『仮面ライダーX』後半に登場して絶大なインパクトを与えた巨大幹部「キングダーク」は、後年、全ライダーと戦うラスボスになったほどの印象的な大幹部でした。その配下である「GOD悪人軍団」と合わせて振り返ってみましょう。
デカい、ヤバい。「UA Monsters キングダーク」(メガハウス) (C)石森プロ・東映
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視聴者の度肝を抜いた超巨大造形物の「キングダーク」
本日7月13日は、1974年に『仮面ライダーX』第22話「恐怖の大巨人! キングダーク出現!!」が放送された日です。今年で放送から半世紀になりました。このエピソードから敵組織「GOD機関」の指揮役として、新たなる大幹部「キングダーク」が登場します。
キングダークの声は前回放送の第21話で披露されていますが、その姿を見せたのは第22話からでした。「仮面ライダー」シリーズにおいて、これまでの大幹部とは一線を画するその巨大な身体は、視聴者である子供たちに多大なインパクトを与えます。
初期のデザインでは、キングダークは玉座に座っているという設定で描かれました。しかし、マントをまとった上半身だけという形にすることで、巨大な立体物を実際に制作するというTV特撮番組としては前代未聞のセットを生み出します。こういった経緯のためか、頭部以外のデザインは初期からほぼ決定稿と同じものでした。
涅槃仏(ねはんぶつ)を思わせる独特のポーズも、キングダークの特徴のひとつです。さらに目と口には開閉ギミックが仕込まれており、その巨大さと相まって大幹部に相応しい圧倒的な存在となりました。当時、子供だった筆者の周りでは、机に肘を当てて右手で顔を支えるポーズを取るだけという安直な手順で、できてしまうキングダークのモノマネが流行っていたことを覚えています。
このキングダークの登場は、当時、大人気だった巨大ロボットアニメ『マジンガーZ』の影響と思う人もいるかもしれません。これに関しては、当時の複数のスタッフから明確に否定するコメントが出ています。これまでになかったタイプの敵を作ろうと模索した結果、巨大な敵幹部であるキングダークへと結びついたそうです。
もっとも当時、巨大な造形物という点で一致するキャラクターがいました。後に『8時だョ!全員集合』のコントで使われることになった「ジャンボマックス」です。身長3mほどの巨大な着ぐるみで、発表時期はほぼ一緒でした。どちらが影響を与えたというよりも、当時の造形物を模索するなかで、「巨大な人型造形物」という奇妙なシンクロがあったのでしょう。
こういった世相から、筆者としては巨大な造形物として立ち上がるキングダークを想像していたのですが、ただの着ぐるみでガッカリした思い出があります。大人になった今では、それはそうだと納得していますが、それだけ実物大で作られたキングダークには絶大なインパクトがありました。
インパクトという面では、キングダーク登場とともに一新された新たなGOD怪人である「GOD悪人軍団」にも、印象的な面々が揃っていたと思います。
『仮面ライダーX Blu-ray BOX 1』(東映ビデオ) (C)石森プロ・東映
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Xライダーの前に立ちふさがる新怪人群「GOD悪人軍団」
GOD悪人軍団とは、歴史上の人物と動植物を掛け合わせた怪人群です。この製造方法には、「歴史上の人物の遺体を改造した説」や、「通常の動植物の能力を持った改造人間に歴史上の人物の霊魂を宿らせた説」などがありました。どちらにしても、これまでの怪人と大きく異なる製造方法ですが、GODが前半に使っていた「神話怪人」を考えると、その難易度は似たようなものかもしれません。
ちなみに初期の企画書では、地名から連想された怪人である「アルプスキッド」や「デスガンジス」といったタイプが検討されていました。アイディア的にはこの延長線上にあると考えられるでしょう。
さておき、GOD悪人軍団の最初の4体である「ジンギスカンコンドル」「ガマゴエモン」「サソリジェロニモ」「カブト虫ルパン」は、キングダークの初登場と同時に現れることで視聴者に絶大なインパクトを与えました。当時の子供雑誌でも一堂に集合していた特写が使用されており、複数の新怪人が同時に出ることで子供心を一気に引き寄せたワケです。
新幹部登場に合わせての新型怪人という組織改編は、今思えばテコ入れだったのかもしれません。しかし、子供の目には別の番組になったかのような新鮮さが先に来て、単純に盛り上がったものです。
むしろ明確な方向転換としては、翌週の第23話から始まった「RS装置」の争奪編という縦軸がドラマに加わったことでしょう。これにより一話完結でありながら『X』の物語は、「仮面ライダー」シリーズ初の連続ストーリーの様相となりました。このお宝争奪戦のストーリーは、脚本を担当した伊上勝さんの十八番といえる展開です。
こういった新要素に続き、夏の劇場版に合わせたゲストの先輩仮面ライダーたちの登場や、「マーキュリー回路」によるパワーアップで仮面ライダーXの変身方法が「大変身」となり、必殺技も「真空地獄車」に変わるといった展開が連続して入りました。これらの新要素が定期的に入ることで、物語は最終回まで子供たちを飽きさせることなく続くことになります。
しかしこういった新要素は、後年にそれほど大きな影響を与えてはいません。キングダークは平成に入ってからの「仮面ライダー」シリーズの集合映画で再登場することになりますが、現代ではCGの方がコスト的にも良いことから、原典のような巨大造形物を作ることなく済ませています。
GOD悪人軍団も現在ではコンプライアンス的にグレーな部分が多いことから、似たようなタイプの怪人が出ることはありません。あえていうならば、『仮面ライダーゴースト』の、偉人の力を借りたフォームチェンジが近いといえるでしょうか。
それでも『X』後半に出てきたキングダークとGOD悪人軍団の印象的な姿は、記憶に強く残っている人も多くいると思います。まさに記録よりも記憶に残る敵役だったのかもしれません。