1972年~73年の土曜日の夜8時台は、石ノ森章太郎原作の特撮ドラマ『人造人間キカイダー』、永井豪原作のTVアニメ『デビルマン』が続けて放映されました。どちらも原作マンガは、TV版と違って超シリアスな結末でした。今回はマンガ版『キカイダー』の衝撃的だったエンディングを振り返ります。
青と赤との鮮やかなカラーリングのキカイダー 画像は「人造人間キカイダー Blu-ray BOX VOL.1」(東映)
【画像】え…色っぽ可愛い! こちらが昭和の少年を釘付けにした、石ノ森作品のヒロインの皆さんです(5枚)
「自分は何者か?」に悩む主人公
手塚治虫氏が「マンガの神さま」と呼ばれたのに対し、手塚マンガに憧れて漫画家になった石ノ森章太郎氏は「マンガの王さま」と称されました。「王さま」の称号にふさわしく、石ノ森氏は多彩なマンガを生み出し、『サイボーグ009』や『仮面ライダー』などアニメ化や実写ドラマ化された作品も多く、マンガ文化の普及に大きな役割を果たしました。
石ノ森作品の主人公は、ある特徴があります。『サイボーグ009』の009こと島村ジョーのユニークなヘアスタイルも気になるところですが、「自分は何者か?」というアイデンティティーに悩むナイーヴな主人公が多いという点です。
NET(現在のテレビ朝日)系で1972年7月から放映され、同時に「週刊少年サンデー」(小学館)で連載された『人造人間キカイダー』も、悩める主人公の物語でした。大人気だった特撮ドラマ版とは異なる、マンガ版『キカイダー』の衝撃的だった最終回を考察します。
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不完全な「良心回路」を持つキカイダー
1971年にTV放映が始まった『仮面ライダー』は、空前の「変身ブーム」を巻き起こしました。強くてかっこいいスーパーヒーローに変身する石ノ森作品の主人公に、子供たちは憧れました。
仮面ライダーに続く、新しい変身ヒーローとして登場したのがキカイダーです。青と赤との鮮やかなカラーリングに、頭部の一部はスケルトン状。しかも、左右非対称という画期的なデザインのヒーローでした。
主人公のジローことキカイダーは、天才科学者である光明寺博士によって生み出された人造人間です。ジローには不完全な「良心回路」が埋め込まれています。不完全ゆえに、ジローは悪の首領プロフェッサー・ギルの吹く笛の音色によって、狂わされることがあります。欠陥のある主人公という設定に、子供たちはより関心を持ったものです。
当時の子供たちは、渡辺宙明氏による軽快なテーマ曲が流れる特撮ドラマに夢中になりました。ライバルであるハカイダーの登場にもワクワクしました。1973年からTV放映が始まった続編『キカイダー01』には、ジローの兄という設定のイチローことキカイダー01(ゼロワン)に加え、女性型ロボットのビジンダーが登場しました。マリ/ビジンダーを演じる志穂美悦子さんの胸の第3ボタンに、視線は釘付けになりました。
しかし、後年になってマンガ版『キカイダー』の最終回を読んだとき、少年期のそうした思いはすべて吹き飛ぶほどの衝撃を覚えたのです。
著:石ノ森章太郎『石ノ森章太郎デジタル大全 人造人間キカイダー』第1巻(講談社)