物語のキーパーソンにもなる悪役は、高い演技力が求められ俳優にとってプレッシャーを感じる役どころです。マンガの実写版ではかなりエキセントリックで難しい悪役の再現も求められますが、それでもインパクトを残し、原作ファンからも絶賛された俳優もいます。
映画『不能犯』ポスタービジュアル (C)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会
【画像】え…っ?堂本剛版・高杉の色気ヤバッ! コチラが再現度高すぎな「イケメン悪役」たちです(9枚)
脳裏に焼き付く悪役ぶりに絶賛の声
マンガの実写化作品では、2次元ならではの強烈な「悪役」をどう再現するかも、重要なポイントとなります。ときには、あまり悪役のイメージがないイケメン俳優が起用され、公開前に批判されることもありますが、その後に俳優の演技力の高さによって評価が変わることもありました。
『ザ・ファブル』柳楽優弥
2019年に実写化された『ザ・ファブル』は、南勝久先生の同名マンガが原作です。同作でカメレオン俳優と称される柳楽優弥さんは、「真黒カンパニー」の社員である「小島」を怪演しました。
小島は長年の獄中生活を終えて、出所したばかりの好戦的な武闘派です。実写化では柳楽さんの演技力の高さで、メインキャラに負けないインパクトを残しました。
柳楽さんのニタニタと笑いながら拳銃によって殺人に及ぶシーンでは、死人を前にしながら「癒やされる~」と白目をむきながら笑っており、狂気を感じます。
また、小島が依頼したAVの話を山本美月さん演じる「ミサキ」が断ったために、友達が損害を受けたと一方的に責め立てたシーンも印象的でした。いかがわしい仕事をするように脅迫する際、口調だけでなく目元や眉毛の動きだけでも、怖さやおちゃらけた雰囲気を作り出していて、常人とは思えない異常さを醸し出しています。
ネット上では演技力の高さを称賛する人が多く「目を見るだけでも狂気を感じられてゾクゾクする」「小島というヤクザの狂気、残虐性、軽妙さを体現しつつ原作の作風にきっちり合わせてくるあたりすごい」「原作ではゴリゴリなチンピラをあんなにもいやらしく、印象に残す役に仕上げるとは」と、称賛の声があがっていました。
『不能犯』松坂桃李
2018年に公開された、宮月新先生と神崎裕也先生によるマンガ『不能犯』の実写映画では、洗脳などによって自分の手を汚さずに対象を殺害する主人公「宇相吹正」を松坂桃李さんが演じました。宇相吹は善悪を超越したダークヒーローのため、これまでにヒーロー役など好感度の高い役柄を演じることが多かった松坂さんの起用に、驚いた人もいたのではないでしょうか。
本編冒頭ではスズメバチに襲われる「木島功(演:水上剣星)」を見ても微動だにせず、死んだ魚のような目をした宇相吹の姿が映されます。このシーンに限らず、どの場面でも覇気のない目をした宇相吹は、殺人に及ぶときも淡々としていて不気味さを演出していました。
また、後半の「多田友子(演:沢尻エリカ)」と対峙したシーンでは、瞬きせず淡々と語りかけたり、同じ場にいた「夢原理沙(演:芦名星)」の血を舐めながら薄気味悪い笑顔を浮かべたりしていました。このシーンは、息を飲むような緊張感を漂わせ、観ている人に恐怖を感じさせます。
ネット上では「目でも声でも視聴者を縮み上げる演技力がすごい」「思ってたよりサイコパス役がハマってた」と絶賛されました。そして、松坂さんの演技が認められ、「第31回日刊スポーツ映画大賞」にて石原裕次郎賞のひとつである主演男優賞を受賞しています。
『今日から俺は!!』磯村勇斗
毎年多数の作品で助演、主演で引っ張りだこの俳優、磯村勇斗さんは『今日から俺は!!』で、開久高校のNo.2で卑怯な手も使う非道な男「相良猛」を演じました。『今日から俺は!!』は西森博之先生の代表作である同名マンガが原作で、2018年に実写ドラマ化され、2020年にはスペシャルドラマ化と実写映画化もされた作品です。
磯村さん演じる相良は、ケンカする際に腕っぷしだけでなく木の棒で後ろから襲い掛かったり、女性にも容赦ない手段に及んだりするシーンがたびたび描かれ、猛獣のような暴れっぷりを実写化で再現していました。また、ケンカのシーンでは首に血管が浮き出るほどの熱演を見せています。
常に暴れているようなイメージの相良ですが、仲間がやられたときにはやり返しに行く、情に熱い一面もあります。
磯村さんは、原作の相良の風貌を完全再現するため、シルバーヘアが金髪に色落ちしないよう、何度も美容室に行って染めたり、シルバーワックスを使ったりと役作りを徹底していたそうです。
磯村さんが演じた相良は常に眉間にしわを寄せ、猫背で気だるげな様子で、再現度がとても高かく、SNS上では「今まで見てきた役と違い過ぎて演技の振り幅にびっくり」「相良が卑劣過ぎて磯村さんも嫌いになるとこだった」といった声もありました。