保育士として働くでこ先生。ある朝、子供と一緒に登園してきた保護者が深刻そうな顔で声を掛けてきました。子供のズボンをまくり上げると、ひざにアザがあって……? 元保育士の漫画家・でこぽん吾郎さんにお話を聞きました。
子供の足にできたアザの原因とは?(でこぽん吾郎さん提供)
【マンガ本編】園児にケガをさせた疑惑? 保護者からのクレームかと思いきや…「保育士あるある」が怖い!
園でのけがは保護者との信頼関係が崩れるきっかけになる可能性も
保育士として働く「でこ先生」は毎朝、保育所で子供たちを笑顔で迎え入れています。すると、ひとりの保護者が深刻そうな顔で声を掛けてきました。昨日、家に帰ってから気が付いたといい、子供のズボンをまくり上げます。なんとひざにアザがあったのです。でこ先生は園でけがをさせてしまったのでは、と動揺しますが……?
でこぽん吾郎さん(@Dekopon_56)よる創作マンガ『ただいま! 保育士 でこ先生 第33話 謎のアザ』がX(旧:Twitter)上で公開されました。いいね数は1.1万を超えており、読者からは「これは保育士あるある。マジで怖いんですよ」「けがしたことやその報告とか忘れたこととか不信感につながるから……。日頃からきちんと子供たちを見ていただいている先生たちには、本当に感謝です!」「自分も介護職員なので福祉関係でもよくあります」などの声があがっています。
元保育士のでこぽん吾郎さんは、漫画家としても活動しています。「レタスクラブ」(KADOKAWA)の連載作品「実録 保育士でこ先生」シリーズが単行本化され、2023年6月14日には第6巻が発売され、ついに完結しました。今回はSNSで連載している新シリーズ『ただいま! 保育士 でこ先生』の第33話をご紹介します。保育士時代の経験を作者が愛をこめて描く、笑いあり、涙ありの実録ベースのコミックエッセイです。
作者のでこぽん吾郎さんにお話を聞きました。
ーー子供のケガについて多くの保護者から意見が集まっていました。やはり、子供のケガは事前に保育士にお伝えしたほうが良いのでしょうか?
朝、登園時に保育士は子供の状態を視診(保育士が子供の身体を見て、普段と何か変わったことはないかを確認すること)をしています。しかし、同じタイミングでたくさんの子供たちが登園することもあり、ひとり一人を細かくチェックすることが難しいときもあります。なので、正確に子供の状態を把握するためにも、保護者の方には登園時にお子さんのけがをお伝えしていただけるとすっごく助かります……!
ーーでこぽん吾郎先生の保育士時代、ケガが原因で実際にトラブルに発展してしまったことはあったのでしょうか? お答えいただける範囲でかまいませんので、状況などもあわせてお聞きしたいです。
正直、けがをさせてしまったことはあります……。けがのないよう、細心の注意を払いながら保育をしていてもけがをしてしまうことがあります。けがのケースはさまざまです。園庭で友達と元気に鬼ごっこをしていて転んだ子もいますし、廊下で転んだ際に手が出ずに顔を床にぶつけてしまい、唇にけがをしてしまったというケースもあります……。
けがが起こったときの状況、その後の処置、子供の様子、今後の対応や配慮を丁寧に保護者の方に伝え、謝罪をし、保護者の方にご理解をいただきました。幸い、といっていいのかは分かりませんが、私が担当した保護者の方と、けがをめぐってのトラブルはなかったです。
著:でこぽん吾郎『実録 保育士でこ先生』第6巻(KADOKAWA)
ーー保育士時代に園児たちにけがをさせないために現場で心がけていたことはありますか?
かつて働いていた職場では、「ヒヤリハット」の共有を行っていました。ヒヤリハットとは、思いがけない出来事に「ヒヤリ」としたり、事故寸前のミスに「ハッ」としたりしたこと、という意味です。なぜヒヤリハットを共有するのか? それは「大きな事故にならずに済んでよかった」と、見過ごしてはならない理由があるからです。
私がかつて働いていた職場では職員室にふせんとペンを常に用意しておき、ヒヤリハットを記入してボードに貼り付けられるようにしていました。事務仕事の合間に、休憩のときに、思い出したときにすぐに記入してほかの職員もいつでも見られるようにしていました。例えば「制作物を固定していた画びょうが外れて床に転がっていた」などです。
これなら、保育士の業務上の負担になることもありませんし、共有しやすい。「重荷にはならない、密なカンファレンス」として有効な方法だったと思います。ほかの保育士の視点が加わることで、保育のなかに潜む危険にも気付きやすくなります。
一番は「職場はチーム」という意識だと思います。普段からのヒヤリハットの共有はチームとしての意識を高めるうえでも良い方法だったと思います。