【今回のお値段「タコ」 市場価格キロ3000〜5000円(1人前100グラム 500〜600円)】

 物価の上昇は止まらない中、目立つのが海産物だ。タコを例にとると、コロナ前ならスーパーで100グラム100円そこそこで売っていた海外産が、今は300円以下ではなかなか買えない。国産の生ダコとなると、500円以上も珍しくない。業界関係者によれば、

「第一の要因は円安でしょう。輸入物は、だいたい西アフリカのモーリタニア、モロッコあたりから来るんですが、生は鮮度維持が難しいんで、加工用のゆでタコなどで入ってきます。それが市場価格でキロ500〜1000円だったものが、今は2000円になったりしてます。カルパッチョに使われるなど、ヨーロッパでも需要が伸びて、今の日本ではなかなか買えない。特に日本国内では、タコの生育に必要な栄養塩が減っているなど、環境の変化で漁獲高が劇的に減っているのもあります」

 現実に、豊洲市場などでは、国産の生ダコでキロ3000〜5000円で取り引きされる。もしこれを料理店などが刺身にして出すとしたら、ワサビも付けて最低でも1人前(100グラム)800〜900円にしないと採算がとれない計算だが、タコに関していえば、消費者側にはそこまで払う「高級食材」のイメージはない。そのため、鮮魚店としてはどうしても500〜600円に抑えて、他で利益を確保するしかないのだ。

 だったら養殖すればいい、と考える人もいるかもしれないが、「高級魚」のマグロやウナギと比べると、タコ、イカ、サンマなどは需要は多くても、必要経費を考えると利益を出すのが難しい。ことにタコは「生き餌」しか食べないので経費がかかるのだ。

 味そのものは、国産とアフリカ産で大差はないといわれ、種類や部位による価格の差もマグロほどではない。ただ北海道産は大きめで白身の部分が多い傾向があり、茹でても柔らかいが、足が太くてボイルしづらい。明石のタコは小さめで独特の食感があり、アフリカ産も小さめでボイルしやすい。前出・業界関係者によれば、

「結局、今の日本で、タコに限らず、飲食店が海産物を出して利益をあげようとすれば、インバウンド狙いでいくしかないわけです。海鮮丼で一杯1万円以上となって日本人は驚くけれど、そもそも仕入れ値が高いのだから決してボッタクリではないし、外国人客もそう高いとは感じていないはずです。端的にいえば、かつてのバブルの逆現象が起きてると思えばいい」

 バブル期、日本は金に飽かせて世界中から食材を買いあさって食べまくったものだが、もはや日本人には手が届かないくらい、どれも価格が高騰してしまったということか。いつの間にかタコも「高級食材」の仲間入りをしていたわけだ。

山中伊知郎(やまなか・いちろう)アタマがハゲてて、酔って顔が赤くなったりすると、周囲から「ゆでダコ」と呼ばれたりした。でもその歯ごたえが好きでよく食べてたが、総入れ歯になってからは、かみきれないのでタコはパスするようになった。

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