アメリカのジョー・バイデン大統領が大統領選からの撤退を7月21日に表明。「いつか、いつか」とは見られていたが、いざ決定が下されたことで、証券や金融市場で「トランプ大統領返り咲き」の「確トラ」の「トランプ・トレード」としていた投資先を、「ほぼトラ」寄りへ切り替えるという不安定な事態を招いている。
「撤退を受けた22日月曜日の日経平均はさっそく下げて、前週末より464円安の3万9599円でした。アメリカで株価動向を左右する半導体株がシステム障害を受けて下げたと見られていますが、アメリカの大統領選挙が先行き不透明になった影響もあると見られています。ただもっとも、それも織り込み済みとの見方もあって、いずれにせよ投資家がポジション取りで不明確になるのは確実。となると日本では、四半期決算が集中する7月下旬の企業業績が指標になるので、株価はそれ次第という当たり前の状況になるとも見られています」(経済ジャーナリスト)
ただそうはいっても、本国アメリカで中長期の投資判断が再考を擁するのは事実で、日本も当然その影響を大きく受ける。ドナルド・トランプ前大統領の銃撃事件直後に共和党大会があって、正式にトランプ前大統領が共和党候補になったことで、彼の政策も明らかにされたが、暗号資産にプラスで、再エネ関連に逆風が吹くことは明らかなので、そこでのポジション取りは明確に変えねばならない。
もっとも、リップサービスを含めた現在の政策は、具体的には現実を反映して、キチンとしたブレーンの進言の下、中身は変わるのは必至だが、それでも「低金利と低課税」、「関税引き上げ」、「移民抑制」は3大テーマなので、それなりに維持されると思われる。
「その場合、減税では国家財政の赤字につながってアメリカ国債の金利は上がり、関税引き上げは様々な商品の値上げでインフレに、移民抑制も労働力の供給不足でインフレにつながるでしょう。『確トラ』ではそれを見越して投資判断が行われていたので、『もしや』に備えた『もしトラ』ポジションへのシフトはやはり不確実。8月後半の民主党大会まで、カマラ・ハリスの候補者決定と、副大統領候補が誰になるのかも含め、政治の動き次第で市場が揺れるのは確実でしょう」(同)
ただ一方で、バイデン撤退で安定したこともある。現在のアメリカ連邦議会は、下院が共和党、上院が民主党でわずかに相手を上回ったいわゆる「ねじれ」の状況にあるが、それが維持されそうな見立てが成り立つからだ。
「議会のねじれ状態は、一方の政権による劇的な政策決定が通るのを防ぐので、マーケットは心理的不安を抱く必要が無くなります。これまではバイデンが候補に居座っていたことで、政治献金がストップして、大統領選と同時に行われる議会選でも上下両院で共和党が有利と見られていました。それが撤退したことで、民主党の『全敗』は避けられそうな見通しが立ったのです」(全国紙記者)
とはいえ、アメリカの政治状況が前代未聞の領域に突入したのは事実。最終決定の11月5日まで何が起こるか世界中の注目が集まり、マーケットはその状況次第で右往左往。日経平均も大混乱の兆しが見え始めている。
(猫間滋)