劇場版3部作となる「無限城編」では、鬼殺隊の古い歴史の光と闇も知ることができます。謎のまま残っている「なぜ、『炎の呼吸』を『火の呼吸(ひのこきゅう)』と呼んではならないのか」について考えます。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
【画像】えっ、見分けつく? これがそっくりな「ヒノカミ神楽」と「炎の呼吸」です(3枚)
鬼殺隊の歴史の光と影
2024年6月30日に放送されたTVアニメ『鬼滅の刃 柱稽古編』最終話では、「大正コソコソ噂話」に「炎柱」である「煉獄杏寿郎」の声の出演に視聴者は大いに驚かされ、ネット上では喜びの声があがりました。
煉獄さんといえば、「心を燃やせ」をはじめとする数々の名言や迫力ある技の数々、そしてその生き様で多くのファンの心をとらえている『鬼滅の刃』きっての重要キャラクターです。
ただ、話がマイペースすぎて、話し相手を置き去りにしてしまうところがあります。「竈門炭治郎」も無限列車で「ヒノカミ神楽」について質問した際には、あっさり置き去りにされました。
煉獄さんが残した謎のひとつ「なぜ、『炎の呼吸』を『火の呼吸(ひのこきゅう)』と呼んではならないのか」について考えます。
※この記事では、まだアニメ化されていないシーンの記述があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。
煉獄さんは死の間際に「歴代の炎柱が残した手記がある」と教えてくれましたが、炭治郎が煉獄家で見せてもらった手記は、煉獄杏寿郎の父で先代の炎柱である「槇寿郎」によってビリビリに破られて解読できない状態でした。
しかし煉獄家への訪問では、炭治郎や「蟲柱」である「胡蝶しのぶ」が「火(ひ)の呼吸」だと思っていたものが、実は「日(ひ)の呼吸」であり、一番初めに生まれた「始まりの呼吸」であることが明かされました。また「最強の御技」であり、水や風などのすべての呼吸は「日の呼吸の派生」であることも知らされます。そして、竈門家に代々伝わる耳飾りが「日の呼吸」の使い手とかかわりがあることも分かったのです。
しかし、なぜ現役の柱であるしのぶでさえ「火」と「日」を混同してしまうほどに、「日の呼吸」は表舞台から消えてしまったのでしょう。「始まりの呼吸」であり、「最強の御技」とされるほど重要なものが鬼殺隊のなかで伝承されていないのも不思議です。
その理由は、「始まりの呼吸」の剣士であった「継国縁壱」と彼の双子の兄であり、のちに鬼の「上弦の壱」である「黒死牟」となった「継国巌勝」に深くかかわっています。
劇場版『鬼滅の刃 無限城編』のティザービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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「呼吸」の誕生と縁壱の「追放」
実は、縁壱が鬼狩りになった際、「炎・風・水・雷・岩」の剣技を使う「柱」たちはすでに存在していました。妻と子供を鬼に殺された縁壱のもとに来た剣士は、原作マンガでは煉獄家の祖先であると思われるシルエットで描かれています。
鬼狩りに加わった縁壱が「呼吸」を教えたところ、柱たちの力は飛躍的に向上し、「凄まじい勢いで鬼を倒せるように」なったのです。この時点で、「〇〇の呼吸」という呼び名が誕生したと考えられ、「炎の剣技」を使う剣士の呼吸は「ほのおのこきゅう」と呼ばれ、「始まりの呼吸」も「日の呼吸」と呼ばれるようになったのでしょう。
縁壱の兄の巌勝も鬼狩りに加わり、ともに鬼と戦っていましたが、ある日、彼は無惨にひざまずき、鬼になる道を選んでしまいます。時を同じくして、縁壱は無惨をあと一歩というところまで追い詰めるも取り逃がしてしまったうえ、連れの女を逃がしてやったのです。これらのことの責任を取るかたちで縁壱は鬼狩りを追放されます。
実は、『鬼滅の刃』の単行本第21巻に収録されている「戦国コソコソ話(2)」には、ストーリーには盛り込まれなかった詳細な設定が書かれています。それによると巌勝は、「当時のお館様を殺し、その首を持って無惨の元に行った」とあるのです。巌勝がしたことへの憎悪が縁壱に向けられ、鬼狩りたちの間で「ひのこきゅう」という言葉がタブー視されるようになったとしても不思議ではありません。
さらに縁壱の死後、活動を再開した無惨によって、縁壱が日の呼吸を教えた剣士が皆殺しにされたという設定も書かれており、「日の呼吸」の継承が断たれたと考えられます。「炎の呼吸」を「ひのこきゅう」と決して呼んではいけないという言葉の裏には、「ひのこきゅう」から連想される「お館様殺し」の歴史の封印と、無惨から炎の呼吸を使う隊士を守るというふたつの意味があったのではないでしょうか。
「無限城編」では、この「戦国コソコソ話」の設定がどこまで本編に盛り込まれるかも見どころです。
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記