ブームをさらに加速させた劇場版『キン肉マン』上映から40年が経ちました。当時の「東映まんがまつり」の中心作品となった理由は、熱いドラマと大爆笑のギャグの黄金パターンだったのです。



1984年夏の東映まんがまつり『キン肉マン』ほか劇場版7作を収録。『キン肉マン THE MOVIE』(東映ビデオ)

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東映まんがまつりの救世主となった『キン肉マン』

 本日7月14日は、1984年に劇場版『キン肉マン』が公開された日です。今年で公開から40年が経過しました。『キン肉マン』ブームが過熱するなか、その勢いを確実なものとした劇場版となります。

 現在では、『キン肉マン 奪われたチャンピオンベルト』と表記されることがほとんどです。しかし、公開時にはこのタイトルでの表記はありません。後年にほかの劇場版と並べることが多くなったためか、便宜的に名付けられました。

 本作は1984年夏の「東映まんがまつり」のひとつとして上映されました。同時上映は『超電子バイオマン』『宇宙刑事シャイダー』『The・かぼちゃワイン ニタの愛情物語』です。いずれも元はTV作品でありますが、従来のようなブローアップ版ではなく劇場用新作となっていました。この「すべて劇場用新作で構成された東映まんがまつり」は、実は1984年夏が初めてとなります。

 これに関して、従来までの東映まんがまつりの役割のひとつに、TV作品の再視聴の場だったという点を挙げる人もいました。それが1980年代に入って家庭用ビデオが普及したことで役割を終え、すべての作品を新作に変更したという証言もあります。

 そして時代背景的な側面のひとつに、同時期にあったアニメブームが影響を与えていました。この影響で劇場用長編アニメのヒット作品が増えていき、いつの間にかアニメ映画の主流になりつつあったのです。

 この影響で、子供たちの長期の休みに合わせて年に数回ほど行われていた東映まんがまつりも、年に一度程度に回数が減っていきました。劇場用長編アニメを増やしたことで、東映まんがまつりの上映機会が減ったわけです。1984年夏の東映まんがまつりは前回から1年4か月ほど経過しており、危機的状況にあったといっても過言ではなかったのでしょう。

 ところが、この夏の東映まんがまつりは興行収入的に大成功を収めます。続く1984年冬に8年ぶりとなる冬のまんがまつりを興行した際には、当時、「3G決戦」といわれていた『ゴジラ』『グレムリン』『ゴーストバスターズ』を相手に興行的には引けを取らない成績を収めました。

 この成功を『キン肉マン』によるものと判断した東映は、それを軸とした東映まんがまつりへと舵を切ります。これにより東映まんがまつりは年3回興行となり、『キン肉マン』は都合第7作『キン肉マン 正義超人vs戦士超人』まで制作されました。しかも、最終作となるこの時はTV放送が終了していた時期にもかかわらずです。

 このように『キン肉マン』という作品の持つパワーは、危機にあった東映まんがまつりの救世主となりました。後年、『聖闘士星矢』や『ドラゴンボール』といった人気作品が東映まんがまつり(後に「東映アニメフェア」に名称を変更)で何本も上映されるのは、それもこれも『キン肉マン』の劇場版が果たした功績があったからでしょう。



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劇場版『キン肉マン』で忘れられないキャラ「ウコン」

 劇場版『キン肉マン』といえば、窮地に陥った「キン肉マン」を助けるために正義超人の仲間たちが駆けつけ、その友情に支えられながらも最終的にキン肉マンがラスボスに逆転勝ちを収めるという、王道的な展開が魅力でした。

 この黄金パターンともいえる作劇が観客の心をつかみ、結果がわかっていながらも楽しめるというドラマ作りに貢献します。これは何も『キン肉マン』だけに限らず、その後の東映まんがまつりで上映された作品群にも受け継がれていました。

 これはどんな作品でもそうですが、もっともカタルシスを得る展開とは、ピンチの後に爽快な逆転勝利があることです。そういう意味では劇場版『キン肉マン』で確立したパターンが、東映まんがまつりで上映された後世の作品群に多大な影響を与えたと考えられるでしょう。

 ただし、ほかの作品では受け継がれなかった『キン肉マン』独特のパターンもありました。それが劇場版『キン肉マン』に必ず登場することになった敵役「ウコン」です。このウコンが名前を間違えられるというのが、劇場版『キン肉マン』では鉄板のギャグとなりました。

 もともとウコンは原作のマンガ版『キン肉マン』にも登場したキャラクターです。コミックス第2巻に収録されたエピソードに登場した怪獣で、この時に登場した「オクトバスドラゴン」や「ハリゴラス」と共に、名前だけ使われた形で劇場版第1作に登場しました。ちなみに原作マンガ的には「第20回超人オリンピック」開催直前で、「怪獣退治編」といわれている頃のエピソードです。

 このウコンとのやり取りが好評だったのか、後の劇場版でも再登場を果たし、すべての劇場版で「お約束」のギャグとして組み込まれることになりました。ちなみに、このウコンの声は劇場版第3作『キン肉マン 正義超人vs古代超人』から第6作『キン肉マン ニューヨーク危機一髪!』まで、原作者である「ゆでたまご」先生のふたりがつとめています。

 こういったギャグありバトルありの目まぐるしく物語が硬軟に展開するのがアニメ版『キン肉マン』の魅力でしょうか。そのエッセンスを凝縮した劇場版は、もっと各超人の活躍が観たいと思わせるくらいの絶妙なサジ加減だったと思います。この絶妙さが、TVアニメとの相乗効果になったのではないでしょうか。

 原作の良さを受け継ぎつつもオリジナルギャグを挟んで独特の雰囲気を作ったTVアニメ版『キン肉マン』、アニメオリジナルゆえに先が読めない展開で興奮させた劇場版、ともに『キン肉マン』という作品をアニメで支えた名作ぞろいと思います。

※『The・かぼちゃワイン ニタの愛情物語』の「・」は、正確にはハートマーク