監督のSNS上での発言もあり、大いに注目を集めるなか放送された『グレンダイザーU』第4話は、フタを開けてみたらあふれんばかりの旧作リスペクトに満ちたエピソードでした。一方で今後の展開に影響するであろう改変点も見られます。
『グレンダイザーU』第4話より。「ナイーダ」のこの衣装は旧作と同じ意匠 (C)Go Nagai/Dynamic Planning-Project GrendizerU
【画像】配信では観られないCMに登場! こちらが最新の立体化された「グレンダイザー」です(6枚)
リスペクトによる変更点もあった令和版「大空に輝く愛の花」
旧作ファンにも新規層にも注目されているTVアニメ『グレンダイザーU』、7月27日(26日深夜)放送の第4話「大空に輝く愛の花」には、監督のSNS上での発言もあり、特に注目が集まっていました。結果、放送時間帯にはX(旧Twitter)にて「#グレンダイザーアニメ #grendizer」が関東地方のトレンド入りするなど反響も大きかったようです。何が起きていたのでしょうか。
※本記事は『グレンダイザーU』第4話のネタバレが含まれます。
この第4話で物語の中心になったのは「ナイーダ・バロン」という、旧作『UFOロボ グレンダイザー』にも登場していたキャラクターでした。旧作での出演話数は第25話「大空に輝く愛の花」で、つまり今回と同じサブタイトルです。ここからもわかるように、『グレンダイザーU』第4話は旧作リスペクトということになるでしょう。
実際、本編の各所には旧作リスペクトが見られました。ナイーダの地球での衣装はほぼ旧作と一緒でしたし、貼り付けになって洗脳されるナイーダ、「円盤獣ダリダリ」のデザインといった部分に共通項が見られます。
あえて変えたのであろうと思われたのが、ナイーダの弟シリウスの死亡原因でしょうか。旧作では「円盤獣ギルギル」にシリウスの脳が使われており、それを倒した「デューク・フリード/宇門大介」をナイーダは仇と狙っていました。それが今回は、以前フリード星で暴走した「グレンダイザー」に踏みつぶされたことになっています。もっともこれは、ナイーダを刺客として送り込んだベガ星連合軍第七攻撃隊司令「ガンダル」の洗脳による、偽りの記憶かもしれません。
実はこれに関しては。第1話から変わるのではないかと筆者は考えていました。なぜなら第1話で登場したギルギルは「マジンガーZ」に倒されていたからです。些細なことですがこの時点で、後にナイーダが登場する際、旧作とは異なっる展開になると感じていた旧作ファンは少なくないようです。
だからこそ、最後は原典から改変されてナイーダが救われることを願ったファンも多かったことでしょう。正直、そこは悲劇を回避してほしかったところです。もっともタイトル的には大空に散ること前提なわけですから、仕方ないのかもしれません。
ちなみにこのエピソードは、もともと月刊誌『冒険王』(秋田書店)にて、旧作アニメと平行して桜多(おうた)吾作先生が連載していたコミカライズ版が原典になります。これを読んで感銘を受けた旧作アニメ版チーフディレクターの勝間田具治さんが、桜多先生の許諾を得てアニメ化したものでした。
『U』第4話にはこの原典に対するリスペクトも見られ、回想シーンでヘビにおどろくシリウスの姿は、マンガのひとコマにあったものです。ちなみにヘビの名前は「ハッチャキ」で、フリード星に住むヘビの一種と注釈がありました。そう考えると、新作アニメスタッフの旧作リスペクトはコミカライズ版にまで及んでいるといえるでしょう。
『U』第4話より。左からナイーダ、デューク、シリウス、ヘビの「ハッチャキ」。桜多吾作先生によるコミカライズ版からの引用 (C)Go Nagai/Dynamic Planning-Project GrendizerU
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「4話まで観てほしい」その言葉の意図とは
スタッフによる旧作リスペクトがスゴいということで、往年のファンは安堵したことと思います。しかし、本作『グレンダイザーU』から視聴した新規のファンはどう思っているのでしょうか。
今回の第4話で筆者が真っ先に思ったのが、これまで大した出演シーンのなかったナイーダというキャラクターに、どれだけの新規ファンが感情移入できたかという点です。ナイーダに感情移入するには、これまでに積み重ねがなかった点が気になりました。
これに関していえば、昔のロボットアニメ作品は基本的に1話完結で、登場するゲストキャラとは基本的に一期一会であり、1話だけの印象で勝負していたという点を考慮すべきでしょう。そう考えると、昨今のような数話かけてキャラクターに深みを持たせるという手法ではありません。往年のファンにはこれでいいと思いますが、新規である世代はどう感じたのでしょうか。
もっとも往年の手法だけではなく、近年の手法も巧みに取り入れられていると感じる部分もありました。それが今回限定で使われた特殊エンディング「愛のうた」です。歌は「ナイーダ・バロン」名義で、そのCVを担当した佐倉綾音さんによるものでした。この曲のMVはYouTubeに上がっており、公式HPから観られるようになっています。
こうした新規ファンにもうれしい手法で、新旧両方のファンへの配慮がされていると感じました。今後の展開にも期待大です。
以前、Xで福田己津央監督が「4話まで観てほしい」というポストをしていました。それはこの第4話まで観て、今後の作品のクオリティと方向性を感じてほしいという意図だったのではないかと思われます。筆者的には『グレンダイザーU』スタッフの、旧作への惜しみない愛を感じました。
一方「旧作から改変された点」でもっとも良かったと感じた部分は、ナイーダに責められた時のデュークの心境です。原典ではこれによりデュークは錯乱状態に陥りました。ところが今回はナイーダの言葉を受けながらも、前向きな言葉で逆に説得しています。
これまでのデュークはどこか後ろ向きな言動が多く、その代わりに男らしさを見せた「兜甲児」の株が上がっていました。今までのデュークの言動を見ていたら、ここでまた落ち込むのかと心配になったところです。
ところが、ここでデュークが前向きな発言をしたことで、これからは主人公として期待が持てると感じました。そうした点でも「4話まで観てほしい」という福田監督の発言の意図が伝わります。
といったところで、大いに盛り上がりを見せた『グレンダイザーU』第4話でした。次回第5話のサブタイトルは「マリアが来た!」、旧作でも屈指の人気キャラクターだった「グレース・マリア・フリード」の登場です。なんだか最後の予告でマリアに全部持っていかれたと感じたのは筆者だけでしょうか。