鰻重に合う日本酒は熟成酒、旨口系にごり酒!甲斐ノワールの赤ワイン!お酒の専門家が飲み比べ

今年の土用丑の日は7月24日(水)と8月5日(月)。丑の日に限らず、この時期は夏バテ防止のために鰻を食べてスタミナを補給する人も多いのでは?鰻と一言に言っても、鰻重、鰻の蒲焼、白焼、うざく、う巻き…と鰻料理だけでもいろいろ。それらにはどんなお酒がおすすめなのでしょう?お酒の専門家たちにこれらの料理に合いそうなお酒を用意してもらい、実際にペアリングして採点してもらいました。鰻料理に合うお酒はこれだ!

ソムリエなどお酒の専門家3名が約20種のお酒を鰻にペアリング

日本酒は全国トップクラスの酒どころ、山形県のお酒を中心に約10種を用意

日本人はかなり古くから鰻を食してきたとされており、江戸時代には夏の土用、丑の日に鰻を食べる習慣が広まったとされています。しょうゆやみりんなどで味付けした蒲焼スタイルもその頃にでき上がったとされているようです。その栄養価の高さから、鰻は夏バテ防止に効果があると言われてきました。

鰻料理は日本の伝統料理。そこで今回は主に国産酒(日本酒を約10種、ソムリエがめぼしをつけた日本ワイン数種、焼酎、国産のジンやウイスキーなど)に限って鰻料理に合わせてみました。採点してくれたのは以下、3名のお酒のプロフェッショナルたち。

左:ワインエキスパート 兼松直子さん。清流と名水の城下町、岐阜県郡上八幡の出身で、ご実家が酒店だったこともあり、日本酒やジンなど幅広いお酒に精通。さまざま飲食店にアドバイスをしたり、メディアに食やお酒のコメントを寄せたりしている。

中:にほんのもの応援社 和altz 代表 アサノノリエさん。ソムリエ、チーズプロフェッショナル、Sake Diploma International、WSET level 3 in SAKE、SSI研究室専属テイスター、酒匠、日本酒学講師、日本伝統濁酒学講師。お酒の圧倒的な知識と経験を持つ。

右:飲食専門のPR会社 株式会社Green Create 代表、飲食ライターの 滝口智子さん。ソムリエ、国際利き酒師、Comrade of Cheeseなどの資格を保有。飲食店への日本酒ペアリング提案なども実施。2024年山形酒伝道師に認定される。

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濃厚な鰻の蒲焼や鰻重には、日本酒の熟成酒、旨口のにごり酒が◎

夏らしく鰻重にもすっきりとした夏酒を!と合わせると「何か違う…」ということもよくある

まずは鰻の定番、鰻重に合うお酒からご紹介。川や湖で育つ鰻にはゴボウなどの根菜にも似た独特の風味があり、それをしょうゆやみりんなどのタレを付けて焼くことで濃厚なカラメル風の香ばしさも生まれます。蒲焼の端の方には焦げの風味も漂います。最後には山椒の爽やかな風味も添えられます。

そんな複雑で濃厚な鰻重に合うのは、お酒の世界では定番とされる日本酒の熟成酒。今回は熟成酒(刻SAKE)で有名な酒蔵 木戸泉酒造の「秘蔵純米古酒 五年」を合わせてみましたが、やはり見事にマッチ。山田錦を全量使用した純米原酒の5年熟成もの。

鰻の蒲焼に合う酒といえば日本酒の熟成酒。この機会に1本購入してみては?

日本酒の熟成酒は普段あまり飲み慣れないという方におすすめなのは、「超旨口 五段仕込み 純米にごり」(六歌仙)といった芳醇な旨口タイプのにごり酒。あえて常温で鰻重に合わせると、香ばしい鰻の蒲焼とふんわりと温かくてやわらかい白飯の両方にとてもよく合い、見事に一体化。

甘すぎず、ドライすぎない「超旨口 五段仕込み 純米にごり」(六歌仙)は、万人向けのおいしさながら、これまでに味わったことのないバランス。熟成酒とほぼ同じ点数でした。六歌仙(山形県東根市)の松岡茂和社長によると、五段仕込みとは「江戸時代の酒造りの文献をひも解き、その時代に飲まれていたと思われるお酒を現代風にアレンジして醸してみた当蔵独特の技法です」とのこと。


「超旨口 五段仕込み 純米にごり」(六歌仙)300ml

日本酒は三段仕込みが一般的ですが、三段仕込みで仕込んだ後、搾りの直前に甘酒(のようなもの)を作り、それを二回に分けて投入してそれぞれ醪(もろみ)と徐々になじませながら搾るので、合計すると五段の仕込みに。手間ひまをかけた六歌仙ならではの独自の製法は、「六歌仙 五段仕込み純米」にも施されているようです。同じ製法で、にごっていない純米酒も鰻の蒲焼は合うかもしれませんね。ぜひお試しを〜!

改めて松岡社長が魅力を語ってくれました。「お米の旨味、そして日本酒の自然な酸味などが良いかたちで調和し、なめらかですっきりと楽しめます。冷やして飲む時は、まず上澄み部分を楽しみ、少しだけ混ざった部分で二杯目を、三杯目はよく混ぜて楽しむことで、にごりの混ざり具合で味わいが変わり、三つの味が楽しめます。またお燗にしても、冷で感じた旨味とはまた異なる、すっきりとした旨味がなめらかに舌をすべっていく感じです」。1本でいろんな味わい方が楽しめるのが魅力です。

他に、酸味と甘味のバランスが非常に良くてなめらかな「米鶴 純米 まほろば」(米鶴酒造)をお燗にすると、より丸くふくよかに。米のニュアンスが膨らんでこちらも好相性。安定の純米酒。

単品の鰻の蒲焼ならどっしりとした純米酒も◎

ペアリングをしてみて分かったのは、鰻重と単品の鰻の蒲焼では合う酒がやや違うということ。鰻の蒲焼だけであればどっしりとした純米酒も合うのだけれど、鰻重の場合、ご飯のやわらかな風味がどっしり系の純米酒のアルコール感に負けてしまうことも。

ご飯も、その上にのった蒲焼も、両方をおいしく味わいたいなら、余韻の長いどっしり系純米酒よりも旨口系にごり酒がベターという意見で一致しました。またご飯も鰻も温かいので、常温やお燗でも楽しめるお酒がベターという感想が多く出ました。