マンガの実写化では、キャラクターの再現度も大きな注目ポイントとなります。成功してシリーズ化した実写化作品では、シリーズ内で1作だけの出演ながら、ファンも納得の見事な再現度を見せた、「儚いヒロインキャラ」もいました。
映画『キングダム 運命の炎』紫夏のポスタービジュアル (C)原泰久/集英社 (C)2023映画「キングダム」製作委員会
【画像】え…っ? 「北乃きいのミツバ似すぎ」「年齢違うのにまんまアシリパさん」 こちらが絶賛された実写版ヒロインです(9枚)
配信でしか観られないのが惜しいヒロイン
物語やキャラクターの再現度が高く、人気を得てシリーズ化されたマンガの実写化作品では、全作でレギュラー出演しているキャラだけでなく、そのうちの1作だけで強烈なインパクトを残したキャストもいました。再現度が高く、1作だけの出演でファンから絶賛された「美しく散った儚いヒロイン」キャラたちを振り返ります。
『キングダム 運命の炎』紫夏(杏)
最終章の4作目『キングダム 大将軍の帰還』が公開された実写「キングダム」シリーズ(原作:原泰久)では、3作目の『キングダム 運命の炎』の過去回想シーンだけに登場した、杏さん演じる「紫夏」の演技が絶賛されました。
中華統一を目指す秦国の王「エイ政(演:吉沢亮)」が、かつての大将軍「王騎(演:大沢たかお)」を、攻め込んできた趙国との戦いの総大将に指名した際、エイ政は自身の過去を語り始めます。かつて父の「子楚」が趙で人質として暮らしていたときに生まれたエイ政は、「長平の戦い」の大虐殺を行った秦を恨む人びとに虐げられていました。そして、祖父に当たる秦王「昭王」が死亡し、7年前に趙を脱出していた父が王に即位したため、エイ政は王位継承者として秦に戻ることになります。
しかし、祖父の死が趙に知れ渡れば暗殺されるため、エイ政は隠れて脱出しなければいけませんでした。その際に、彼を逃す危険な任務を引き受けたのが、趙で商才を発揮していた闇商人の紫夏です。ただでさえ危険な状況のなか、紫夏は過酷な状況で育ったエイ政の心の闇を知り、彼に寄り添います。
戦争孤児の自分を助けてくれた闇商人の義父の恩を、「次の者」であるに返そうと命がけで戦う紫夏は、短い出番ながらかなりの人気を誇るキャラでした。杏さんは、その彼女をしっかり再現するために現場に原作マンガを持ち込み、細部にまでこだわって演じます。
脚本も務めた原作者の原先生の案により、原作とは違うタイミングで語られた「紫夏編」は、原作ファンからも絶賛され、SNS上でも「紫夏編が大好きだったから吉沢亮と杏の迫真の演技で再現度高く泣いてしまった」「力強さとたくましさとかっこよさと包み込むような母性というか包容力があって、会ったばかりの政を必死に助けようとする説得力が半端なかった」と、杏さんの演技にも感動の声が相次ぎました。エイ政が「中華統一」を目指す理由の根幹に関わるエピソードがしっかり再現され、実写『キングダム』はさらなる称賛を得ることとなります。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』雪代巴(有村架純)
2012年から21年にかけて5作が制作された実写「るろうに剣心」シリーズ(原作:和月伸宏)の最終作となった『最終章 The Beginning』では、原作では中盤に描かれる過去編「追憶編」が映像化されました。幕末に人斬り「緋村抜刀斎」と恐れられた主人公「緋村剣心(演:佐藤健)」と、彼が助け妻となる女性「雪代巴」の物語が中心に描かれています。
原作でも人気の高い巴役を演じたのは、有村架純さんです。実は巴は、剣心に殺された婚約者「清里明良(演:窪田正孝)」の復讐のために彼に近付いていたのですが、一緒に暮らすなかで心惹かれてしまう複雑な役柄を演じました。
有村さんは、監督の大友啓史さんから、「頬がこける感じで」とのオーダーに応え減量して撮影にのぞんでいます。劇場版パンフレットでは、剣心役の佐藤さんから「ここまで巴という人柄にマッチするのか」と絶賛されていた有村さんの演技には、ネット上でも「単に美しいとも違う… あの時代に「非現実」とも言えるほどの佇まいと存在感があって、彼女があの剣心を包み込める存在足りえる説得力」「時には無感情に、しかし時には人間らしい感情を発露させるその佇まいは、このシリーズのラストを飾るにふさわしいキャラクターだった」「最期の言葉にならない『ごめんなさい』の表現力にしびれる」など、賞賛の声があがっています。
『銀魂 -ミツバ篇-』沖田ミツバ(北乃きい)
2017年と2018年に映画が公開された実写版「銀魂」シリーズ(原作:空知英秋)は、映画の合間に配信サービス「dTV」オリジナルのドラマも制作されていました。2017年のドラマ第1弾では、人気エピソード「ミツバ篇」が実写化されます。
人気の「真選組」キャラたちそれぞれが物語に密接に絡み、主人公「坂田銀時(演:小栗旬)」の粋な姿も魅力的なこのエピソードの中心にいるのは、真選組一番隊隊長「沖田総悟(演:吉沢亮)」の病弱な姉「ミツバ(演:北乃きい)」です。ミツバは貿易商の「蔵場当馬(演:津田英佑)」と結婚する前に真選組の屯所を訪れ、重度のシスコンである沖田は大喜びするのですが、実は蔵場は裏社会との闇取引をしていました。そして、蔵場を逮捕するため、かつてミツバに想いを寄せられていた真選組副長「土方十四郎(演:柳楽優弥)」が動き出します。
『銀魂』屈指の切ないエピソードのヒロインとして北乃さんのキャスティングが発表された際、健康的なイメージからか当初は「合わないんじゃないか」「若過ぎる」という意見もあったのですが、配信開始後は実写版ミツバは絶賛を受けました。
ただ儚いヒロインというわけではでなく、大の辛党という『銀魂』らしい設定も持つミツバを顔芸込みで全力で演じた北乃さんに関して、「雰囲気そのまんまじゃん」「咳き込むシーンの顔が完璧」「アニメ版(演:島本須美)に声寄せててびっくりした」「ちょっと吉沢亮と顔の系統も似てるし、いいキャスティング」などと、再現度と配役の妙に驚いた声が多数出ています。
※『キングダム』のキャラクター名の常用漢字外の表記はカタカナにしています。