漫画家・井上雄彦氏の大ブレイク作といえば、高校バスケットボールの世界を描いた『SLAM DUNK』です。主人公である桜木花道の成長ぶりと同時に、井上氏の画力も目覚ましい進化を遂げていきました。その一方、消えていったのがギャグ要素です。バスケの常識にとらわれない、桜木の破天荒さが笑いを呼んだ旧劇場版四部作を振り返ります。



劇場版第1作『スラムダンク』。強豪・武園高校との練習試合で、赤木晴子の声援を力に躍動する桜木花道が描かれる  (C)井上雄彦・アイティープランニング・東映アニメーション

【画像】「どんどんカッコよくなっていく」 これが劇場版スラダン4作品の桜木花道です(4枚)

破天荒な「桜木花道」が見られる旧劇場版

 フランスの首都・パリでの五輪開催は100年ぶりとなる「パリ五輪&パラリンピック」が始まりました。「史上最強」の呼び声が高い男子バスケットボールの日本代表チームは、八村塁選手、河村勇輝選手らの活躍が期待されています。

 そして多くのバスケファンから愛されているのが、井上雄彦氏の人気マンガ『SLAM DUNK』です。1990年から96年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載され、単行本の累計発行部数は1億7000万部を超える大ベストセラーとなっています。1993年からはTVアニメシリーズ『スラムダンク』(テレビ朝日系)の放映が始まり、ファン層をいっそう広げました。

 井上氏自身が脚本・監督した劇場アニメ『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年)が興収157億円を超えるメガヒット作になったことも、記憶に新しいところです。2024年8月13日(火)からの復活上映も決まっています。

 BS12では、2024年7月28日(日)夜7時からの「日曜アニメ劇場」にて、1994年と95年に公開された劇場アニメ『スラムダンク』『スラムダンク 全国制覇だ!桜木花道』『スラムダンク 湘北最大の危機! 燃えろ桜木花道』『スラムダンク 吠えろバスケットマン魂!! 花道と流川の熱き夏』の4作品が一挙放映される予定です。

(広告の後にも続きます)

懐かしい声優陣、懐かしいラブコメパート

 今回オンエアされるのは、「東映アニメフェア」の1作品として劇場公開された30分~40分ほどの中編作品ばかりです。旧劇場版第1作となる『スラムダンク』では、湘北高校バスケット部に入部して間もない主人公・桜木花道が、神奈川県大会ベスト8の常連校・武園高校との練習試合に臨むことになります。バスケ部に入るまでは不良だった桜木は、超惚れっぽい性格です。中学時代は女子に告白し、50回連続でフラれたことが明かされます。

 TVアニメシリーズと同様に旧劇場版も、バスケットボール初心者である桜木花道の暴走と失敗の数々がギャグ要素として、大いに盛り込まれています。桜木の憧れの女性・赤木晴子とのラブコメパートの比重が高いのも特徴です。原作コミックのクライマックスとなるインターハイ2回戦の山王工業高校との死闘が繰り広げられる『THE FIRST SLAM DUNK』が、シリアスモード全開だったのとは対照的です。

 また、『THE FIRST SLAM DUNK』は湘北高の「司令塔」である高校2年の宮城リョータの視点から「山王戦」が描かれており、桜木の出番はかなり抑えられていました。桜木の破天荒さを楽しみたいファンにとっては、旧劇場版はその期待に充分に応えてくれる作品になっています。

 もちろん、声優陣はTVアニメシリーズと同じです。桜木花道=草尾毅、赤木晴子=平松昌子、宮城リョータ=塩屋翼、天才ルーキーの流川楓=緑川光、3ポイントのスペシャリストである三井寿=置鮎龍太郎、「メガネくん」こと木暮公延=田中秀幸、安西先生=西村知道の各氏が配役されています。そして、「ゴリ」ことキャプテンの赤木剛憲は、2022年に亡くなった梁田清之氏が演じています。



劇場版第2作『スラムダンク 全国制覇だ!桜木花道』。インターハイ予選の激闘のなかで、桜木花道の「リバウンド」の才能が開花する  (C)井上雄彦・アイティープランニング・東映アニメーション