ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフをよりよいものにしていくためにさまざまなことを考え、走り続けている。どんなことを考え、どのようにゴルフと向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。
現在、米ツアーで活躍中の古江彩佳や西村優菜、今季より参戦の吉田優利は「プラチナ世代」と呼ばれる2000年度生まれの選手たちだ。ほか安田祐香や後藤未有など多くのシード選手が活躍する。
そのなかのひとり、阿部未悠が4月の富士フイルム・スタジオアリスで初優勝を飾った。コースレコードで勝った阿部と、敗れた佐久間朱莉とのマッチプレーは、間違いなく今季序盤の名勝負だった。
このインタビューは、その10日前のもので、彼女はまだ自分の近い未来に起こる出来事を知らない。ただ、言葉のところどころに、暗示的な言い方がいくつか見られたので、無意識に初優勝の予感がしていたのかもしれない。
「“しのぐ”ゴルフもしていかなきゃ、って」
「”ミスをしないように”と逃げるのは好きじゃない!」
—―開幕からここまでの調子はいかがですか?
阿部:はじめはなかなか噛み合わない部分がありましたが、4戦目の終わりあたりで手応えを感じてきました。昨年できた自信もあって、焦りはなかったです。
—―昨年は飛躍の年でしたね。
阿部:そうですね。その前の2022年、JLPGAツアーに本格参戦した年はコーチをつけずに戦っていました。そこでシード権がとれて迎えた2023年開幕前に目澤(秀憲)さんにコーチについていただいたんです。おかげで、それまでと違い、疑問や悩みがあるときに、迷っている時間が確実に減りました。
私の悩みを一緒に考えてくれる人がいる。これがとても幸せなことなんだな、と。合わせて技術面もスキルアップできたことが、昨年の安定した成績につながったんだと思っています。
—―たしかに、粘り強く予選を通過する姿もたくさん見ることができました。
阿部:私、攻めるのが大好きなんです。ミスをしないように……っていうゴルフはあまり好きじゃない。でもそれだけだと、ときには大ケガをして予選通過ができなかったりします。だから、攻める気持ちをもちながら“しのぐ”プレーを心がけました。
—―それは“守りに入る”のとは違う意味ですか?
阿部:ちょっと違います。これは“守る”というよりも”攻める流れを切らさないマネジメント”といったらいいかもしれません。
—―昨年はそのマネジメントが、スコアにつながったわけですね。ただ、雨につきまとわれた年だったようにもみえます。
阿部:いわれてみればそうかもしれません!スタジオアリスが初日中止で2位、ヨネックスは初日首位タイだったのに27ホールになり(結果12位タイ)、富士通も初日首位タイで2日目も2位タイ。最終日に勝負と思ったら雨で競技中止に。昨年の私は“短縮競技のオンナ”でした(笑)
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「多くの趣味を“こなす”」
—―今オフはどのように過ごしましたか?
阿部:ソフトバンクの甲斐選手の自主トレに参加した影響で、野球をよく見にいきました。鹿児島のオープン戦や、合宿も同じ宮崎だったのでキャンプにも足を運んだり。
あとは、みなさんご存じの趣味のカメラも。最近は野生動物だけでなく、短いレンズを買って街の撮影などもしています。それから読書、ゲーム、アニメ、ドラマ、ライブ、ミュージカルとか。私、半端じゃない数の趣味を抱えて過ごしているんです(笑)
—―目標とする選手はいますか?
阿部:石川遼さんです。魅せるアグレッシブなプレーやスター性、すべての行為が「映ばえる」ところがすごいです。それと桃子さん(上田桃子)は攻めるゴルフが持ち味で、強い気持ちがプレーに現れる選手。私だけではなくみんなから尊敬されている人です。ゴルフ以外の部分でも自分をもっている。そこがとても共感できるところです。
もうひとり、藍さん(宮里藍)。やさしくてかわいいのにプレーになると一変。世界1位ですからね。あとUTがうまくて「手のように扱えるようになったらいいよ」ってアドバイスをいただきました。私もあまり飛距離が出るほうではないので、とても参考にさせてもらってます。
—―最後に今シーズンの目標を教えてください。
阿部:もちろん「初優勝」ですね。ずっと掲げてきた大目標なので、今季なるべく早いうちに達成します。それと、これからどんどんギアを上げていき、サントリーで結果を出して、全英オープンに出たいと思っているんです。チャンスは絶対にあるはずですから!