傾斜での打ち方をゴルフ研究者が解説!坂道でのシミュレーションが効果的!?

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。

斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!

トラブルショットの傾斜地と通常の傾斜地をトリアージする

意識することなくフルショットでもコントロールショットでもボールをクリーンに打てるようになると、ツマ先上がり、ツマ先下がり、左足上がり、左足下がりなどの実戦的な場面でもうまく打てるようになりたいと思うものです。自然のなかにコースを作っている以上、練習場のような真っ平なところから打つのはむしろ例外で、傾斜地から打つのがゴルフの当たり前だからです。

傾斜地でのショットは「ツマ先上がり、ツマ先下がり、左足上がり、左足下がり」と4つのケースに分けて説明されることが一般的で、たとえば、ツマ先上がりはボールが左に出やすいため、そのぶんを見越して右寄りに打たなければならないと説明されます。しかし、傾斜というのは360度どの方向にも傾きがつくものなので、わずか4つのケースですべての傾斜に対応することはできません。

そもそもツマ先上がりとひと言でいっても、フェアウェイでのなだらかな傾斜のときもあれば、ラフでのヒザや腰の高さのボールを打たなければならないきつい傾斜もある。これらを同じ傾斜として、ひと括りにしてしまうのはかなり乱暴だといえます。

ヒザの高さのボールを打たなければならないときはトラブルショットと見なすべきで、サッカーでいえばこの状態は一旦タッチラインの外に蹴り出してプレーを止めるような状況。プロのようなリカバリーを狙わず、まずは安全にフェアウェイに戻すことを第一に考えるべきだと思います。

これに対してフェアウェイの傾斜は通常状態と考えられるので、ここはよほどのことがないかぎり普通に打ちたいものです。

そうはいっても、私たちは練習場の平らなマットの上で打つのに慣れすぎてしまっていて、実際に傾斜から打つとなるといつもと違う状況に動転してしまう。しかし、これこそがゴルフの普通なので、慣れるほかありません。

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イメージトレーニングで坂道も練習場に変身


シミュレーションでは傾斜による出球傾向に合わせてターゲットをズラし、結果として思ったところに打てたというのではなく、フェースをターゲットに向けて、それを実現するためには何を行なわなければならないかを逆算しながら打ち方を考察する。すると、シミュレーションであっても確信がもてるスイングイメージが作れる

傾斜地でのショット練習はなかなかできるものではありませんが、通勤や散歩の途中に坂に差し掛かったら、そこからボールを打つことをシミュレーションするイメージトレーニングは簡単で、意外と効果的です。

たとえば20から100ヤードほどの距離を想定し、ターゲットを定めて番手を決めたら、そこに向けて打つイメージをもちます。ボールは基本、フェースが向いている方向に打ち出されるというのが大前提ですので、理屈で解釈して斜面の向きがどうだからこうしなければならないといった理論に翻弄されるのではなく、シンプルに打ち出したい方向にしっかりフェースを向け、その状態をインパクトで再現することをゴールにするスイングを考えてみてください。

ゴールが先に決まれば、クラブを短く持つ、長く持つ、重心を下げる、斜面に沿って立つなど、結果のために何をしなければならないかが明確に見えてくるはずです。なお、傾斜地でのスイングはフルスイングではなく、ミート率を重視してハーフスイング気味で大丈夫。飛距離はそれほど変わりません。

スイングは上半身リードで始動させます。従来の下半身リードは、順番として左足を踏み込んで、そこからの連鎖で上半身を誘導することになりますが、傾斜地のようなとくに繊細なクラブコントロールが必要な場面で下半身をバタバタさせると、安定性を欠くかなり難しい動作になってしまう。

これに対し、上体、両腕の質量を利用して始動する上半身リードのスイングはブレが少なく、インナーカウンターを当てて加速するとともに左手の高さ調節ひとつで正確にボールに当てにいけるため、傾斜地のショットであっても安定してクリーンヒットするイメージをもつことができるのです。

このようにして坂道を歩きながら傾斜地ショットのイメージトレーニングを行なうことは有効ですが、当然、イメージだけは実際に打ったときの正確な弾道結果はわかりませんので、どこかで実際とシミュレーションとを擦り合わせて補正する必要があります。

最終的にはコース、またはコースに近い状況でのショットの確認が必要となりますが、河川敷のようなフラットではなく、丘陵にあるショートコースが近くにあればぜひ傾斜地ショットの練習のために利用し
てください。あえて傾斜地にボールを置いて、散歩で培ったショットシミュレーションの補正、確認を行ないましょう。

バンカーショットもですが、難しいといわれるショットは、結局、練習する場所が少なく、練習量が圧倒的に足りないのが上達しにくい原因のひとつなので、今回紹介したようなイメージトレーニングを日常のなかで行なうことをお勧めします。

いかがでしたか? 日常からイメージトレーニングを続けていきましょう。

文・イラスト=サンドラー博士

●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。