プロの漫画家でも、時期によっては技術がまだ粗削りな連載作品が存在します。しかし、連載を続けるうちに上達し、作品によっては序盤と終盤で驚くほどの違いが見られることもありました。



大暮維人先生の『エア・ギア』第1巻(講談社)

【画像】え…っ? 「本当に同じ人?」「1巻と最終巻で変わりすぎ」 こちらが絵柄が大きく変化したマンガです(9枚)

大きな成長から先生たちの努力が伝わってくる

 マンガを仕事にしているプロの漫画家も、全ての人が最初から絵がうまいわけではありません。なかには、連載を続けるうちにどんどん絵が上達し、作品の序盤と終盤で驚くほどの違いが見られることもありました。ネット上でたびたび話題になる「連載を通して急激に画力が上がった漫画家」には、誰がいるのでしょうか。

大暮維人

 ネットでの「ビックリするくらい絵がうまくなった漫画家」という話題で、大暮維人先生はよく見かける名前です。アニメ化もされた『天上天下』や『エア・ギア』を連載していた大暮先生は、女性キャラやエフェクトの描き方が特徴的で、近年は人気ライトノベル『化物語』のコミカライズでも注目を集めました。

 そんな大暮先生の絵が急激にうまくなったといわれているのが、出世作『天上天下』の連載中です。1巻の時点でもすでにうまいですが、1巻と最終巻の絵を比べて、「驚くほど進化してる」「別人が描いている?」など驚きの意見も多く見られました。

 この絵の変化に関しては、講談社のマンガアプリ「マガポケ」の公式サイトのインタビューで、「『天上天下』を連載しながら『エア・ギア』の連載が始まるタイミングで、アシスタントさんをたくさん雇った時期だった」と、大暮先生本人が要因を語っています。「その(アシスタントの)生原稿をじっくり見ることができたのが一番の勉強になったのだと思います」とのことでした。

『天上天下』は30年近く前の作品で、その後に連載した作品のなかでも、先生の絵は上達していきました。現在とは大きく違う先生の初期の絵に興味がある方は、ぜひ一度確認してみて下さい。

ゆでたまご(作画担当・中井義則先生)

 1979年に連載を開始した『キン肉マン』は、かつて一世を風靡し、現在も『週プレNEWS』で続編をWeb連載中の長寿作品です。また、アニメ『キン肉マン 完璧超人始祖編』も放送中で、いまでもその人気は衰えていません。

 そんな人気マンガ『キン肉マン』の作者である「ゆでたまご(原作:嶋田隆司/作画:中井義則)」の中井先生は、連載を通してその画力を大きく進化させた漫画家として知られています。

『キン肉マン』は、バトルが中心の物語ですが、連載初期の頃はギャグマンガとしての側面が強く、コミカルでシンプルな作画でした。また、連載開始当時18歳だった中井先生の画力も粗削りで、『キン肉マン』が「週刊少年ジャンプ」の表紙絵を飾る際に、イラストレーターが代行したという話があるほどです。

 しかし、連載が進むにつれて中井先生の画力は向上していきました。キャラの頭身が上がり、体格もリアルになり、バトルマンガとしても読み応えのあるものになっていったのです。

 この変化に、ネットでは「筋肉描写がリアルになってる」「向上心がすごい」など、称賛の声が多く出ています。また、初期の絵に対しても「味があって好き」「昔の絵もかわいいし定期的に見たくなる」など、懐かしむ声もありました。息子で格闘家の中井光義さんの談(「ぐるなび」の「【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】」コーナーより)によると、中井先生は絵画教室で学んだり3Dモデルを活用したりと、キャリアを重ねても努力を続けているそうで、画力は現在も向上しています。

赤坂アカ

「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた、人気マンガ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』の作者である赤坂アカ先生は、連載を通じて画力を向上させており、「絵がうまくなった漫画家」として、ネットではたびたび話題になっています。

 赤坂先生は「もともと絵が得意ではない」「もともとヤングジャンプには原作者志望で入った」と語っており、『かぐや様は告らせたい』の連載初期は、主にストーリーとキャラの人気が高く、絵に対する評価は芳しくありませんでした。しかし、連載が進むにつれて「先生の成長が目に見えて分かる」とのコメントも増え、絵に対する評価も高まっていったのです。

 赤坂先生は、原作を務める『【推しの子】』が大ヒットし、原作者としての才能も注目されており、『かぐや様は告らせたい』の連載終了後に、マンガ原作者としての活動に専念、漫画家としては「引退」することを発表しました。先生の絵を見る機会が減ることを残念がるファンの声もありますが、原作者として幅広く作品を生み出す先生の活躍に期待したいところです。