんに絶賛の声が届くのも当然でしょう。トライアンドエラーを繰り返して不可能を可能にしようとするエンジニアの精神は、現在公開中の実写映画『ディア・ファミリー』もほうふつとさせました。

 さらには、作られた巨大ロボット「ウッドだだんだん」とすいとるゾウとのバトルは重量を感じさせる画もあって大迫力でした。そして絶体絶命のピンチを迎えたばいきんまんが、ついにルルンへ「アンパンマンを呼んでこい!」と頼みます。

 その後の展開は内緒にしておきますが、さらなるアツい共闘が描かれることは申し上げておきましょう。提示される「あきらめない」大切さを伝える物語は、子どもの教育上まっとうなのはもちろん、大人にとっても大きな感動があることでしょう。

 公式サイトでは「おれさま、ばいきんまん特集」と題したページが公開されており、他の映画でのカッコいいばいきんまんの姿も紹介されています。ばいきんまんをこれまであまり知らなかったという方でも、今回の映画から推しになるかもしれません。