「男性社会に都合のいい女」になることが、サバイバルの手段だった
男社会で成功した女性は同性にきつく当たることがある――。これを「女王蜂症候群(クインビーシンドローム)」といいます。例えば、女性が同性に向かって「セクハラされて騒ぐなんてプロじゃないわ」「ジェンダー発言なんて、うまくいなしなさいよ」みたいな発言ですね。
私自身も20代のころは、セクハラを笑顔で軽くいなすのが強い女だと勘違いしていました。というか、そう洗脳されていたんです。これは、あの時代の女性たちにとってサバイバルの手段でもありました。セクハラとパワハラにまみれた社会では、いちいち全部を訴えていられません。気にしないフリをしていないと、生きてこられなかったんです。
でも今思えば、それは強い女じゃなく、「男社会にとって都合のいい女」にさせられていたにすぎません。最近になって、「私たちの世代がもっと声をあげていれば、下の世代の被害は止められたんじゃないか」と反省する女性がたくさん出てきました。男性から、そういう声はあまり聞かないのですが……。
(広告の後にも続きます)
見てみぬふりをしない、アクティブバイスタンダーになろう
性犯罪の加害者は、大多数が男性です。そして加害者男性には、男性の声の方が届きやすいのも事実です。ミソジニーの染みついた男性は、女性の話をろくに聞きません。男性が男性に「その発言はセクハラですよ」「痴漢をするな!」と言うことで、ようやく届くわけです。
だから、男性にこそジェンダーを考えてほしい、性暴力に対して声を上げてほしいなと思って、動画「#ActiveBystander(アクティブバイスタンダー)=行動する傍観者」を作りました。私が脚本を書いて、シオリーヌさん(助産師/性教育YouTuber)が監督で。アクティブバイスタンダーとは、日常生活で性暴力の現場に居合わせたときに、積極的に動いたり声をあげたりする人のことを指します。忖度して笑ったりせず、それは暴力だと指摘することで、加害者はハラスメントを続けられなくなります。
介入方法はいくつかありますが、有効なのは「Direct(直接介入)、Distract(注意をそらす)、Delegate(第三者に助けを求める)、Document(証拠を残す)、Delay(あとでフォローする)」の5つです。これを「第三者介入の5D」といいます。
直接介入以外にもできることはいっぱいあるし、状況に応じて、取るべき手段を選ぶことができると伝えたい。ミソジニーに染まっている年配の方の考えを変えるのは、相当難しいです。だからこそ、周りにいる人が見てみぬふりをしないでアクティブスタンダーになる。例えばセクハラ発言があれば一切笑わずにドン引きする。これが、加害を止める第一歩だと思います。